RQ4 分娩中、終始自由な体位でいるか?
CQ/目次項目
RQ4 分娩中、終始自由な体位でいるか?
1
推奨/回答
分娩第1期において、胎児の安全性が確保できるのであれば、産婦ができるだけ拘束のない自由な姿勢で過ごせるように配慮する。
推奨の強さ
A:科学的根拠があり、行うよう強く勧められる
2
推奨/回答
また、CTG を装着する場合は、胎児の健康状態を精度高く捉えられることを前提として、一定の体位の保持がなぜ必要であるかを説明する。
推奨の強さ
A:科学的根拠があり、行うよう強く勧められる
3
推奨/回答
さらに産婦が同一体位を保持しなければならない場合に、苦痛を取り除く工夫(クッションなどの補助具の使用)を行う。
推奨の強さ
B:科学的根拠があり、行うよう勧められる
4
推奨/回答
座位分娩やフリースタイル分娩は、快適性からみると、分娩第2期では産婦の満足度が高い。しかし、第 3 期は出血量増加のリスクがあるため水平位(仰臥位、側臥位)にする。
推奨の強さ
B:科学的根拠があり、行うよう勧められる
背景
分娩第1期では、分娩までの時間がかかることや産痛緩和を目的に、自由な体位で過ごしていることが多い。しかし、継続的 CTG や点滴を実施している場合、産婦の体位が制限されることがある。同一体位の継続は産婦にとって身体的、精神的苦痛が大きいと考えられる。また分娩第2期において、分娩台での仰臥位分娩は医学的管理のしやすい体位のためわが国では一般的に行われている。最近では、産婦の主体性や自然志向を尊重し、座位分娩やフリースタイル分娩が行われるようになった。
議論・推奨への理由
分娩第1期、第 2 期に産婦が自由な姿勢で過ごすことができるということは、連続 CTG をしていない場合が多く、間歇的 CTG やドップラーによる児心音の聴取で胎児の安全性が確認できることが前提となる(連続 CTG は RQ11 参照)。胎児の安全を確保できること、産婦の苦痛を取り除けることの双方向から産婦の自由姿勢を考える必要がある。CTG 装着中は、子宮収縮曲線の記録も大切であるので、自由な体位を取りながらも正しく装着されていることを確認する必要がある。
【分娩第 1 期】
分娩第 1 期に自由な姿勢と仰臥位で過ごすことを比較した結果、分娩結果、分娩様式に明らかな影響はなかった。つまり自由な姿勢で過ごしても、仰臥位で過ごしてもどちらでもよいということになり、何の障害もないのであればベッド上に横たわったまま産婦は過ごす必要がない。第 1 期に同じ姿勢でいること、あるいは仰臥位以外でも決められた体位を交互にすることも産婦にとって苦痛が大きく、反対に自由な姿勢でいること、自由に自分のしたいことができることが産婦の快適性や満足度の向上につながる。さらに、産婦が自由な姿勢をとれることは、看護者や家族がケアを実施しやすい。また、痛みが増していくときに楽な姿勢をとれることは産婦にとっても楽であり、それは胎児にとっても楽なことである。自由な姿勢をとることにより、産婦の痛みが軽減される(RQ5参照)ので、痛みを軽減できるように産婦が自由な姿勢をとれるように認めることが大切である。
【分娩第 2 期・3 期】
産婦の主体性や自然回帰施行から座位分娩、フリースタイル分娩が実施されることが多くなっている。快適性においては座位分娩、フリースタイル分娩の方が仰臥位分娩より優れていると考えられるが、安全性において仰臥位分娩より優れているという明らかな根拠はなかった。産婦の快適性を重視して座位分娩、フリースタイル分娩を実施する場合、分娩第 3 期の出血量の増加が予測されるため、貧血のある産婦には注意が必要である。したがって、第 3 期は出血量の増加などの出産のリスクがあるため水平位(仰臥位、側臥位)にする。
(本文、図表の引用等については、母親が望む安全で満足な妊娠出産に関する全国調査-科学的根拠に基づく快適で安全な妊娠出産のためのガイドラインの改訂-の本文をご参照ください。)