水分摂取は再発予防に対して有効である。再発予防には1 日尿量2,000 mL 以上となるように水分を摂取することが必要であり,そのため食事以外に1 日2,000 mL 以上の飲水を指導する。
A:十分なエビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように強く推奨する。
水分を多く摂取し,尿量を増加させることは結石成分や発生原因の如何を問わず尿路結石の再発予防の基本であり,有効性,エビデンス,忍容性,コンプライアンスの総合点から再発予防に対して水分摂取量の増加が最も効果的とされている。 水分摂取と結石発生 水分摂取によって尿量を増加させることは,結石促進物質の濃度を低下させるが,同時に結石抑制因子の濃度も低下させ予防効果が相殺される懸念が生じる。しかし,水分を負荷したヒトの尿を用いた実験で,シュウ酸カルシウム結晶が形成されにくくなることが報告されており,水分摂取による尿の希釈は結石予防に有用であると考えられている。 慢性的な脱水状態や水分摂取不足では尿路結石が発生しやすく,結石形成の危険度は,1日尿量が1,000 mL 以下で増加,2,000 mL 以上で低下する。1 日尿量を2,000 mL 以上にするために適正な1 日水分量は,欧米では2,250~3,000 mL とされている。 食事内容と腎結石発生に関する前向きコホート調査では,Taylor らが,男性(対象:45,619名,調査期間:14 年間)では水分摂取量と尿路結石発生において年齢調整相対危険度(p<0.001)および多変量解析での相対危険度(p<0.001)で,ともに有意差を認めたとしている。 また,Curhan らは,女性(対象:91,731 名,調査期間:12 年間)では同様に年齢調整相対危険度はp<0.001 であり,多変量解析での相対危険度はp=0.03 であるとしている。 飲水指導による再発予防効果 飲水指導が再発予防に有効か否かについてのRCT では,Borghi らが199 名の初発尿路結石症患者を対象として,1 日2,000 mL 以上の飲水指導を行った群と行わなかった群の5 年後再発率を調べた。その結果,飲水指導群では12.1%,非指導群では27%であり,有意差(p=0.008)を認め,さらに両群の尿量(p<0.001),シュウ酸カルシウム結晶溶解度(CaOx RS)(p<0.001)にも有意差が認められたとしている。 Sarica らは,ESWL 治療を受けた腎結石患者70 名を対象として,1 日尿量2,500 mL 以上となるよう飲水指導を行った群と行わなかった群の24~36 か月後(平均30.4 か月後)の再発率を調べた。その結果,飲水指導群では8%,非指導群では56%であり,有意差(p<0.01)を認めたとしている。 Fink らは,これらのRCT から1 日2,000 mL 以上の水分摂取を行い,1 日尿量を2,500 mL以上とすることで再発リスクを61%(relative risk:0.39,95% confidence interval:0.19~0.80)に減少できるとしている。 根拠としたRCT は,母集団が小さいことと性別による検討がなされていないことなどが問題点ではあるが,基礎研究結果も含めて尿路結石の再発予防に水分摂取が有効であると考えられる。ただし,多くの臨床研究が欧米からの報告であり人種,気候,BMI なども考慮した評価が今後の課題である。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
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水分を多く摂取し,尿量を増加させることは結石成分や発生原因の如何を問わず尿路結石の再発予防の基本であり,有効性,エビデンス,忍容性,コンプライアンスの総合点から再発予防に対して水分摂取量の増加が最も効果的とされている。
水分摂取と結石発生
水分摂取によって尿量を増加させることは,結石促進物質の濃度を低下させるが,同時に結石抑制因子の濃度も低下させ予防効果が相殺される懸念が生じる。しかし,水分を負荷したヒトの尿を用いた実験で,シュウ酸カルシウム結晶が形成されにくくなることが報告されており,水分摂取による尿の希釈は結石予防に有用であると考えられている。
慢性的な脱水状態や水分摂取不足では尿路結石が発生しやすく,結石形成の危険度は,1日尿量が1,000 mL 以下で増加,2,000 mL 以上で低下する。1 日尿量を2,000 mL 以上にするために適正な1 日水分量は,欧米では2,250~3,000 mL とされている。
食事内容と腎結石発生に関する前向きコホート調査では,Taylor らが,男性(対象:45,619名,調査期間:14 年間)では水分摂取量と尿路結石発生において年齢調整相対危険度(p<0.001)および多変量解析での相対危険度(p<0.001)で,ともに有意差を認めたとしている。
また,Curhan らは,女性(対象:91,731 名,調査期間:12 年間)では同様に年齢調整相対危険度はp<0.001 であり,多変量解析での相対危険度はp=0.03 であるとしている。
飲水指導による再発予防効果
飲水指導が再発予防に有効か否かについてのRCT では,Borghi らが199 名の初発尿路結石症患者を対象として,1 日2,000 mL 以上の飲水指導を行った群と行わなかった群の5 年後再発率を調べた。その結果,飲水指導群では12.1%,非指導群では27%であり,有意差(p=0.008)を認め,さらに両群の尿量(p<0.001),シュウ酸カルシウム結晶溶解度(CaOx RS)(p<0.001)にも有意差が認められたとしている。
Sarica らは,ESWL 治療を受けた腎結石患者70 名を対象として,1 日尿量2,500 mL 以上となるよう飲水指導を行った群と行わなかった群の24~36 か月後(平均30.4 か月後)の再発率を調べた。その結果,飲水指導群では8%,非指導群では56%であり,有意差(p<0.01)を認めたとしている。
Fink らは,これらのRCT から1 日2,000 mL 以上の水分摂取を行い,1 日尿量を2,500 mL以上とすることで再発リスクを61%(relative risk:0.39,95% confidence interval:0.19~0.80)に減少できるとしている。
根拠としたRCT は,母集団が小さいことと性別による検討がなされていないことなどが問題点ではあるが,基礎研究結果も含めて尿路結石の再発予防に水分摂取が有効であると考えられる。ただし,多くの臨床研究が欧米からの報告であり人種,気候,BMI なども考慮した評価が今後の課題である。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)