(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
2.吸入抗アレルギー薬
科学的根拠
クロモリンの薬理効果は,主に,肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離と気道アレルギー性炎症を抑制して,即時型および遅発型アレルギー反応を抑制,気道過敏性を改善すると考えられている。抗原特異的反応のみならず,冷気や運動,亜硫酸ガス曝露による気管支収縮も抑制する。
クロモリンは,スピンヘラーを用いるカプセル剤,定量噴霧式吸入剤,吸入液の3つの剤型がある。
臨床的に小児気管支喘息の中等症,重症でも有効14),15)で,併用薬の減量効果,症状の改善,肺機能の改善が認められ15),軽症,中等症のステロイド吸入薬の減量・中止をテルブタリンMDIとの併用で16)可能とし,重症でケトチフェン,クロモリン各単剤で無効の場合,併用で有効性が高まる17)。小児気管支喘息で,β2刺激薬吸入による対症療法では肺機能,気道過敏性は改善されず,軽症であっても抗炎症作用のあるクロモリンまたはステロイド薬吸入18)あるいは経口抗アレルギー薬の併用が勧められる。
クロモリンの喘息治療への導入は,長期の観察結果から発症早期であるほど有効性が高く長期の経過後は有効性が低下する19),とされる。
重症,難治性喘息にクロモリン吸入液に少量のサルブタモール吸入液を混じて定期的に吸入させることによって著効を呈したと報告20)され,わが国では小児気管支喘息患者に広く普及した療法となっている。その長期臨床効果について盲検・比較対照試験を欠くが,重症を対象にした4週間のクロモリン吸入液単独(D),クロモリン+サルブタモール吸入液(DS),サルブタモール吸入液単独(S),1日2回投与による各4週の盲検・ランダム化交叉比較試験21)では,各群とも対照期間より有意に発作点数,治療点数,喘息点数は減少し,後半2週で発作点数以外,DS群が,D,S群より有意に低く,発作点数はDS,S群差がなく,D群より低かった。 交差試験の結果は,washout期間が短く,参考として成績のみが記載されている。軽症,中等症の小児気管支喘息に対するテルブタリン通常量吸入液とクロモリン吸入液の1日3回の吸入による各8週の盲検・交叉比較試験では,クロモリン,クロモリン+テルブタリンがテルブタリン単独よりピークフロー値,気道過敏性とも改善したが,クロモリンとテルブタリン同時に投与することによる相加効果は認められていない22)。
主な副作用は,吸入時の咳嗽,喘息発作誘発である。
結論
クロモリン吸入療法は小児気管支喘息発症早期から行うことにより,発作の予防,気道過敏性の改善が期待される。 重症,難治性喘息対にする長期のクロモリン吸入液+少量のサルブタモール吸入液定期吸入療法効果については,さらに科学的根拠となる検討が必要である。