(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
2-1-4.喘息増悪因子
喘息増悪因子は,既に喘息を発症した患者において,気道炎症や急性気道収縮の誘発により喘息発作を引き起こす因子である。従って,原因因子(アレルゲン)による気道感作が既に成立していれば,寄与因子である呼吸器感染,喫煙,大気汚染等に加えて,そのアレルゲンへの再曝露や運動および過換気,気象変化,食品・食品添加物,アルコール,薬物,心理的ストレス,月経等が喘息の増悪因子となる。
それらの増悪因子からの回避や除去を主とした二次予防は,喘息の長期管理に重要な影響を及ぼす。
(1) アレルゲン
前文
特定アレルゲンによる感作が成立していれば,それへの曝露によって喘息発作が誘発される。
推奨:アレルゲンは喘息症状の重要な増悪因子の一つであることから,アレルゲンを減らすための環境整備が強く推奨される。例えば,喘息発作の原因アレルゲンとして最も重要な室内塵中のダニの除去を目的とする室内環境改善策としては,床や寝具類等に多いダニ虫体および細粒化した糞や虫骸を掃除機でこまめに吸引除去し,さらに布団カバーやシーツを使用することが効果的である。(A)
科学的証拠
前項2-2-2原因因子(1)「アレルゲン」に準拠して検討した。
ダニアレルゲンの室内濃度が高いと,ダニに対する感作が増強し症状悪化につながることが報告されている41)(表2.)。なおごく微量の吸入アレルゲンでも喘息発作を誘発し得ることが最近の研究で明らかにされている42),43)。ダニアレルゲンを通さないベッド,枕カバーの使用により喘息症状は改善する44)が,殺ダニ剤やダニ忌避剤については,長期の使用経験がなく安全性や有用性はまだ確立されていない45)。
(RCT)
論文コード (年代順) | 対象 | 試験デザイン | 結果 | 評価 |
Frederickら44) 1997 | 31例,小児 軽症,中等症 | ダニアレルゲンを通さないベッド,枕カバーの使用群 vs非使用群 | カバーの使用群では室内のDer p1量が減少し喘息症状も改善した。カバーの使用群では血中EPOが減少した | II-A |
Weeksら45) 1995 | 56例,小児 軽症,中等症 | 寝室内への殺ダニ剤使用群vsコントロール群に分けて検討 | 殺ダニ剤使用により喘息症状の改善は認められなかった | II-B |
(相関研究)
論文コード (年代順) | 対象 | 変数 | 結果 | 評価 |
Lauら42) 1989 | 183例,小児 軽症,中等症 | 室内ダニ抗原量 ダニRAST,ヒスタミン遊離試験 | 室内ダニ抗原量とダニRAST,ヒスタミン遊離試験は相関関係を示した。r=0.54 p=0.0001 | IV-B |
Arrudaら43) 1991 | 20例,6〜12歳 軽症,中等症 | 室内ダニ,ネコ,ゴキブリ抗原量 RAST値 | 室内ダニ抗原量とダニRAST値は相関関係を示した | IV-B |
結語
アレルゲンの除去対策はアレルギー疾患治療の根幹をなすものであることから,個々のアレルゲンを同定し,その除去を根気よく継続する必要がある。