ESWL後の再発率は,開放手術やPNLなどの他の治療法と同様に時間経過とともに増加し,他の治療法と比較して同等であると考えられる。
尿路結石は,5 年で半数近くが,10 年では半数以上の症例が再発する。尿路結石症の積極的治療は,開放手術,endourology,ESWL と低侵襲化され,治療成績も比較的良好である。しかし,安全で簡便な低侵襲治療であるESWL が,多くの尿路結石症の標準的治療となった昨今でも,結石再発は依然として存在し,むしろ増加しているのではないかといわれている。そこで今回,ESWL 後と他の積極的治療後の再発率を比較した。 ESWL 400 例と開放手術43 例の比較では,観察期間がESWL 群46 か月,開放手術群40 か月で,再発率がESWL 群13.9%,開放手術群31.8%とESWL の方が再発率が低かった(p<0.05)。しかし,結石サイズがESWL 群14 mm に対して開放手術群29 mm とESWL の結石が有意に小さい(p<0.05)ことなどが影響したと考えられる。 観察期間2 年でESWL 298 例とPNL 62 例の比較では,結石サイズがESWL 群11 mm,PNL群12 mm で,2 年再発率はESWL 群34.8%,PNL 群22.6%と有意差を認めなかった(p=0.19)。 19 年の長期追跡調査でESWL 288 例とPNL 87 例の比較では,結石サイズがESWL 群11mm,PNL 群13 mm で,各々の再発率はESWL 群53.5%,PNL 群36.8%でESWL の方が再発率が有意に高かった(p=0.03)。以上3 論文の他に,各々の治療の再発率を述べている20 論文(ESWL:10,PNL:4,開放手術:6)を加えた23 論文のデータからESWL 後と他の積極的治療後の再発率を比較検討した。 その結果,ESWL は1990~2008 年の検討で,平均観察期間43.2 か月(12.6~230 か月)で,平均再発率は24.7%(7.8~53.5%)であった。開放手術は1963~1999 年の検討で,平均観察期間89.8 か月(20~222 か月)と比較的長い検討で,平均再発率は34.9%(16.6~75%)であった。PNL は1985~2008 年の検討で,平均観察期間65.0 か月(21.6~230 か月)で,平均再発率19.0%(2.5~36.8%)であった。以上から,時間経過とともに再発率は増加するが,ESWL 後の再発率は,開放手術やPNL と比較して同等であると考えられた。 ESWL 後の再発については上記のような結論としたが,結石の再発を検討するにあたり,以下のような留意点がある。再発の危険因子として,性別や年齢,結石部位やサイズ,高カルシウム尿症など多くの因子が指摘されている。したがって,治療別の真の再発率を比較検討するためには,治療法だけでなく,これらの危険因子についても同一の集団で比較検討する必要があると考えられた。今後は,標準的なシュウ酸カルシウム結石に限定した均質な無作為化比較試験(randomized controlled trial:RCT)を行い,治療法別の再発率についての研究が待たれる。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
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尿路結石は,5 年で半数近くが,10 年では半数以上の症例が再発する。尿路結石症の積極的治療は,開放手術,endourology,ESWL と低侵襲化され,治療成績も比較的良好である。しかし,安全で簡便な低侵襲治療であるESWL が,多くの尿路結石症の標準的治療となった昨今でも,結石再発は依然として存在し,むしろ増加しているのではないかといわれている。そこで今回,ESWL 後と他の積極的治療後の再発率を比較した。
ESWL 400 例と開放手術43 例の比較では,観察期間がESWL 群46 か月,開放手術群40 か月で,再発率がESWL 群13.9%,開放手術群31.8%とESWL の方が再発率が低かった(p<0.05)。しかし,結石サイズがESWL 群14 mm に対して開放手術群29 mm とESWL の結石が有意に小さい(p<0.05)ことなどが影響したと考えられる。
観察期間2 年でESWL 298 例とPNL 62 例の比較では,結石サイズがESWL 群11 mm,PNL群12 mm で,2 年再発率はESWL 群34.8%,PNL 群22.6%と有意差を認めなかった(p=0.19)。
19 年の長期追跡調査でESWL 288 例とPNL 87 例の比較では,結石サイズがESWL 群11mm,PNL 群13 mm で,各々の再発率はESWL 群53.5%,PNL 群36.8%でESWL の方が再発率が有意に高かった(p=0.03)。以上3 論文の他に,各々の治療の再発率を述べている20 論文(ESWL:10,PNL:4,開放手術:6)を加えた23 論文のデータからESWL 後と他の積極的治療後の再発率を比較検討した。
その結果,ESWL は1990~2008 年の検討で,平均観察期間43.2 か月(12.6~230 か月)で,平均再発率は24.7%(7.8~53.5%)であった。開放手術は1963~1999 年の検討で,平均観察期間89.8 か月(20~222 か月)と比較的長い検討で,平均再発率は34.9%(16.6~75%)であった。PNL は1985~2008 年の検討で,平均観察期間65.0 か月(21.6~230 か月)で,平均再発率19.0%(2.5~36.8%)であった。以上から,時間経過とともに再発率は増加するが,ESWL 後の再発率は,開放手術やPNL と比較して同等であると考えられた。
ESWL 後の再発については上記のような結論としたが,結石の再発を検討するにあたり,以下のような留意点がある。再発の危険因子として,性別や年齢,結石部位やサイズ,高カルシウム尿症など多くの因子が指摘されている。したがって,治療別の真の再発率を比較検討するためには,治療法だけでなく,これらの危険因子についても同一の集団で比較検討する必要があると考えられた。今後は,標準的なシュウ酸カルシウム結石に限定した均質な無作為化比較試験(randomized controlled trial:RCT)を行い,治療法別の再発率についての研究が待たれる。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)