(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 

2.喘息の危険因子・予防

2-1.喘息の発症・増悪に関わる危険因子と予防

喘息の危険因子はその発症に関わる因子(素因,原因因子,寄与因子)と喘息を発症した患者の症状を増悪させる因子(喘息増悪因子)に分けることができる。これらの因子は喘息の発症と増悪のいずれにも関与することが多いことから,喘息の発症を防ぎ(一次予防),また喘息の増悪を防止する(二次予防)ために,これらの危険因子を回避・除去することが大切である。

2-1-1.素因

前文

素因とは,喘息の発症に関与する危険因子のうちで遺伝的なものである。

アトピー素因,アレルギー性の家族歴についてはほとんどの調査で喘息の発症に強い関連を示唆しており,遺伝的要因は発症に関わる重要な要因である。一方,性別については男児および成人女性で有病率が高い傾向であるが,その根拠は確定的でない。

科学的根拠

成人発症喘息の発症危険因子についてその科学的根拠を検討した。検討方法としてはNational library of medicine,Advanced Medline Searchより,喘息,危険因子,発症にて検索した。登録されたすべての刊行物を対象に検索したところ,120編検索されたが,そのうち要旨を検討して有用と考えられた27編について検討した。

小児ではアトピー素因を持つことと,母親が喘息を有することは同程度のリスクとされている1)。また若年成人においても同様に,両親に喘息が存在するときの発病リスクは3〜5倍程度高くなる2)。しかし喘息形質が多遺伝子によるためか,あるいは遺伝子発現の多様性によるもののためか,一卵性双生児における発症のリスクは一方に喘息患者がいるときに7倍程度で,遺伝的要因や環境要因がほとんど同一であっても必ずしも100%ではないことが報告されている3)

アトピー素因についても遺伝的要因は明かで,第11染色体上の高IgE受容体遺伝子や第5染色体上のIL-4関連遺伝子との関係が報告されている4),5)。またアトピー素因と喘息発症の関連も明らかで,血清総IgE値と気道過敏性は相関するとされている6)。また男児のほうが喘息有病率は高いといわれているが,その原因は男児にアトピー素因が多く発現されるためとの報告がある7)。一方成人では女性に多い傾向があるが,性差における発症率には一定の見解が得られていない8)

(分析疫学的研究)

論文コード
(年代順)
対象背景要因結果・考案評価
Sears MRら
1993
13歳のアトピーと診断された662例喘鳴,喘息,花粉症の診断と性差,スキンテスト男児の喘息は女児の1.6倍だが,皮膚反応も同様で,皮膚反応で補正すると性差はなくなるIV-B
Sunyer Jら
1997
無作為抽出の20〜44歳, 2,646例喘息発症と性,家族歴,アトピー通年性アレルゲン陽性で10倍,季節性アレルゲン陽性で11倍,家族歴で4.5倍のリスクIV-B
Harris JRら
1997
25歳までの5,864例の双子遺伝的要因と成育環境発症の75%は遺伝的要因IV-B
Bodner CHら
1998
確認できた成人発症喘息319例と健常人380例喘息発症と性,喫煙,社会階層,アトピー性素因アトピー性素因との関連あり(RR 5.49)性差,タバコ,階層との関連不明IV-B

(分析疫学的研究)

論文コード
(年代順)
対象変数結果・考案評価
Cookson WOら
1989
アトピー患者を含む7家系アトピーと11染色体の多型性ロッドスコア 5.58IV-B
Sears MRら
1991
1病院で1972から1973年までに出生した1,661例のうち1,037例血清IgEと気道過敏性血清IgEと気道過敏性は関連する(p<0.001)。IV-B

結語

成人発症の喘息にも明らかな遺伝的素因を認めるが,性差は明らかでない。

 
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