CQ:顎関節症患者において、咬合調整は有用か?

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CQ:顎関節症患者において、咬合調整は有用か?
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推奨/回答

顎関節症患者において、症状改善を目的とした咬合調整は行わないことを推奨する。

推奨の強さ

1:強い推奨

エビデンスの確実性

エビデンスの確信性:非常に低

この提案は、2012 年 2 月 5 日に医療消費者 5 名を含む 18 名のガイドラインパネル会議での決定後にガイドライン委員会委員の議論により採択された。
今回、顎関節症の治療として咬合調整を用いた論文は2編のみであったが、頭痛などの症状予防に関する論文は複数みられた。今回採用された研究報告に示されていた咬合調整の方法は、熟練した専門医でないとおこないえないものであった。
咬合調整の効果と害のバランスは、平均するとどちらも低く不確実であり、咬合調整が不可逆的な行為であること、および重篤な症状がときに出現することから、行わないことを強く推奨する意見が多くあった。投票の結果では、エビデンスの質も非常に低く、強い否定的推奨となった。
パネル会議の際に医療消費者から、初診時に十分な診断とインフォームドコンセントが行なわれないままに、安易に咬合調整が行なわれたことで、重篤な症状の発現を経験したという談話があり、他の医療消費者からも天然歯の咬合調整については特に禁止してほしいという意見が出された。さらに咬合調整に対しては、今後、診断ならびに調整方法に関する研究、教育を推進してもらいたいという希望も出された。
本診療ガイドラインの目的の範囲に関して以下のような意見交換が行われた。
・独自の理論に基づく咬合調整を行う場合には、その根拠と害を十分に説明し、文書による同意を得たのち、医療提供者の自己責任の元に行うべきであるという意見が医療消費者からあった。
・初期治療後において、さらに咬合調整が必要となった場合は、その根拠と害を十分に説明し、患者の同意の元に行うべきである。
・顎関節症以外(歯周病、咬合性外傷、不良義歯など)の治療目的による咬合調整は、今回の診療ガイドラインの目的とするところではない。
・明らかに歯科治療直後に発現した顎関節症の症状については、医学的にみてその治療の結果として生じた咬合関係の異常が症状発現の原因と考えられた場合、当該治療歯の咬合調整を妨げるものではない。
また、対象を「顎関節症患者に対する初期治療であること・精神・心理的要因に起因していないこと・期待する結果は、顎関節症の改善であること」としているが、逆にそれ以外の患者に対して咬合調整を行ってもよいとするものでない。


(本文、図表の引用等については、顎関節症患者のための初期治療診療ガイドライン 3 の本文をご参照ください。)

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