(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
(2) 屋外大気汚染
前文
二酸化窒素などの窒素酸化物,オゾン,二酸化硫黄などが屋外の環境汚染物質である。汚染源は,以前考えられていた工業地帯だけでなく,近年では自動車からの排気ガスが重要となっている。これらの屋外大気汚染物質が,喘息発症に寄与することが推測されている。
推奨:気道の反応性に影響する大気汚染の発生源となる工場からの汚染物質の排出規制,自動車の排気ガス規制やガソリンエンジン,ディーゼルエンジンなどの内燃機関からの汚染物質の削減など,社会的な予防策が望まれる。(B)
科学的証拠
大気汚染と喘息でMedline検索すると1,097の文献があり,そのうち105編がコントロール試験であった。
交通の多い地域において,到達しうる濃度の二酸化窒素と二酸化硫黄の混合気は,気管支喘息患者の抗原に対する気道の反応性を亢進させ26),その影響は24時間後に最大となり24〜48時間続くことが報告されている27)。またオゾンなどのオキシダント汚染物質は,気道粘膜の透過性を高めることによって抗原の影響を増加させる可能性がある28)。
(RCT)
論文コード (年代順) | 対象 | 試験デザイン | 結果 | 評価 |
Molfinoら28) 1991 | 7例, 40±13歳 アトピー性喘息患者 | オゾンとプラセボを盲検法で吸入 1時間吸入 | オゾンはbaseline FEV1.0には影響を与えない。オゾンはFEV1.0を15%低下させるアレルゲン量PC15を有意に低下させる | II-C |
Devaliaら26) 1994 | 10例, 18〜45歳 中等症 | NO2とSO2の混合気を吸入,空気を吸入の2種を盲検法で無作為に行う 6時間吸入 | NO2,SO2の混合気を吸入後FEV1.0,FVCに変化はないが,Del p抗原に対するPD20,FEV1.0は有意に低下 | II-C |
結語
工場からの排出ガス,あるいは自動車からの排気ガスは,喘息の発症に影響する可能性が高い 。