尿路結石やESWL 後の残石は観察期間の増加に伴い,増大する傾向がある。その過程 でstone event を引き起こし,積極的治療が必要になることもある。
尿路結石の増大を表す用語として,2 つの言葉を用いた。①増大量:一定期間に増大した結石サイズや体積,②増大速度:増大量を観察開始時の結石サイズや体積で除したもの。 観察期間52か月の未治療の下腎杯結石27例の検討において,観察開始時の結石サイズは8.81mm で2 年後は9.38 mm と,0.57 mm の増大を認めた。経過観察中に5 例が自排し,stone eventを認めた3 例に対して積極的治療を行った。未治療の20 mm 以下の腎結石136 例の検討では,年間増大量と年間増大速度という2 つの言葉を用いた。年間増大量は,観察終了時と観察開始時の体積の差を観察期間で除したもの,年間増大速度は,年間増大量を観察開始時の体積で除したもので,年間増大量は0.051 cm3,年間増大速度は62%であった。ESWL または自排後の残石29 例の検討では,年間増大速度は89%であった。 母集団に対する増大した症例数の比率を増大率と定義した。ESWL 等の前治療がある場合は,母集団は残石症例数となる。13 論文から腎結石の増大率を検討した。ESWL などの前治療のある検討が10 論文で多くを占めており,残石の増大率ともいえる。それらの平均観察期間は45.0 か月(22~89 か月),平均増大率は36.7%(17~64%)で,約4 年で40%近くの結石が増大するといえる。13 論文の観察期間と増大率の相関係数はr=0.407(p=0.15)であり,観察期間の増加に伴い,増大率は増加する傾向があると考えられた。 増大した残石の臨床経過をみると,観察期間はばらつきを認めるが,増大した結石の約60%の症例に追加治療が必要であり,増大した残石は追加治療の必要性が高かった。 尿路結石が増大することによる臨床的問題点は,尿路結石が増大し,stone event を引き起こし,ESWL などの積極的治療の対象になることである。また,ESWL 後の4 mm 以下の残石は治療有効と判断されるが,これらの中にも増大したり,stone event を引き起こしたりして,追加治療が必要になるものがある。したがって,結石の増大に関する検討を行うことは尿路結石診療において重要である。 結石の増大を検討するにあたり,以下の点に留意する。増大の定義は一定のものがなく,サイズの変化が1.33~2 倍以上を増大としている点やスコア化している検討も存在した。残石の定義は,多くは4~5 mm 以上だが,stone-free 以外を残石と定義している場合もあり,統一されていない。サイズの計測方法も,最大長径の他に体積を計測する検討も散見された。 尿路結石やESWL 後の残石は観察期間の増加に伴い,増大率が増加する傾向にある。その過程でstone event を引き起こし,積極的治療が必要になることがあり,尿路結石の増大や残石の増大に留意し,適切な結石診療が必要であると考えられる。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
診療ガイドライン
医療従事者の方の意思決定のために
ガイドライン解説
病気や治療法について知りたい一般の方へ
尿路結石の増大を表す用語として,2 つの言葉を用いた。①増大量:一定期間に増大した結石サイズや体積,②増大速度:増大量を観察開始時の結石サイズや体積で除したもの。
観察期間52か月の未治療の下腎杯結石27例の検討において,観察開始時の結石サイズは8.81mm で2 年後は9.38 mm と,0.57 mm の増大を認めた。経過観察中に5 例が自排し,stone eventを認めた3 例に対して積極的治療を行った。未治療の20 mm 以下の腎結石136 例の検討では,年間増大量と年間増大速度という2 つの言葉を用いた。年間増大量は,観察終了時と観察開始時の体積の差を観察期間で除したもの,年間増大速度は,年間増大量を観察開始時の体積で除したもので,年間増大量は0.051 cm3,年間増大速度は62%であった。ESWL または自排後の残石29 例の検討では,年間増大速度は89%であった。
母集団に対する増大した症例数の比率を増大率と定義した。ESWL 等の前治療がある場合は,母集団は残石症例数となる。13 論文から腎結石の増大率を検討した。ESWL などの前治療のある検討が10 論文で多くを占めており,残石の増大率ともいえる。それらの平均観察期間は45.0 か月(22~89 か月),平均増大率は36.7%(17~64%)で,約4 年で40%近くの結石が増大するといえる。13 論文の観察期間と増大率の相関係数はr=0.407(p=0.15)であり,観察期間の増加に伴い,増大率は増加する傾向があると考えられた。
増大した残石の臨床経過をみると,観察期間はばらつきを認めるが,増大した結石の約60%の症例に追加治療が必要であり,増大した残石は追加治療の必要性が高かった。
尿路結石が増大することによる臨床的問題点は,尿路結石が増大し,stone event を引き起こし,ESWL などの積極的治療の対象になることである。また,ESWL 後の4 mm 以下の残石は治療有効と判断されるが,これらの中にも増大したり,stone event を引き起こしたりして,追加治療が必要になるものがある。したがって,結石の増大に関する検討を行うことは尿路結石診療において重要である。
結石の増大を検討するにあたり,以下の点に留意する。増大の定義は一定のものがなく,サイズの変化が1.33~2 倍以上を増大としている点やスコア化している検討も存在した。残石の定義は,多くは4~5 mm 以上だが,stone-free 以外を残石と定義している場合もあり,統一されていない。サイズの計測方法も,最大長径の他に体積を計測する検討も散見された。
尿路結石やESWL 後の残石は観察期間の増加に伴い,増大率が増加する傾向にある。その過程でstone event を引き起こし,積極的治療が必要になることがあり,尿路結石の増大や残石の増大に留意し,適切な結石診療が必要であると考えられる。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)