(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
6-10-2.鼻ポリープの治療と気管支喘息
前文
喘息患者の中で鼻ポリープを合併する頻度は高く,一方鼻ポリープ陽性患者での喘息合併頻度はさらに高いといわれる。鼻ポリープの頻度は男性に多いが,女性の鼻ポリープの喘息合併率は男性の2倍であるという。また鼻ポリープ,喘息,アスピリン過敏症との合併はよく知られるところである。典型例では鼻炎から始まり,鼻ポリープ,次いで喘息が発症し,ついにはアスピリン過敏症となる。
推奨:なし
科学的根拠
鼻ポリープの治療が気管支喘息症例の重症度や呼吸機能に与える影響を検討した論文が4編1),2),3),4)あり,その内の3編2), 3),4)は鼻腔内手術と鼻用ステロイド薬との比較も行っている。その結果は,手術により喘息重症度と1秒率が改善1),1秒量が不変2),1秒量が減少3),4)と各々に異なっている。また,鼻用ステロイド薬の投与を10-12ヶ月行っても,気道過敏性や1秒量は不変2),3)とされ,4年以上のフォローアップでも同様の傾向4)が示されている。しかし,これら4編の報告はいずれも少数例における時系列による非比較試験であり,治療効果に関する根拠に基づいた結論を得ることはできない。
表6-10-2 鼻ポリープの治療と気管支喘息
文献 | 対象
| 試験デザイン
| 結果・考案 | 評価 |
Nakamuraら1) 1999 |
|
|
| IV C |
Fabienneら2) 1999 |
|
|
| IV C |
Lablinら3) 1997 |
|
|
| IV C |
Lablinら4) 2000 |
|
|
| IV C |
結論
鼻ポリープに対する鼻腔内手術が喘息症例の症状や呼吸機能に与える効果は現時点では不明である。また鼻用ステロイド薬連用は呼吸機能に影響を与えないと考えられる。
参考文献
- Nakamura H, Kawasaki M, Higuchi Y, et al. Effects of sinus surgery on asthma in aspirin triad patients. Acta Otolaryngol(Stockh)1999; 119 : 592-598. (評価IV,C)
- Fabienne R, Catherine L, Lise-Marie V, et al. Quality of life in nasal polyposis. J Allergy Clin Immunol 1999; 104 : 79-84. (評価IV,C)
- Lablin C, Tillie -Leblond I, Darras J, et al. Sequential evaluation of pulmonary function and bronchial hyperresponsiveness in patients with nasal polyposis. Am J Respir Crit Care Med 1997; 155 : 99-103. (評価IV,C)
- Lablin C, Brichet A, Perez T, et al. Long-term follow-up of pulmonary function in patients with nasal polyposis. Am J Respir Crit Care Med 2000; 161 : 406-413. (評価IV,C)