CQ-II-5)合併する硬化性胆管炎,IgG4 関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎,胆道癌との鑑別点は?(自己免疫性膵炎)

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CQ-II-5)合併する硬化性胆管炎,IgG4 関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎,胆道癌との鑑別点は?(自己免疫性膵炎)
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推奨/回答

合併する硬化性胆管炎,IgG4 関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎,胆道癌との鑑別には臨床像,胆管造影像,超音波像などの画像診断および病理組織像により総合的に診断する必要がある.

推奨の強さ

A:診療行為として,行うよう強く推奨できる.

自己免疫性膵炎に合併する硬化性胆管炎,IgG4 関連硬化性胆管炎は膵内胆管の狭窄を特徴とするが,肝門部から肝外胆管に限局性の狭窄,肝内に多発性の狭窄をきたすことがある(図 24).下部胆管の狭窄は膵癌または下部胆管癌との鑑別を要する.肝内胆管に狭窄が多発する症例は原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis,以下 PSC)との鑑別を要し,肝門部胆管に狭窄をきたす症例は胆管癌との鑑別を要する.



IgG4 関連硬化性胆管炎と PSC との鑑別において,IgG4 関連硬化性胆管炎は高齢の男性に閉塞性黄疸で発症することが多いが,PSC は若年から中年に発症して炎症性腸疾患を高率に合併し,臨床像が異なる点は重要である.両者の胆管像を比較検討すると,IgG4 関連硬化性胆管炎では下部胆管の狭窄と肝門部から肝内胆管にかけて比較的長い狭窄とその末梢側胆管の単純拡張が特徴であるが,PSC のみに認められることが多い所見として帯状狭窄(band―like stricture,1~2mm の短い帯状狭窄),数珠状所見(beaded appearance,短い狭窄と拡張を交互に繰り返す所見),剪定状所見(pruned tree appearance,剪定したように肝内胆管の分枝が減少している所見),憩室様所見(diverticulum―like outpouching)がある(図 25).IgG4 関連硬化性胆管炎では腹部超音波で肝内外の胆管壁肥厚が高率に描出される.切除標本では,IgG4 関連硬化性胆管炎の肝外胆管壁は肥厚してリンパ球,形質細胞の著しい浸潤と線維化を認める.また IgG4 陽性形質細胞を多数認め,閉塞性静脈炎がみられる.IgG4 関連硬化性胆管炎は胆管壁全層に炎症を認めるが,PSC においては胆管内腔側で強い炎症があり,外膜側では炎症の程度は軽い.肝生検組織では,IgG4 関連硬化性胆管炎の肝内胆管には IgG4 陽性の形質細胞を多数認めるが,PSC においては少数しか認めない.


一方,膵病変が明らかでなく,IgG4 関連硬化性胆管炎と同様の硬化性胆管炎のみを認める症例が存在する.特に膵腫大も主膵管の狭細像も認めない症例は診断に難渋する.また,膵腫大はなくても主膵管に狭細像を認める症例が存在するため,膵管造影が診断に有用な場合がある.
胆管像において限局性の狭窄を認める場合,IgG4 関連硬化性胆管炎と胆道癌との鑑別が必要である.胆管像のみから両者の鑑別は容易ではない.超音波内視鏡(EUS),管腔内超音波(IDUS),細胞診,組織診などにより総合的に慎重に胆道癌を鑑別する必要がある.IgG4 関連硬化性胆管炎は経乳頭的な胆管生検により IgG4 陽性形質細胞の浸潤が認められ診断に有用であるという報告がみられる一方,診断的有用性が低いという報告もある.IgG4 関連硬化性胆管炎の IDUS 所見の特徴は内側低エコー層の比較的均一な肥厚と,管腔側と外側高エコー層がともに smooth に保たれていることである.また EUS や IDUS を施行すると IgG4 関連硬化性胆管炎では胆管像で狭窄を認めない部位の胆管壁も広範囲に肥厚しているのが重要な鑑別点である(IDUS による胆管癌との鑑別点は次項に詳細に記載されているので参照のこと).さらに IgG4 関連硬化性胆管炎においても胆管壁から外側に向かって腫瘤状に炎症性偽腫瘍を形成することがあり,この所見により胆管癌と誤診される可能性があるので注意を要する.
IgG4 関連硬化性胆管炎においては高率に胆嚢病変を合併し,胆嚢壁の肥厚所見に注目することが診断に有用である.IgG4 関連硬化性胆管炎の診断については「IgG4 関連硬化性胆管炎臨床診断基準 2012」を参照する.

(本文,図表の引用等については,自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013の本文をご参照ください.)

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