PNL の合併症の主なものは,発熱,出血,気胸,血尿,腎盂穿孔,尿漏出などがあり,約20%に認められる。
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
◇合併症の分類 合併症の頻度は23.3%で重症度の分類Clavien score ではgradeⅠ(11.4%),Ⅱ(7.1%),Ⅲa(2.7%),Ⅲb(1.4%),Ⅳa(0.4%),Ⅳb(0.2%),Ⅴ(0.04%)であり,手術時間とASA scoreが合併症の重症度に相関する。 主な合併症は38.5℃以上の発熱(10.8%),出血(7.8%),輸血(7%),腎盂穿孔(3.4%),胸部合併症(1.5%),敗血症(0.5%),他臓器損傷(0.4%)である。 またPNL の合併症は,発症の時期から①腎瘻作成に関連した合併症,②結石摘出時の合併症,③術後管理時の合併症に分類される。 合併症のリスクファクターは術前因子(患者因子と非患者因子),術中因子に分類される。 ◇合併症の予防法および対処法 発熱,敗血症 尿路感染のリスクファクターは術前尿培養陽性,腎盂尿,結石培養が重要であり,膀胱尿より腎盂尿,結石の培養のほうが敗血症の予測因子となるとの報告がある。また,手術時間が90 分以上で術後敗血症の危険が高まるとの報告がある。 術後尿路感染の予防法については,RCT にて術前1 週間前からのシプロフロキサシンやニトロフラントイン投与は感染リスクを軽減することが報告されている。またその他のRCT で,スルバクタム・アンピシリンとセフロキシムは同等の予防効果があり,単回投与で十分であるとされた。シプロフロキサシンとセフトリアキソンのRCT による予防効果は同等であった。 出血 静脈性出血は,結石,シース,鉗子,破砕器具により生じやすく,慎重な操作が必要である。対処法はタンポナーデによる止血または電気凝固を行う。肋間静脈の出血は圧迫止血または縫合を行う。 動脈性出血は,動静脈瘻,偽性動脈瘤,動脈の断裂によるものであり,1.2%にみられる。予防法は細径のトラクト,トラクト数を減らす,軟性腎盂鏡の使用,カラードプラーの使用である。対処法は血管造影,塞栓術である。 腎周囲血腫は,血尿が流出しないにもかかわらず,貧血が進行する場合に疑う。対処法は保存的療法またはドレナージである。 他臓器損傷 近接臓器である肝臓,脾臓,結腸,胸部(肺,胸膜)の損傷が認められる。第11 肋骨より頭側,後腋下線より腹側が近接臓器損傷のリスクファクターになる。また術前のCT スキャン,超音波下腎瘻穿刺が有用であり,特に第11 肋骨より上方を穿刺する場合は,これらの使用により合併症が減少する。 肝臓,脾臓の損傷は通常保存的に経過観察するが,循環動態が不良であれば開放手術を行う。 結腸損傷は0.3%にみられ,高齢者,馬蹄腎がリスクファクターとなる。対処法は尿路と腸管の交通を遮断することである。尿管ステントを留置し,非経口栄養にて抗生剤の静脈投与を行う。徐々に腎瘻カテーテルを抜去し,造影にて腸管損傷の回復を確認する。 胸腔内合併症については,第11 肋骨より上方の穿刺を避けることが予防法であり,対処法は保存的治療,胸腔ドレナージである。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
診療ガイドライン
医療従事者の方の意思決定のために
ガイドライン解説
病気や治療法について知りたい一般の方へ
◇合併症の分類
合併症の頻度は23.3%で重症度の分類Clavien score ではgradeⅠ(11.4%),Ⅱ(7.1%),Ⅲa(2.7%),Ⅲb(1.4%),Ⅳa(0.4%),Ⅳb(0.2%),Ⅴ(0.04%)であり,手術時間とASA scoreが合併症の重症度に相関する。
主な合併症は38.5℃以上の発熱(10.8%),出血(7.8%),輸血(7%),腎盂穿孔(3.4%),胸部合併症(1.5%),敗血症(0.5%),他臓器損傷(0.4%)である。
またPNL の合併症は,発症の時期から①腎瘻作成に関連した合併症,②結石摘出時の合併症,③術後管理時の合併症に分類される。
合併症のリスクファクターは術前因子(患者因子と非患者因子),術中因子に分類される。
◇合併症の予防法および対処法
発熱,敗血症
尿路感染のリスクファクターは術前尿培養陽性,腎盂尿,結石培養が重要であり,膀胱尿より腎盂尿,結石の培養のほうが敗血症の予測因子となるとの報告がある。また,手術時間が90 分以上で術後敗血症の危険が高まるとの報告がある。
術後尿路感染の予防法については,RCT にて術前1 週間前からのシプロフロキサシンやニトロフラントイン投与は感染リスクを軽減することが報告されている。またその他のRCT で,スルバクタム・アンピシリンとセフロキシムは同等の予防効果があり,単回投与で十分であるとされた。シプロフロキサシンとセフトリアキソンのRCT による予防効果は同等であった。
出血
静脈性出血は,結石,シース,鉗子,破砕器具により生じやすく,慎重な操作が必要である。対処法はタンポナーデによる止血または電気凝固を行う。肋間静脈の出血は圧迫止血または縫合を行う。
動脈性出血は,動静脈瘻,偽性動脈瘤,動脈の断裂によるものであり,1.2%にみられる。予防法は細径のトラクト,トラクト数を減らす,軟性腎盂鏡の使用,カラードプラーの使用である。対処法は血管造影,塞栓術である。
腎周囲血腫は,血尿が流出しないにもかかわらず,貧血が進行する場合に疑う。対処法は保存的療法またはドレナージである。
他臓器損傷
近接臓器である肝臓,脾臓,結腸,胸部(肺,胸膜)の損傷が認められる。第11 肋骨より頭側,後腋下線より腹側が近接臓器損傷のリスクファクターになる。また術前のCT スキャン,超音波下腎瘻穿刺が有用であり,特に第11 肋骨より上方を穿刺する場合は,これらの使用により合併症が減少する。 肝臓,脾臓の損傷は通常保存的に経過観察するが,循環動態が不良であれば開放手術を行う。
結腸損傷は0.3%にみられ,高齢者,馬蹄腎がリスクファクターとなる。対処法は尿路と腸管の交通を遮断することである。尿管ステントを留置し,非経口栄養にて抗生剤の静脈投与を行う。徐々に腎瘻カテーテルを抜去し,造影にて腸管損傷の回復を確認する。
胸腔内合併症については,第11 肋骨より上方の穿刺を避けることが予防法であり,対処法は保存的治療,胸腔ドレナージである。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)