四季のある地域では,季節の変動と尿路結石の疼痛発作には関係がある。また,外気温の上昇と尿路結石の発生の関係が示唆される。
尿路結石の疼痛発作と季節性に関しては,関係があるとする報告,ないとする報告さまざまであるが,ないとする報告は比較的古い報告が多く,最近の報告では関係ありとするものが多い。旧版のガイドラインでもあげられた論文においても,地域と気候により発作の起こる状況が異なること,四季がある地域では夏期に約2 倍多く結石発作が起こるが,排石は冬期に多いことや,高気圧で晴天であると結石発作は少ないこと,気温が20℃以上であると結石発作が多く,急に低気圧となった場合にも発作が多いことなどが報告されている。今回新たに検索した論文の内容を以下に示す。 2004 年に報告された,アメリカで救急外来を結石疼痛発作で受診した患者の数,年齢,性差と気温の関係を調べた論文によれば,外気温の上昇は結石の疝痛発作と関係し,高齢の男性では特に注意が必要であるとされている。また,台湾全域の救急の統計を解析した結果でも,結石の疝痛発作は,性別,年齢によらず,7~9 月に多く,10 月には明らかに減少することが示されており,やはり外気温と日照時間が有意な因子と報告されている。最近のイランからの報告によれば,結石の発生は秋に多い。 外気温が結石の発生に関係する理由として,発汗による細胞外液の減少に伴い抗利尿ホルモンの分泌がなされ,尿が濃縮されること,尿量が減少することがあげられる。ボストンのグループからは,24 時間蓄尿検査を行った際の外気温,湿度と蓄尿検査の結果を解析すると,尿中カルシウム濃度が外気温に依存し上昇すること,シュウ酸カルシウム,リン酸カルシウムの過飽和が起きること,尿中ナトリウム排泄が減ることが報告されている。また,湿度が低いと肌が乾燥し,そこからの水分損失が多く尿が濃縮されるため結石になりやすいと一般にいわれているが,最近の論文では,湿度と結石の頻度に関しては関係がないという報告がみられている。外気温の上昇が結石の疼痛発作に関与すると仮定すれば,地球温暖化は結石の有病率に関与する可能性がある。アメリカにおける結石の有病率と地球温暖化の関係を推論した論文によると,2050 年までに結石患者は約30%増加するとのことである。 一方,結石の発生と季節の変動には関係がないとする論文は,比較的寒い北欧や,1 日のうちに四季があるといわれるほど,1 日の間で寒暖の差や天気の変動はあるものの,年間の平均気温は比較的安定している西オーストラリアなどからの報告であり,夏の長さの違いが影響している可能性が高い。またアメリカで,結石に関するインターネットのアクセス数は,結石による救急入院と関係があること,アクセスは夏に多く,また外気温と関係することを示したユニークな研究がなされ,今後疫学研究におけるインターネットの有用性が示唆される。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
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尿路結石の疼痛発作と季節性に関しては,関係があるとする報告,ないとする報告さまざまであるが,ないとする報告は比較的古い報告が多く,最近の報告では関係ありとするものが多い。旧版のガイドラインでもあげられた論文においても,地域と気候により発作の起こる状況が異なること,四季がある地域では夏期に約2 倍多く結石発作が起こるが,排石は冬期に多いことや,高気圧で晴天であると結石発作は少ないこと,気温が20℃以上であると結石発作が多く,急に低気圧となった場合にも発作が多いことなどが報告されている。今回新たに検索した論文の内容を以下に示す。
2004 年に報告された,アメリカで救急外来を結石疼痛発作で受診した患者の数,年齢,性差と気温の関係を調べた論文によれば,外気温の上昇は結石の疝痛発作と関係し,高齢の男性では特に注意が必要であるとされている。また,台湾全域の救急の統計を解析した結果でも,結石の疝痛発作は,性別,年齢によらず,7~9 月に多く,10 月には明らかに減少することが示されており,やはり外気温と日照時間が有意な因子と報告されている。最近のイランからの報告によれば,結石の発生は秋に多い。
外気温が結石の発生に関係する理由として,発汗による細胞外液の減少に伴い抗利尿ホルモンの分泌がなされ,尿が濃縮されること,尿量が減少することがあげられる。ボストンのグループからは,24 時間蓄尿検査を行った際の外気温,湿度と蓄尿検査の結果を解析すると,尿中カルシウム濃度が外気温に依存し上昇すること,シュウ酸カルシウム,リン酸カルシウムの過飽和が起きること,尿中ナトリウム排泄が減ることが報告されている。また,湿度が低いと肌が乾燥し,そこからの水分損失が多く尿が濃縮されるため結石になりやすいと一般にいわれているが,最近の論文では,湿度と結石の頻度に関しては関係がないという報告がみられている。外気温の上昇が結石の疼痛発作に関与すると仮定すれば,地球温暖化は結石の有病率に関与する可能性がある。アメリカにおける結石の有病率と地球温暖化の関係を推論した論文によると,2050 年までに結石患者は約30%増加するとのことである。
一方,結石の発生と季節の変動には関係がないとする論文は,比較的寒い北欧や,1 日のうちに四季があるといわれるほど,1 日の間で寒暖の差や天気の変動はあるものの,年間の平均気温は比較的安定している西オーストラリアなどからの報告であり,夏の長さの違いが影響している可能性が高い。またアメリカで,結石に関するインターネットのアクセス数は,結石による救急入院と関係があること,アクセスは夏に多く,また外気温と関係することを示したユニークな研究がなされ,今後疫学研究におけるインターネットの有用性が示唆される。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)