2 診断・治療 CQ23 PNL トラクト作成の要点は何か?

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2 診断・治療 CQ23 PNL トラクト作成の要点は何か?
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推奨/回答

トラクトを置く位置,トラクトの本数は,患者ごとによく検討して決めるべきことであ る。術前の画像検査は極めて重要である。手術開始時に逆行性造影をまず行い,尿路の 形状を把握することは重要である。

PNL は1980 年代に大きな腎結石の治療法として開発された。標準的な方法は24~30 Fr のトラクトを用いる。最近は18 Fr 以下のトラクトを用いたmini-PNL も行われるようになってきたが,その呼称はまだ標準的ではなく,メリットもまだ議論されているところである。

PNL の体位
従来のPNL は腹臥位で行われるが,仰臥位(患側の上半身を少し上げた半側臥位も含む)で行うことも可能である。仰臥位のメリットは,経尿道的操作を追加できる,手術時間が短い,麻酔管理が安全といった点があげられる。一方,穿刺できる範囲が狭い,腎が可動しやすい,腎に至るまでの距離が長い,腹臥位に比べ拡張が難しい,といったデメリットもある。
体位や穿刺位置の決定には,術前のCT 画像による周囲臓器の把握が重要である。特に左側の場合,腸管の走行位置には注意を要する。

穿刺方法
Clinical Research Office of the Endourological Society(CROES)database を用いた5,806 例のPNL の穿刺法の比較研究では,超音波ガイド下で行われたものは453 例(13.7%)に過ぎず,2,853 例(86.7%)は透視ガイド下に行われていたが,超音波ガイド下のほうが術後の出血が少なく,輸血を要する率が明らかに低いことを報告している。また,トラクトのサイズが27 Fr を超えると出血が増すことも報告している。超音波を併用し,確実に腎杯を狙って穿刺することで,より安全となるものと考える。通常,尿管を閉塞し水腎を作り,穿刺前に逆行性に造影し腎盂腎杯の形状を把握することは,安全な穿刺のために重要である。

トラクトの位置,本数
結石の位置や大きさにより,また硬性鏡か軟性鏡のどちらを用いるかにより,適切なトラクトの位置も変化する。また1 本のトラクトが良いのか,複数のトラクトを設けるべきなのかも悩ましい問題である。トラクトが多ければ砕石は容易となるが,穿刺時の出血や臓器損傷などのリスクも増加する。
Nettoらによるサンゴ状結石に対する適切なトラクト造設に関する後ろ向きの比較研究では,119 例(上腎杯:16 例,中・下腎杯:70 例,複数腎杯穿刺:33 例)を検討しているが,stone-free rate は,上腎杯穿刺が87.5%と高く,次いで,複数のトラクトを置いた例が84.8%と高かった。一方,下腎杯や中腎杯の単独穿刺では80%であった。また,複数のトラクトを立てた場合,39.4%に輸血を要した(中・下腎杯穿刺では14.3%)。Singla は,164 腎(完全サンゴ状結石:43 例,部分サンゴ状結石:85 例,巨大結石:36 例)に,複数トラクトによるPNL を行い,98 腎では上腎杯穿刺も行い,通常3 トラクト作成したと報告している。そのうち,輸血は46 例に要し,仮性動脈瘤を4 例,敗血症を8 例,胸水貯留を7 例,血気胸1 例を認めている。結石除去率は1 回目のセッションで70.7%,2 回目のセッションで89%であったと報告している。結石除去率は良好であるが,合併症にはやはり注意を要するものと思われる。
2005 年のAUA のガイドラインでも,複数のトラクトを置くほうが大きな結石では望ましいとされている。最近は,上腎杯を穿刺することや,軟性鏡を用いることで,複数トラクトを置かなくとも良好な成績を上げることができるという報告もなされている。Yadav らは849 腎にPNL を行い,そのうち332 腎は上腎杯よりアプローチし,術後に11 例に胸水を認め,うち7 例に胸腔トロカールを挿入したが,他は安全に施行しえたことを報告している。Munver らは240 腎にPNL を行い,そのうち98 例に上腎杯穿刺を行い,合併症率は16.3%であったと報告している。
最近では,軟性尿管鏡を併用することで,PNL のトラクト数を減らし,安全に行うことができるとの報告もある。

トラクトの拡張方法
ダイレーターで少しずつ広げていく方法,バルーンで拡張する方法があるが,安全性,有効性ともにどちらも大きな差はないとされている。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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