(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 

6-4-2.治療と管理

高齢者喘息の治療にあたり以下の点に留意する必要がある。(1)慢性閉塞性疾患の合併が多いため可逆性の存在を判断して,抗炎症薬(ステロイド薬等)と気管支拡張剤などの治療の有効性を確認する。(2)喘息治療薬は高齢者特有の合併症を増悪させるリスクが高く,また基礎疾患に対する薬剤の副作用の危険性も高い(β2-遮断薬,非ステロイド系鎮痛薬等)ので注意深い観察を怠らず,治療計画を調整する必要がある。(3)薬剤のコンプライアンスや器具の使用法が適正かどうかを確認する。

以下,各抗喘息薬別に注意点を記す。

6-4-2-1.副腎皮質ステロイド薬

前文

高齢者喘息においても抗炎症療法の重要性は議論の余地はない。高齢者喘息の特徴として合併症が多いことがあり,ステロイド薬の使用に関しては骨粗鬆症,高血圧症,耐糖能の低下,消化性潰瘍,免疫能の低下など考慮しなければならない合併症が多く存在する。全身性のステロイド薬は高齢者ではさらに興奮や錯乱などの精神症状が発現されることがある。吸入用の薬剤はこの点全身性の副作用が少なく第一選択薬とされるが,高用量では全身性の副作用が危惧される。特に閉経後の女性においては骨粗鬆症に対する注意が必要である。

推奨:高齢者においても吸入ステロイド薬を基本とする抗炎症療法が重要であるが,高用量の使用には注意を要する(A)
科学的根拠

検討方法としてはNational Library of Medicine, Advanced Medline Searchより喘息,高齢者,ステロイドにて検索した。登録されたすべての刊行物を対象に検索したところ,202編検索されたが,そのうち要旨を検討して有用と考えられた最近10年間の72編について検討した。

検討した成績はいずれも吸入ステロイド薬の有用性を強く示唆する結果1),2)であったが,高齢者に対象を限定した試験はなかった。なお抗炎症薬としてはクロモグリク酸ナトリウムとステロイド薬があるが,前者は成人においては小児喘息ほどの有効性を示さないとの報告がある3)。副作用に関してベクロメタゾンで1,600μg,フルチカゾンでは800μg以上では何らかの全身性の作用が発現される可能性が報告されている4)

(メタアナリシス)
論文コード
(年代順)
対象試験デザイン結果評価
Lipworth BJら4)
1999
  1. 1966年から1998年までの吸入ステロイドの全身性副作用を検討した質的に評価できる文献
  1. 副腎抑制では17文献から,成長抑制では12文献から,骨密度では10文献からそれぞれ尿中コ-チゾ-ル,成長速度,骨密度をBDP,fluticasone,budesonideで検討
  1. BDP1.5mg,fluticasone0.75mgでは副腎皮質の抑制がみられる。fluticasoneの全身性の作用がもっとも強く,効力比でも検討を要する。
I-A

(RCT)
論文コード
(年代順)
対象試験デザイン結果評価
Gordon Dら1)
1999
  1. 例数;399
  2. 年齢;12〜83歳
  3. 対象;慢性喘息
  1. BDP336,672μg,fluticasone 176,440μgの効果比較(二重盲検・プラセボ対照試験),2週観察12週試験
  1. fluticasone 176,440μg使用群のほうがBDP 336,672μgより有意に肺機能,症状とも優れていた。
  2. 副作用は両群とも差を認めなかった
II-B
結論

高齢者喘息治療の科学的根拠については検討が不充分であるが,吸入ステロイド薬の有用性については異論のないところである。

 

 
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