2 診断・治療 CQ22 TUL とf-TUL において尿管ステント留置は必要か?

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2 診断・治療 CQ22 TUL とf-TUL において尿管ステント留置は必要か?
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推奨/回答

合併症のない症例では,ステント留置による下部尿路症状や,血尿が増悪することに加えて,アウトカムに関して非ステント留置群と比較し有意差は認められない。ゆえに,TUL 後の尿管ステント留置は,コストの面からも限られた症例に施行されるのが望ましい。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

尿管ステントは,これまで上部尿路結石に対するTUL のあとに予想される結石介在部での尿管閉塞や尿管狭窄などの合併症を予防する目的で,恒常的に留置されてきた。さらに,ステント留置することによって尿管が拡張され,尿路に残る破砕片の消失にも効果があると考えられてきた。
しかしながら,ステント留置に伴う様々な合併症(ステントの迷入,下部尿路刺激症状,尿路感染症,破損,結石形成など)も報告されたことに加えて,ステント留置や抜去に伴う費用が余計にかかるということが危惧されている。最近では,細径の尿管鏡とホルミウム・ヤグレーザーなどの破砕装置の発達により,尿管拡張なしでも砕石可能となり,術後の尿管ステント留置を省略できる可能性があると考えられるようになってきた。

不要論
Hosking らが,1999 年に下部尿管結石に対する合併症のないTUL 症例において,尿管ステント留置をしなくても特に大きな問題はないことを報告した。その後,TUL 後の尿管ステント留置の有無についていくつかのRCT による検討がなされてきたが,その多くは砕石装置として主にホルミウム・ヤグレーザーを用いたものである。

必要論
一方,TUL 後のステント留置を省略することに対して否定的な意見もある。Damiano らは,ballistic lithotripter(Swiss Lithoclast)を用いたTUL で,術後にステント留置群と非ステント留置群に分けてその治療成績や合併症についてRCT による比較検討を行った。その結果,治療成績や手術時間には有意差はないものの,ステント留置群に比較して非ステント留置群では,術後3 日目における痛みの頻度が有意に高く(p=0.01),痛みのために再入院となった患者は全て非ステント留置群であった。これらの結果より,Lithocrast によるTUL を行った場合には,特に合併症がない症例でも尿管ステント留置をするほうがよいとしている。これは,Lithocrast による砕石片が,ホルミウム・ヤグレーザーによるものに比較して大きいため,非ステント留置群での再入院が多くなったと考えられる。また,その他にもTUL 後のルーチンな尿管ステント留置の妥当性を主張する報告もある。

患者選定基準の問題
このような見解の相違が起こる原因のひとつに,患者選定の基準が必ずしも一定でないことが考えられる。Nabi らは,そもそも“uncomplicated ureteroscopy”の定義が曖昧で,尿管ステントを留置すべきか否かについて,実際のところ判断は非常に難しいとしている。すなわち,“uncomplicated”であるか否の判定については術式(TUL,f-TUL,バルーンダイレーション使用の有無等)や,使用された破砕装置の種類,術者の経験によって異なることが示唆されており,彼らの行ったメタアナリシスではTUL 後の尿管ステント留置の是非について明確に結論づけるまでには至っていない。
ただし,アウトカムや術後合併症に関する検討では,尿管ステント留置群では,非ステント留置群よりも有意に下部尿路刺激症状の発現頻度が高いものの,尿路感染の発症頻度や結石消失率,尿管狭窄の発現等に関して両群間に差はなかったとしている。また最近では,尿管口の拡張目的でのバルーンダイレーション施行後の症例においても,尿管ステント留置の有無でTUL の成功率に差はないという報告もある。

合併症のないTUL 後のステント留置
Pengfei らによる最新のメタアナリシスでは,合併症のないTUL 後の尿管ステント留置は必要ないことが明確に証明されている。彼らはRCT によって行われたstudy のうち16 文献をレビューし,1,573 名の患者(ステント留置群:776 名,非ステント留置群:797 名)で検討を行った。両群間の比較では,手術時間はステント留置群で有意に長く,下部尿路症状や痛み出現頻度に関しても,ステント留置群は非ステント留置群に比較して有意差をもって高かった。一方,発熱や,尿路感染症,再入院や尿管狭窄などの晩期合併症の出現頻度,結石消失率に関しても同様に両群間に有意差は認められなかった(96~100%)。
現時点では,特に合併症なく終了しえたTUL もしくはf-TUL に関して,尿管ステント留置は必須ではなく,もしステント留置を行う場合には,そのメリットとデメリットについての十分な説明を患者に行ってから施行することが望ましい。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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