2 診断・治療 CQ07 急性腹症で尿路結石の診断に推奨される画像検査は何か?
CQ/目次項目
2 診断・治療 CQ07 急性腹症で尿路結石の診断に推奨される画像検査は何か?
1
推奨/回答
急性腹症で尿路結石が疑われる場合,まずはじめに超音波検査を行うことが推奨される。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
2
推奨/回答
尿路結石の確定診断には,単純CT が推奨される。
推奨の強さ
A:十分なエビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように強く推奨する。
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推奨/回答
静脈性尿路造影検査(IVU)は尿路結石の治療計画の策定に有用である。
推奨の強さ
C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。
尿路結石による疝痛発作は,激しい腹痛(側腹部痛)と腰背部痛,外性器や大腿部への放散痛が特徴的である。疝痛発作時には冷汗,顔面蒼白とともに,悪心・嘔吐や腹部膨満などの消化器症状も起こる。典型的な症状を伴わない症例もあり,診断には,適切な画像検査が行われるべきである。

超音波検査
超音波検査は,上部尿路の閉塞による水腎,水尿管の程度を診断するのに有用であり,無侵襲である。腎,上部尿管,膀胱近傍の結石を識別することが可能で,これらの部位に存在する5 mm 以上の結石では,感度,特異度とも95%以上である。しかし,全部位では,感度78%,特異度31%となり,尿管結石では同定できないことも多い。
KUB
KUB での診断率は感度44~77%,特異度80~87%と低い。しかし,結石の成分についてレントゲン透過性の鑑別が可能である。また,尿路結石の経過観察に有用である。
単純CT
単純CT(non-contrast-enhanced computer tomography:NCCT)は急性腹症における尿路結石の標準的な診断方法となりつつある。単純CT の診断率(感度:94~100%,特異度:92~100%)は静脈性尿路造影(intravenous urography:IVU)(感度:51~66%,特異度:92~100%)と比較して高く,尿路以外の腹部所見を得ることもできる。単純CT で尿路結石の診断ができない場合は,急性腹症の他の原因を探索することが必要である。単純CT は尿酸結石,キサンチン結石,シスチン結石などレントゲン陰性結石も同定可能である。また,単純CT は,ESWL の砕石効果に影響すると考えられる結石の密度,内部構造,皮膚からの距離などを測定することが可能であり,治療方針の決定にも有用である。しかし,放射線被曝量が多いこと(表1),腎機能,尿路の形態などの情報が十分得られないことが欠点である。
low-dose CT
低線量のCT(low-dose CT)を用いることで,被曝量を減少することができる。肥満者(BMI>30)を除けば,3 mm 以上の尿路結石については,low-dose CT でも通常のCT と同様の診断率が得られると報告されている。メタアナリシスによる診断率は,感度:96.6%,特異度:94.9%と高い。
IVU
IVU は上部尿路の通過障害や尿路奇形などの診断が可能で,治療計画の策定に有用である。しかし,尿管結石発作時は,疼痛の増強や尿の尿路外への溢流がみられることがあるので行わない。また,ヨード造影剤は造影剤アレルギー,重篤な甲状腺疾患,気管支喘息,多発性骨髄腫などの基礎疾患,重篤な心機能障害,腎機能障害のある患者には原則禁忌である。
診断率の比較
本邦では,2004 年に検査法による診断正診率が検討された。結石の存在診断における有効率は,KUB:72.3%,超音波検査:34.4%,IVU:88.2%,単純CT:90.7%と,単純CT が最も高かった。
妊婦,小児
妊娠中の患者では,主に超音波検査で診断を行う。magnetic resonance urography(MRU)は,放射線被曝,造影剤暴露がなく,閉塞部位を同定することができるが,報告は少ない。小児においても,超音波検査による評価を行うが,状況に応じてKUB,IVU,CT などを実施する。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)