総論 4-3 肺拡張,気道クリアランス 1.徒手による咳介助と機械による咳介助(MI-E)(神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーション)

CQ/目次項目
総論 4-3 肺拡張,気道クリアランス 1.徒手による咳介助と機械による咳介助(MI-E)(神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーション)
1
推奨/回答

1.徒手による咳介助は神経筋疾患・脊髄損傷の排痰に有効である。

推奨の強さ

A:行うよう強く勧められる(少なくとも 1 つのレベルⅠの結果)

2
推奨/回答

2.機械による咳介助は神経筋疾患・脊髄損傷の排痰に有効である。

推奨の強さ

A:行うよう強く勧められる(少なくとも 1 つのレベルⅠの結果)

方法



◆徒手による咳介助(manually assisted coughing)
・患者の胸郭下部に介助者の両手を置き,咳に合わせて圧迫し,呼気流速を高めて排痰をしやすくする手技〔⇒図 11〕である。吸気が十分できない患者ではマスクによる吸気補助を併用すると CPF の増強効果がある。
・吸気補助は救急蘇生バッグを使って空気を送り声門を閉じてスタックさせ,患者にこれ以上保持できない量まで吸気をさせる。この換気方法のために一方向弁とマウスピースがバッグに取り付けられることもある。
・咳をする前の深吸気は GPB を用いると,器具を使わなくても可能となる。

◆機械による咳介助(mechanical insufflation-exsufflation;MI-E)
MI-E に用いる装置は排痰補助装置と呼ばれ,以前から使用されてきた装置にカフアシスト〔製造元(国):レスピロニクス社(米国)/ 販売元:フィリップス・レスピロニクス合同会社〕がある。気道内圧を最大- 60cmH2O から+ 60cmH2O に一瞬に切り替えられ,最高約 600L / 分の呼気流量を作ることができる。マスクを介しても,直接気管切開孔に接続しても使用できる(図 13)。本法は 2010 年の診療報酬改定において在宅使用下での保険適応が認可された。
現在は,新たに 4 機種の装置がわが国で認可になり,バッテリー内蔵のものや,トリガーで呼吸に合せた動作をするもの,CPF や SpO2 をモニタできるもの,気道に振動を与え排痰効果を高めるものなど,多機能なものが選べるようになった。ほとんどの機種がマニュアルモードと自動モードを選択できる。図 14 に新しい排痰補助装置とその特徴を示す。


●咳介助の手順
・患者の気道に陽圧を加え,その後陰圧に切り換えることにより,肺から高い呼気流を生じさせて自然な咳を補助し,また咳を代行することで,患者の気道に溜まった分泌物を排出させる。
・まずマスクを患者の口に当て,吸気相として 1~3 秒間陽圧をかけながら吸気努力をしてもらう。
・陽圧で胸部が上がったのを確認し,呼気相(陰圧)に切り替えると同時にゴホンと咳努力をしてもらうとよい。咳努力のタイミングが合わない場合,声帯を開き,装置の陰圧にまかせても効果がある。
・分泌物が喀出されたら,すぐ拭き取るか吸引する。通常,連続した 4~5 回の咳を 1 サイクルとする。その後 20~30 秒の休息を取り,過換気を回避する。
・このサイクルを繰り返し最大 4~6 回行う。
・嚢胞性肺気腫の病歴がある患者,気胸または気縦隔症に罹りやすい患者,最近何らかの気圧性外傷に罹った患者には,使用の前に慎重に考慮する必要がある。気管切開患者にも使用できる。
・MI-E の,呼気時にタイミングを合わせて胸部や腹部の圧迫を行うことを,徒手介助併用の機械による咳介助(mechanically assisted coughing;MAC)という。胸部の拡張後に,呼気時の胸腹部の圧迫介助を加え,気道の虚脱を軽減する目的もある。



解説

徒手による咳介助に組み合わせる吸気補助は手動蘇生バッグを使って患者に MIC レベルまで吸気をさせる。これにより,胸郭や肺の柔軟性・コンプライアンスの維持に努める。
徒手による咳介助は英語表記では manually assisted coughing となるが,徒手介助併用の機械による咳介助を mechanically assisted coughing と表記するため,略語として MAC を使用するときは注意が必要である。MAC は徒手介助併用の機械による咳介助(mechanically assisted coughing;MAC)のほうを指し,MI-E の呼気時にタイミングを合わせて胸部や腹部の圧迫を行うことを意味しており,その目的は急速な胸部の拡張とそれに続く急速で完全な肺の空気の排出である。
徒手による咳介助を含んだ研究のなかで以下の 4 つは,MI-E との比較を含み,その他の咳介助アプリケーションを無作為割付けしている。自力咳嗽,徒手による咳介助に加えて,MIC からの徒手による咳介助などが評価されている。MIC は,これ以上保持できない量まで患者に最大の吸気をさせ,それから声門を閉じて,救急蘇生バッグから複数回の吸入気量をスタックさせる。MI-E のほか,間欠的陽圧呼吸法(intermittent positive pressure breathing;IPPB)も使われる。CPF は,各研究の主要評価尺度であった。これらの結果は,徒手による咳介助が CPF を増加させることにおいて効果的であり,徒手による咳介助の前に MIC まで吸気量を増やすことによってさらに排痰が強化されることを一貫して証明している。
徒手による咳介助の長所は,器材が必要なくローコストという点である。不利な点は,介護者が正しい手技を学ぶことが難しいことと,不適切に適用される場合の内臓損傷の危険性である。徒手による咳介助は,胸壁または脊椎の変形患者には効果的でない場合がある。MIC と VC の差がより大きいほど,CPF の増大幅が大きくなるため,VC が低ければ徒手による咳介助効果も大きく,逆に正常者では効果が少なくなる。脊髄損傷に対する systematic review では,MIC を併用した徒手による咳介助の研究は,高いレベルのエビデンスを示している。
高度の気管支分泌物を有する高位頸髄損傷に対して MI-E を伴う治療を行い,徒手による咳介助のみの群と比較して,介入群は努力性肺活量(forced vital capacity;FVC),1 秒量(forced expiratory volume in one second;FEV1),ピークフロー(PEF)の有意の増加を示したランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)が報告されている。しかし,この論文はサンプルサイズが明らかにされておらず,信頼性は制限される。Bach は,多量の気道分泌がある非侵襲的補助換気の長期使用者 21 例に,自力吸気の後,MIC 手技もしくは GPB 吸気後,MIC 手技後の腹部圧縮を伴う徒手による咳介助,MI-E 使用の 4 パターンでの CPF を比較し,この順に有意に大きくなることを証明した(p < 0.001)。上気道が重篤に動的につぶれてしまう可能性のある bulbar dysfunction を伴う ALS 患者では,MI-E の強制呼気サイクルにおいて,臨床的に有効な咳介助を行えない。また逆に臨床的に安定している軽度の呼吸機能障害患者(MIC 時の CPF > 4L / 秒 )も,急性呼吸器疾患の罹患時を除いて MI-E からの利益を得られない。神経筋疾患における CPF の強化に対する systematic review では MI-E が他の手技と比較して最も大きな増加をもたらすと結論付けられている。

(本文,図表の引用等については,神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドラインの本文をご参照ください。)

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