RQ5 産痛を緩和するには?

CQ/目次項目
RQ5 産痛を緩和するには?
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推奨/回答

産婦は分娩中の産痛が緩和されるようにケアを受けることができる。
医療者は出産施設において産痛緩和法にどのようなものがあり(例:自由姿勢・歩行、温罨法、入浴、マッサージ、指圧、鍼、アロマセラピー、硬膜外麻酔等)、その施設でどれを提供できるかについて、妊娠中からそのメリットとデメリットの情報を提供し、状況が許す限り、産婦が選択できるようにする。
医療者は、様々な産痛緩和法を熟知して、それを実施する場合は安全面に配慮する。さらに、必要に応じて家族に産痛緩和法を教育し、家族も主体的に分娩に臨めるように援助する。
硬膜外麻酔は他の産痛緩和法よりも産痛緩和効果は高い。しかし、分娩第 2 期遷延、オキシトシン使用頻度の増加、吸引鉗子分娩の増加、胎児機能不全による帝王切開分娩のリスク等を高める可能性がある。したがって、硬膜外麻酔のメリットとデメリットについて、産婦が理解したうえで、産婦が選択できるようにする。

推奨の強さ

C:科学的根拠はないが、行うよう勧められる

背景
分娩時に産婦が感じる痛みはがん性の疼痛よりも強いといわれており、分娩の進行に伴い痛みは増強する。分娩に伴う痛みは産婦にとって恐怖ともなり、分娩進行や胎児に悪影響を与え、産後に PTSD になり得る。安全で、快適なお産のために産痛の緩和を図ることは重要である。

議論・推奨への理由
臨床では経験的に行われている産痛緩和のケアが様々あるが、その効果を検証して報告している文献は少なかった。そのため文献からエビデンスがあったものに限定して記す。
分娩第1期に自由な姿勢で、行動の制限なく過ごすこと、分娩第 1 期後半の入浴、マッサージや指圧、鍼は産痛の緩和に役立つと考えられる。しかし、いずれの産痛緩和法が他より優れているという根拠となるものはなかった。また、臨床で経験的に行われているケアのほとんどが、それを行うことによるデメリットも明らかにされていなかった。したがって、産婦のニーズ、分娩進行に応じて産痛緩和法を選択すること、それを実施する場合は安全面に配慮して観察を行う必要がある。
痛みの緩和法について、医療者やパートナーなど他者が行うタッチングやマッサージは、産婦自身が行うマッサージに比べ痛みの軽減が顕著であるという報告があり、実際にマッサージや指圧、鍼などケア提供者が産婦の身体に触れる方法は主観的評価が高かった。分娩中、他者に何かをしてもらうこと、人に触れてもらうということは、産婦が心地よさを感じ、産痛を緩和するためにも必要であると思われる。ただし、産婦によっては触れられることを拒否することがあるため、産婦の個別性を尊重した緩和法を提供するべきである。そのためには、医療従事者は様々な産痛緩和法を熟知しているとよい。また、産痛緩和法を実際行うことも大切であるが、臨床における経験から常に人がいること、話をしていること、さらに触れることや話をすることにより、産痛緩和法の効果がさらに高くなると考えられる。
鍼は産痛緩和に効果があるが、鍼を人体に刺すことは、鍼灸師の国家資格が必要であるため、どの施設でも、誰にでもできるわけではないが、今後は鍼灸師と協同した分娩を模索することができると考える。産痛緩和に使用する鍼は、注射針と同じ扱いで消毒ではなくディスポを使用することが必要である。
無痛分娩は実施している施設が限られており、女性が無痛分娩を希望する場合、それを実施できる施設を選択すると思われるが、鎮痛の長所だけではなく、短所についても説明される必要がある。
代替療法・補完療法によって産痛緩和を行うことは、医療介入による鎮痛を減少させ、産婦の満足度を高めると考えられる。

(本文、図表の引用等については、母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査-科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-の本文をご参照ください。)

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