1 疫学 CQ02 尿路結石症に遺伝的素因はあるか?

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1 疫学 CQ02 尿路結石症に遺伝的素因はあるか?
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特発性のカルシウム結石においても遺伝性の関与はあると考えられるが,責任遺伝子は同定できていない。シスチン尿症や,キサンチン尿症,原発性高シュウ酸尿症,遠位尿細管性アシドーシスなど,遺伝的素因がはっきりとしているものもある。

シスチン尿症や,キサンチン尿症,原発性高シュウ酸尿症,遠位尿細管性アシドーシスなど,遺伝的素因がはっきりとしているものもあるが,尿路結石のほとんどを占めるカルシウム結石において,その責任遺伝子ははっきりと同定されていない。遺伝の関与する結石は再発しやすいと予測されるが,結石の再発因子として,特発性高カルシウム尿症,軽度高カルシウム尿症,高尿酸尿症,高カルシウム尿症+高尿酸尿症などがあげられる。そこでこれらに関し,遺伝の関与につき検索した。
遺伝の関与があるか調べる方法として,一卵性双生児と二卵性双生児において,兄弟姉妹間における結石のできやすさを比べる方法がある。すなわち,環境因子はほぼ一定にて,一卵性でも二卵性でも結石の発生率に差がなければ環境因子の影響が強く,一卵性のほうが兄弟姉妹ともに結石になりやすければ,遺伝的素因があると推察する方法である。ベトナム戦争に従軍した双生児の兵士(一卵性:1,928 組,二卵性:1,463 組)を調べた研究によれば,兄弟姉妹ともに結石を有したのは,一卵性において39 組,二卵性において17 組であった。一方,片方に結石を認めたものは,それぞれ163 組と162 組で,兄弟姉妹ともに結石を認めた割合は,一卵性が32.4%,二卵性が17.3%であった。この結果より推察すると,遺伝的素因の関与は56%で,結石のなりやすさに遺伝の関与はありそうである。
一方,数は少ないが,12 組の一卵性双生児における24 時間畜尿による尿生化学検査の比較では,クエン酸排泄量,シュウ酸排泄量,カルシウム排泄量,尿酸排泄量において遺伝の関与が示唆された。女性の双生児1,747 組での比較でも,尿中カルシウム排泄量,ナトリウム排泄量において,遺伝的素因の影響が示唆されている。
結石や高血圧を有する患者とその配偶者を対象とした研究でも,カルシウム代謝における遺伝の関与が示唆されている。結石の家族歴を有するフランス系カナダ人の家系を調査し,分離分析にて24 時間尿中カルシウム排泄量と,遺伝の素因の有無を調べた結果によれば,尿中カルシウム排泄に関する主たる遺伝子の存在が示唆されている。これらの結果より,尿中カルシウム排泄に関する遺伝の関与が疫学的に示唆されることがわかる。現在,尿中カルシウム排泄量に関する遺伝子として,soluble adenylate cyclase, calcium sensing receptor, vitamin Dreceptor, chloride channel-5, sodium-phosphate cotransporter-2 and claudin-16. などの関与が推定されるが,まだ明らかではない。
酸性尿は尿酸結石の危険因子であるが,痛風患者のほとんどが酸性尿を呈するにもかかわらず,尿酸結石は約20%に合併するにすぎない。痛風においても尿酸の代謝異常の関与が少しずつ解明されているところで,尿酸結石に関しては,遺伝の関与ははっきりとしていない。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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