PNL の合併症を予測する因子は,患者因子では結石の大きさ,年齢(高齢者),メタボリックシンドローム,CKD であり,非患者因子では術者の熟練度,施設の年間症例数である。
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
合併症のリスクファクターは術前因子(患者因子と非患者因子),術中因子に分類する。ここでは術前因子について述べる。 ◇患者因子 結石の状態 結石の大きさに比例して術後の発熱と輸血のリスクが上昇し,stone-free rate が低下,入院期間の延長がみられる。また,同じ大きさの腎結石でも,腎杯結石では腎盂結石と比較して合併症のClavien score が高くなる。 サンゴ状結石 非サンゴ状結石と比較して,術後発熱率,出血率,輸血率が高く,手術時間,入院日数の延長がみられる。 年齢 70 歳で区切ると,高齢者群ではstone-free rate は同等であるが,合併症率は有意に高く,入院期間の延長がみられる。小児(14 歳以下)では,少数例の報告のみであるが,成人症例との比較また就学前(0~4 歳)と就学後(5~14 歳)との比較では,発熱や輸血などの合併症発生率に差は認めなかった。 BMI 肥満度については,合併症の頻度や入院期間に有意差はみられなかったが,手術時間の延長,stone-free rate の低下がみられた。 メタボリックシンドローム 糖尿病,高血圧を有する症例では合併症の発生率が2.7 倍とする報告がある。 先天異常 馬蹄腎や腎回転異常などの先天性異常では,手術時間の延長と腎瘻穿刺回数の増加はみられたが,合併症の発生率に差はみられない。 移植腎 移植腎では重篤な合併症はなく,腎機能は保持されているとの少数例の報告がある。 単腎症例 単腎症例では,輸血率が有意に高かったが,発熱や穿孔などの合併症に差はみられない。またstone-free rate の低下がみられる。 CKD CKD(stages 0/ Ⅰ/Ⅱ 60-, stage Ⅲ 30-59, stages Ⅳ/Ⅴ -30 mL/minute/1.73 m2)においては各群の比較とも発熱,輸血率に有意差を認めた。 手術歴 腎切石術,腎盂切石術の有無により合併症の発現に差はみられなかった。 尿路感染 敗血症の予測には膀胱尿の細菌培養検査より,腎盂尿や結石の細菌培養検査が優れている。 ◇非患者因子 術者のlearning curve については,初期の45 例まで軽度の合併症がみられるが,その後は認められない。またClavien score ではgrade Ⅲ以上の合併症は初期20 例のみにみられた。 手術時間,放射線被曝時間は60 例で一定という報告がある。 施設の年間の手術症例数については,high volume center はlow volume center に比較して,出血や輸血,腎盂穿孔などの合併症が有意に少なかった。症例数の増加に比例して合併症は減少し,平均のClavien score では年間120 例以上の施設でnadir となる。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
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合併症のリスクファクターは術前因子(患者因子と非患者因子),術中因子に分類する。ここでは術前因子について述べる。

◇患者因子
結石の状態
結石の大きさに比例して術後の発熱と輸血のリスクが上昇し,stone-free rate が低下,入院期間の延長がみられる。また,同じ大きさの腎結石でも,腎杯結石では腎盂結石と比較して合併症のClavien score が高くなる。
サンゴ状結石
非サンゴ状結石と比較して,術後発熱率,出血率,輸血率が高く,手術時間,入院日数の延長がみられる。
年齢
70 歳で区切ると,高齢者群ではstone-free rate は同等であるが,合併症率は有意に高く,入院期間の延長がみられる。小児(14 歳以下)では,少数例の報告のみであるが,成人症例との比較また就学前(0~4 歳)と就学後(5~14 歳)との比較では,発熱や輸血などの合併症発生率に差は認めなかった。
BMI
肥満度については,合併症の頻度や入院期間に有意差はみられなかったが,手術時間の延長,stone-free rate の低下がみられた。
メタボリックシンドローム
糖尿病,高血圧を有する症例では合併症の発生率が2.7 倍とする報告がある。
先天異常
馬蹄腎や腎回転異常などの先天性異常では,手術時間の延長と腎瘻穿刺回数の増加はみられたが,合併症の発生率に差はみられない。
移植腎
移植腎では重篤な合併症はなく,腎機能は保持されているとの少数例の報告がある。
単腎症例
単腎症例では,輸血率が有意に高かったが,発熱や穿孔などの合併症に差はみられない。またstone-free rate の低下がみられる。
CKD
CKD(stages 0/ Ⅰ/Ⅱ 60-, stage Ⅲ 30-59, stages Ⅳ/Ⅴ -30 mL/minute/1.73 m2)においては各群の比較とも発熱,輸血率に有意差を認めた。
手術歴
腎切石術,腎盂切石術の有無により合併症の発現に差はみられなかった。
尿路感染
敗血症の予測には膀胱尿の細菌培養検査より,腎盂尿や結石の細菌培養検査が優れている。
◇非患者因子
術者のlearning curve については,初期の45 例まで軽度の合併症がみられるが,その後は認められない。またClavien score ではgrade Ⅲ以上の合併症は初期20 例のみにみられた。
手術時間,放射線被曝時間は60 例で一定という報告がある。
施設の年間の手術症例数については,high volume center はlow volume center に比較して,出血や輸血,腎盂穿孔などの合併症が有意に少なかった。症例数の増加に比例して合併症は減少し,平均のClavien score では年間120 例以上の施設でnadir となる。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)