(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
4-1-5.Th2型サイトカイン阻害薬
前文
気管支喘息の気道炎症には,Th2型サイトカイン,特にIL-5が強く関与していると考えられており,Th2型サイトカイン阻害薬は抗炎症作用を有する長期管理薬としての役割が期待されている。現在使用可能なTh2型サイトカイン阻害薬はスプラタストのみであるが,抗IL-5抗体を含めて,Th2型サイトカインの作用を抑制する種々の薬剤が開発・検討されつつある。
推奨:Th2型サイトカイン阻害薬はアレルギー性炎症を抑制し,喘息症状やその他のアレルギー症状の軽減に有用である。
科学的証拠
現在唯一臨床応用されているTh2型サイトカイン阻害薬であるスプラタストはin vitroでT細胞からのIL-4,IL-5産生を抑制し,動物実験でIgE抗体価を低下させ,気道過敏性を改善することが示されている。また,in vitroで好酸球のapoptosisを誘導し,刺激因子存在下での遊走を好酸球抑制するとの報告がある。
臨床試験でも,喘息患者に対して,気道粘膜への好酸球浸潤を抑制し,気道過敏性を改善させ,喘息症状を軽減させることが示されている1),2),3) 。最近,スプラタストが吸入ステロイドの減量に有用であることが示された4)。
科学的証拠文献表
文献 | 対象
| 試験デザイン
| 結果・考案・副作用 | 評価 |
螺良英郎ら1) 1992 |
|
| 両群ともに発作点数,喘息点数,日常生活点数,夜間睡眠点数を有意に改善。全般改善度はスプラタスト群がトラニラスト群より有意に優れていた。呼吸機能には両群とも有意な変化が見られなかった。 | II B |
Sano Yら2) 1997 |
|
| スプラタストは気道過敏性を有意に改善し,気管支粘膜・喀痰中の好酸球数を有意に減少させた。 | III B |
Nakagawa Tら3) 1999 |
|
| アトピー型喘息患者では朝夕のピークフローが有意に上昇した(朝 303±80→358±108L/min,朝 309±96→348±96L/min)。 | III B |
Tamaoki Jら4) 2000 |
|
| スプラタストはプラセボに比較して一秒量,ピークフローを有意に上昇させ,喘息症状を軽快させた。吸入ステロイドを半量に減量したとき,スプラタスト群では喘息症状の再増悪やβ2刺激薬の使用が有意に少なかった。 | II A |
結論
Th2型サイトカイン阻害薬は気道粘膜への好酸球浸潤を抑制し,アレルギー性炎症の改善に有用である。
参考文献
- 螺良英郎,小林節男,牧野荘平ほか: 経口抗アレルギー薬 IPD-1151T(トシル酸スプラタスト)カプセルの成人気管支喘息に対する薬効評価―トラニラストを対照とした多施設二重盲検比較試験. 医学のあゆみ 1992; 162: 171-192. (評価 II B)
- Sano Y, Makino S, Miyamoto T. Anti-inflammatory effect of supulatast tosilate on mild asthma. Chest 1997; 112: 862-863. (評価 III B)
- Nakagawa T, Nakamura T, Suzuki H, et al. Clinical outcome of combination therapy by anti-allergic drugs in adult patients with bronchial asthma. Int Arch Allergy Immunol 1999; 118: 347-348. (評価 III B)
- Tamaoki J, Kondo M, Sakai N, et al. Effect of suplatast tosilate, a Th2 cytokine inhibitor, on steroid-dependent asthma: a double-blind randomised study. Lancet 2000; 356 (9226): 273-278. (評価 II A)