2 診断・治療 CQ21 TUL の合併症は何か?
CQ/目次項目
2 診断・治療 CQ21 TUL の合併症は何か?
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推奨/回答
多くは軽微なもので,インターベンションを要さない尿管粘膜損傷(1.5%)や尿管穿孔(1.7%)である。尿管断裂(0.1%)や尿管狭窄(0.1%)は稀に発生する。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
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推奨/回答
術後尿性敗血症などの重篤な合併症(2.39%)も発生する。その発生率は手術時間の長さと,当該施設の年間TUL 件数が少ないほど多く発生する。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
尿管鏡の細径化とホルミウム・ヤグレーザー砕石装置を含む内視鏡周辺機器の改良により,TUL は過去10 年間で,より安全で有効な治療手段に進化した。その結果,以前に比べ重篤な合併症の発生率は減少した。EAU ガイドラインでは,合併症の発生率は全体で9~25%,その多くは軽微なもので,インターベンションを要さないとしている。以前は尿管狭窄や尿管断裂が危惧されたが,今日では稀で,熟練した術者がTUL を施行すればその発生率は1%未満と報告されている。
EAU ガイドラインでは,尿路結石治療を含めた2,735 件の経尿道的尿管鏡手術の合併症とその発生率(%)の検討結果を以下のごとく提示している。術中合併症(3.6%)としては尿管粘膜損傷(1.5%),尿管穿孔(1.7%),有意な出血(0.1%),尿管断裂(0.1%)であった。早期合併症(6.0%)としては発熱あるいは尿性敗血症(1.1%),持続性血尿(2.0%),腎疝痛(2.2%)である。また,晩期合併症(0.2%)としては尿管狭窄(0.1%),持続性膀胱尿管逆流症(0.1%)があると報告している。
重篤な合併症
重篤な合併症については,本邦のDPC データベース(2007~2010 年)解析の結果,TUL を施行した患者12,372 人のうち296 人(2.39%)に重篤な合併症が報告された。この場合の重篤な合併症とは,①死亡,②術後に敗血症ショックなどのためカテコールアミン,免疫グロブリン製剤,蛋白分解酵素阻害薬を使用した症例,DIC の治療を要した症例,輸血を要した症例,③術後に経皮的腎瘻造設術などのインターベンションを要した症例と定義されている。その主な内訳と頻度は,死亡8 例(0.06%),カテコールアミンを使用した症例240 例(1.94%),免疫グロブリン製剤を使用した症例46 例(0.37%),輸血を要した症例45 例(0.36%),経皮的腎瘻造設術を要した症例11 例(0.09%)であった。これら重篤な合併症の発生率は,手術時間の長さ(特に90 分以上)と,当該施設の年間TUL 件数が少ないほど多く発生すると報告している。
尿管アクセスシースに関連した尿管狭窄(発生率1.4%)の報告もあり,不必要に太いシースを長時間使用すれば尿管に虚血性損傷を引き起こす危険性があるため,留意すべきとしている。動物実験では尿管の虚血が確認されているが,長期観察の臨床データとRCT が必要とされている。
合併症への対処法
合併症への対処法として,尿管穿孔を認める場合は尿管鏡操作を終了して尿管ステントを留置すべきとしている。損傷が大きく,有意な液体の溢流を認める場合は,経皮的腎瘻造設術が必要である。一般に,尿管ステントは約4 週間留置し,ステント抜去後に尿の排泄状態を必ず評価する。術後尿管狭窄の発生リスクを軽減するには,尿管の狭い箇所に強引に尿管鏡を挿入したり,尿管鏡処置具で粘膜損傷や穿孔を起こしたりしないように留意すべきである。術後尿管狭窄の対処法として,狭窄部位が短い場合は尿管鏡下の切開と拡張が有効であるが,狭窄部位が長い場合は尿管再建術を要する。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)