(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
2-1-2.原因因子
原因因子は気道を感作し,喘息発症の重要な要因となる危険因子である。最も重要な原因因子として,室内アレルゲン(室内塵ダニ,動物アレルゲン,真菌等),屋外アレルゲン(花粉,真菌等)などの吸入アレルゲンが挙げられる。
(1) アレルゲン
前文
喘息発症の原因因子として重要な吸入アレルゲンのうち,室内アレルゲンとしては室内塵ダニやネコ,イヌ,ハムスターやモルモットなどの動物由来のアレルゲン,ペニシリウム,クラドスポリウム,アスペルギルスなどの真菌類が特に重要である。
一方,屋外アレルゲンとしては花粉,真菌類,昆虫類がある。スギ,ヒノキなどの樹木花粉は早春に,カモガヤなどのイネ科花粉は晩春や夏期に,ブタクサ,ヨモギなどの雑草花粉は夏期や秋期に飛散する。真菌類では,アルテルナリア,クラドスポリウム,昆虫ではユスリカによる喘息等が注目されている。
寄生性,感染性真菌としてはカンジダ,トリコフィトンなどがあり,成人喘息の原因と考えられている。
科学的根拠
前項と同じ方法によって,過去10年間における喘息のリスクファクターとしてのアレルゲンに関する文献が211編検索された。そのうち要旨を検討して有用と考えられた26編について検討した。
吸入アレルゲンは室内塵ダニ9),動物由来のアレルゲン10),11),真菌類12),13)やトリコフィトン14)以外に,昆虫のユスリカ15)や近年欧米においてゴキブリアレルギー16)についての報告がある。アレルゲン曝露によって,アトピー素因のある者にアレルゲン特異的T細胞クローンの増殖が誘導されてIgE抗体が産生される17)。さらに,持続的なアレルゲン曝露により慢性のアレルギー性炎症が維持されて喘息が発症し,大量に曝露されると急性喘息発作が出現する。なおアレルゲンが強力な感作能力をもっていれば,大気中の濃度が低くても感作が成立することを示唆するデータが報告されている18) 。
小児喘息と環境中の曝露ダニアレルゲン量との関係については,室内塵のDer p 1量が2μg/g dust以上で感作され,10μg/g dust以上で喘息が発症するとの報告がある19)。また生後1歳まで食餌や吸入アレルゲンを除去すると,その後のアレルギー疾患の発生率が低下する興味深い研究も見られ20),その理由は生後1年間が粘膜免疫の発展段階にあるためにアレルゲンの感作リスクが最も高くなると考えられている21)。
結語
喘息の発症には様々なアレルゲンの関与が考えられる。
(2) 職業性感作物質
成人では職業性感作物質への曝露により喘息が発症する例が知られており,多くの感作物質が報告されている。(第6章(6)「職業性喘息」参照)