3 再発予防 CQ33 カルシウム結石の再発予防には一定量のカルシウム摂取が必要か?

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3 再発予防 CQ33 カルシウム結石の再発予防には一定量のカルシウム摂取が必要か?
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推奨/回答

最近の前向き研究結果から,カルシウム結石の再発予防には,カルシウム摂取を制限するより,むしろ一定量のカルシウム摂取を行うことが勧められる。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

上部尿路結石罹患者の生活習慣および食生活
近年の上部尿路結石症の高い罹患率や再発率の最大の原因は,戦後急速に変化した生活習慣や食生活の欧米化によるものと考えられている。男性の上部尿路結石患者の生活習慣および食生活の特徴を健常者と比較したケースコントロールスタディでは,結石患者の特徴として,①肥満傾向,②運動不足,③総タンパク質・動物性タンパク質・脂肪の摂取過多,④カルシウム摂取量は少なく,牛乳の摂取頻度も少ない,⑤野菜摂取量は少なく,緑黄色野菜・海藻類の摂取頻度も低い,⑥甘味飲料水・清涼飲料水の摂取頻度が高い,⑦夕食中心の食生活(特に動物性タンパク質の摂取),⑧夕食から就寝までの時間が短い,などがあげられている。上部尿路結石のなかでも,カルシウム結石や尿酸結石の罹患および再発予防のためには,これらの特徴を考慮して生活習慣および食生活の改善に努める必要がある。

食事指導におけるカルシウム摂取について
カルシウムの多量摂取は尿中カルシウム排泄量を増加させるため,カルシウム結石形成に促進的に働くと考えられ,従来はカルシウム摂取を制限する方向で食事指導されてきた。しかし,上部尿路結石患者と健常者のカルシウム摂取量の比較により,実際には結石患者の方が有意にカルシウム摂取は少ないという結果が,大規模な前向き研究において報告されている。最近では,一定量のカルシウム摂取を行うことが再発予防には大切であると結石患者に指導するようになってきている。
カルシウムは,腸管内でシュウ酸と結合して難溶性の結晶を形成し,糞便中に排泄させることでシュウ酸の吸収を抑制する。そのためカルシウム摂取制限は,逆にシュウ酸の消化管吸収を亢進させ,尿中シュウ酸排泄量の増加をきたすことが明らかになってきた。カルシウム摂取量と腸管から吸収されるシュウ酸の検討では,1 日200~1,200 mg のカルシウム摂取により,シュウ酸吸収は用量依存的に減少することがわかっている。しかし,食事によるカルシウム摂取については,高カルシウム食において尿中カルシウム排泄量とシュウ酸カルシウムの相対飽和度が有意に増加するという報告もある。このことから,適量のカルシウム摂取は,腸管からのシュウ酸吸収を抑制するが,カルシウムの過剰摂取は,シュウ酸と結合しない余剰のカルシウムが腸管から多く吸収されることにより,尿中のカルシウム排泄量が増加し結石形成を促進することにもなりかねない。
カルシウム制限を必要とする特殊な疾患として,腸管吸収型の特発性高カルシウム尿症がある。これは何らかの原因により腸管からのカルシウム吸収が増加し,血液中のカルシウム量が増加するので,腎糸球体のカルシウム濾過量が増え,高カルシウム尿症を生じるものである。治療および予防としては,カルシウム摂取量の制限や正リン酸を投与することである。正リン酸の投与によって活性型ビタミンD の合成を抑制し,カルシウムの腸管吸収を減少させる。
日本人のカルシウム摂取量は栄養所要量である1 日600 mg に達しておらず,結石患者のカルシウム摂取量はさらに少ない傾向にある。近年,アメリカにおいてカルシウム摂取量を増加したほうがカルシウム結石形成を抑制するとの前向き研究が報告されたことから,1 日1,000mg 以上のカルシウム摂取を指導することもあるようだが,まだ日本ではカルシウム大量摂取の長期報告がされておらず,推奨されていない。現在,日本における結石患者の至適カルシウム摂取量は1 日600~800 mg と指導している。一般に,牛乳や豆腐100 g 中には約100 mg のカルシウムが含まれている。確かに牛乳の摂取は効率のよいカルシウム補充ではあるが,過剰な脂肪摂取も尿路結石形成の促進因子と考えられており,できれば脂肪分の少ない牛乳に切り替えるなどして,過剰摂取にならないよう指導することも大切である。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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