(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 

2)乳児喘息の薬物による治療と管理

推奨:
  1. 乳幼児喘息においても,キサンチン製剤やβ2刺激薬は気管支拡張効果をもたらし,喘息症状の軽減,QOLの改善に効果が期待できる。乳児期,キサンチン製剤のクリアランスは悪いため,低投与量から開始し,血中濃度をモニタリングしながら至適投与量を決める。また,痙攣を来しやすい乳児に対しては,細心の注意が必要である。
  2. 少なくとも中等症以上の症例に対して,ベクロメタゾンの吸入は,副作用の発現も少なく,喘鳴症状を改善するのに有用である。乳幼児では,スペーサーを用いてエアロゾルを吸入させるが,年齢相応のスペーサーを選択する必要がある。
  3. クロモリン(DSCG)の吸入,特にβ2刺激薬との併用による定期吸入療法は,喘鳴が持続している乳児に対し有効である。DSCG吸入あるいは経口抗アレルギー薬の喘息発作に対する予防効果は,臨床上認められるものの,現在のところ文献的には明らかにはされていない。
  4. 両親への喘息教育は,治療を改善させ,乳幼児喘息の予後を改善する。
科学的証拠

乳児喘息の治療や管理に関連して,欧米の科学的論文は,年長児と同様に,吸入ステロイドであるブデソニドやフルチカゾンの治療効果や副作用について検討が行われ,その有効性が示されている1),2),3),4)。我が国では,未承認の薬剤ではあるが,ブデソニド液のネブライザーによる吸入は,喘鳴が持続している中等症以上の乳児に対し有効であり,短期大量開始による早期治療効果の有用性も報告されている2)。乳幼児では,ネブライザーによる吸入が最良と考えられるため,わが国でも早期の認可が待たれる。

乳児や年少児に対して,エアロゾルの吸入療法におけるスペーサーの重要性が報告されている6),7)。乳児や年少児では,1回換気量が少なく吸気流速が非常に低いため,薬物の吸入量は微量である。低年齢用のプラスチック製スペーサーは,使用が簡便で,操作性も良いが,静電気による投与量の変動が起きる可能性が指摘されている。その点,金属スペーサーは,年齢に依存せずに吸入量の変動が低いとの報告がある8),9)

乳児喘息長期管理において,DSCGの吸入やケトチフェンが,対照群と比較して発作頻度は減少させず,コントローラーの薬物としての意義を否定している報告がある10),11),12)。その報告では,DSCGのエアロゾルの定期吸入をフェイスマスクつきのスペーサーで行っているが,我が国においては,ネブライザーを用いた吸入療法が一般的であり,上記の結論の是非に関しては今後の検討が必要である13)。また,わが国では,β2刺激薬と併用した定期吸入療法が行われ,有効性が示されているが14),併用するβ2刺激薬は,短時間作動性のサルブタモールが主体であり15),16),17),18),長期連用による影響に関しては今後の検討が待たれる。

キサンチン製剤は,生後1年未満の乳児期は,クリアランスの変動が大きいため,低投与量から開始すべきである19),20)。特に,血中濃度をモニターリングし,至適投与量を決めることも必要である21),22)。また,乳児期は,中枢神経系が成熟段階にあり痙攣を来しやすいため,特に痙攣既往の乳児に対しては,細心の注意が必要である。テオフィリン内服中では痙攣持続が長く,抗痙攣剤に反応が悪く,テオフィリン関連痙攣として注意されている23)

患児の両親への教育,特に文書による喘息管理計画書や喘息教育プログラムを用いた効果的な指導は,入院や救急外来の受診回数を減少させるなど,臨床症状の改善が認められるので重要である24),25),26)

 
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