2 診断・治療 CQ09 尿管結石はいつまで自然排石が期待できるか?
CQ/目次項目
2 診断・治療 CQ09 尿管結石はいつまで自然排石が期待できるか?
1
推奨/回答
長径10 mm 未満の尿管結石の多くは,自然排石が期待できるため,保存的な経過観察(薬物治療を含む)が選択肢の一つである。結石が小さいほど自然排石率が高く,排石までの期間が短い。一般に,結石部位が遠位であるほうが,自然排石率が高い傾向がある。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
2
推奨/回答
症状発現後1 か月以内に自然排石を認めない場合には,腎機能障害や感染を回避するために,積極的治療介入を考慮すべきである。
推奨の強さ
C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。
尿管結石の多くは自然排石が可能である。侵襲的治療による合併症やQOL 低下を避けるためにも,治療によるコストを軽減するためにも,自然排石を期待することを第1 に考慮すべきである。また,この際には薬物療法を加えることも選択肢となる。
結石の大きさ
自然排石を予測する因子として,最も重要なものは結石の大きさである。最近の海外のメタアナリシスによれば,尿管結石の自然排石率は,<5 mm で68%(95%CI:46~85%),5~10 mm で47%(95%CI:36~59%)と報告された。また,850 例を用いた研究では,尿管結石の自然排石率は長径と逆相関しており,1 mm:87%,2~4 mm:76%,5~7 mm:60%,8 mm≦:39%であった。日本人においてもほぼ同様の結石自然排石率が報告されている。10 mm より大きい結石の自然排石を観察した研究は少なく,有効性や安全性は不明である。問題点として,結石の大きさの測定方法は標準化されていない。KUB による結石の長径を用いた研究が多いが,CT による評価を推奨する意見もある。
結石の存在部位
結石の存在部位については,遠位部ほど自然排石率が高いという研究が多く,システマティックレビューによれば近位:12~22%,中部:22~46%,遠位:45~71%と報告された。しかし,部位には影響されないとする意見もある。その他の自然排石予測因子として,CT 評価で結石陥頓の徴候がないことなどが報告されている。自然排石率の左右差や男女差については一定の見解がない。また,結石成分による自然排石率の違いに関しても有意な差は指摘されていない。
治療方針の決定
以上より,尿管結石の大きさや部位に基づいて,水腎症や感染などの合併症の有無および全身状態や社会的背景を考慮して,治療方針を決めることが推奨される。
長径10 mm 以下の尿管結石の約2/3 は,症状発現後4 週以内に自然排石される。尿管結石の自然排石までの平均日数は,2 mm 以下で8.2 日,2~4 mm で12.2 日,4 mm 以上で22.1 日と報告された。1 か月以上自然排石されない尿管結石については,腎機能障害や感染併発の危険を回避するために,積極的な結石除去治療の介入を考慮すべきである。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)