(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 

(4) 喫煙

前文

タバコの煙には,4,500種類以上の化合物や汚染物質が確認されている。タバコ煙は,粒子層と気層からなり,それぞれニコチン,ベンツピレン等と一酸化炭素,ニトロソアミン,窒素酸化物などが含まれている。各種有害物質の含有量は,喫煙者が直接吸い込む「主流煙」より,点火部から空中に立ち昇る「副流煙」のほうが高く,pH9前後のアルカリ性で粘膜刺激性も著しく高い。これが,受動喫煙による生体への影響に大きく関与している。

推奨:家族に喘息患者がいる場合は,患者を含めて家族全員が禁煙すべきである。特にアレルギー素因を持った小児の親が喫煙することによって,アレルギー疾患発症のリスクが増大するため,両親の禁煙が推奨される。(B)
科学的証拠

喫煙と喘息でMedline検索すると2,088の文献が得られた。そのうちコントロール試験を実施した257の文献を検討した。

喘息患児の受動喫煙を減少させるためにデザインされた6ヶ月にわたるカウンセリングプログラムは,家庭におけるenvironmental tobacco smoke(ETS)を減少させることに有効である32)。しかしこの両親への教育は,患児の診察に付随して行う方法では有効性が低く,独立のプログラムで行うことが必要であることが判明している33)。片親よりも両親が喫煙するほうがリスクはより増大し33),特に母親の受動喫煙に曝露された小児においてリスクが増大する34)。また妊婦の喫煙は,胎児へのタバコ曝露をもたらすことから,気道過敏性に影響を与え,出生後の乳児の肺機能にも影響(低下)することが報告されている35)

(分析疫学的研究)

論文コード
(年代順)
対象背景要因結果評価
Sherrillら34)
1992
634例,9歳
喘鳴の既往のある小児
両親の喫煙の肺機能への影響に関する前向き縦断的コホート研究。
6年間追跡
両親の喫煙群では15歳時のFEV1.0/VCが非喫煙群に比し有意に低下。母親の喫煙の影響が大きいIV-B

結語

アレルギー疾患患者では,喫煙が喘息発症の寄与因子となり得るため,患者本人および家族は禁煙をすべきである。

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す