3 再発予防 CQ38 高尿酸血症に対する尿酸生成抑制薬は尿路結石再発予防に有効か?

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3 再発予防 CQ38 高尿酸血症に対する尿酸生成抑制薬は尿路結石再発予防に有効か?
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推奨/回答

高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石の非再発率が,尿酸生成抑制薬の投与により有意に増加し,結石によるイベントも有意に減少したという報告があるため,有効である。

推奨の強さ

A:十分なエビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように強く推奨する。

高尿酸血症に合併する結石は,必ずしも尿酸結石ばかりではない。尿路結石のなかで最も頻度が高いシュウ酸カルシウム結石の形成にも大きく関与している。Coe らは,尿中への過剰な尿酸排泄が,シュウ酸カルシウム結石形成と密接な関連があるとし,高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石症(hyperuricosuric calcium oxalate nephrolithiasis)の存在を明らかにした。尿中で溶解している尿酸が一定の濃度を超えると,シュウ酸カルシウムの溶解度を下げ,不均一核形成を促進し結晶が析出しやすくなることが主な原因と考えられている。一方,Curhan らは,3,350 名の24 時間尿と結石形成リスクの横断研究を行い,尿中カルシウム増加,尿中シュウ酸増加,尿中クエン酸減少,尿量減少は結石形成リスクを有意に高めたが,高尿酸尿の状態は必ずしもシュウ酸カルシウム結石のリスクを高めないことを報告した。

薬理作用
アロプリノールは,キサンチンオキシダーゼに対して,ヒポキサンチンおよびキサンチンと拮抗することによって尿酸の生合成を抑制し,その結果,血中尿酸値および尿中尿酸値を低下させる。また,アロプリノールの主代謝物であるオキシプリノールもキサンチンオキシダーゼ抑制作用を有する。投与中は摂水量を多くし,1 日尿量を2,000 mL 以上とすることが望ましい。腎機能障害のある患者では排泄が遅延し高い血中濃度が持続するので,投与量の減量や投与間隔の延長を考慮する必要がある。

再発予防の機序
高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石症の再発予防としては,アロプリノールが有効である。その機序は,アロプリノール投与によりシュウ酸カルシウム結晶析出を減少させる,シュウ酸カルシウム結晶のプロモーターとしての尿酸結晶を減少させる,コロイド状の尿酸と高分子抑制物質との複合体を形成する,シュウ酸排泄を減少する,抗酸化作用によると考えられる。

効果
高尿酸血症,または高尿酸尿を伴う多発性シュウ酸カルシウム結石患者に,アロプリノール(200 mg/day)を2 年間投与すると,結石再発はアロプリノール投与前に比較し有意に減少した。プラセボとの二重盲検試験では,高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石の非再発率が,プラセボ群の63.4%に比較し,アロプリノール投与(300 mg/day)により,81.2%と有意に増加した。また,結石によるイベントもプラセボ群の0.26/patient/year に比較し,アロプリノール投与により0.12/patient/year に有意に減少した。
また,フェブキソスタットをシュウ酸カルシウム結石の既往をもつ高尿酸尿症患者に投与した結果,尿中尿酸排泄量が低下し尿路結石のサイズや数も減少傾向を示した。

副作用と中止基準
アロプリノールによる重大な副作用として,皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群),中毒性表皮壊死症(Lyell 症候群),剥脱性皮膚炎等の重篤な発疹または過敏性血管炎があらわれることがある。発熱,発疹等が認められた場合には,直ちに投与を中止し,ステロイド剤の投与等適切な処置を行う必要がある。漢民族を対象とした後ろ向き研究において,アロプリノールによる皮膚粘膜眼症候群,中毒性表皮壊死症等の重症薬疹発症例のHLA 型を解析した結果,51 症例全てがHLA-B*5801 保有者であったとの報告がある。

他のガイドラインからのアプローチ
2010 年に第2 版が刊行された『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』の尿路結石の項目のステートメントには,高尿酸血症を有していても,必ずしも尿路結石の頻度は増加しない(エビデンスレベル3,推奨度B),高尿酸尿を有すると,尿路結石の頻度が増加する傾向にある(エビデンスレベル3,推奨度B),高尿酸血症や痛風に合併する尿路結石は,尿酸結石だけではなく,尿路結石で最も頻度が高いシュウ酸カルシウム結石もある(エビデンスレベル3,推奨度B),尿路結石を合併する高尿酸血症の治療薬は,尿酸生成抑制薬が第1 選択である(エビデンスレベル3,推奨度B),高尿酸尿を伴うシュウ酸カルシウム結石の再発防止には,尿酸生成抑制薬や尿アルカリ化薬が有効である(エビデンスレベル1b,推奨度A)と記載されている。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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