日本の診療ガイドラインとMinds
公益財団法人 日本医療機能評価機構
畠山洋輔,佐藤康仁,吉田雅博,奥村晃子,田村恭子,矢口明子,篠原義人,山口直人


出典
畠山洋輔,佐藤康仁,吉田雅博,奥村晃子,田村恭子,矢口明子,篠原義人,山口直人.日本の診療ガイドラインとMinds.五十嵐隆監修.ガイドラインと最新文献による小児科学レビュー 2016‐’ 17総合医学社.2016.pp.3〜5.


診療ガイドラインの定義と意義
「診療ガイドライン」は『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』で次のように定義される.

診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書1)

この定義には診療ガイドラインの意義と作成方法の重要ポイントが含まれている.

「診療上の重要度の高い医療行為」
診療全体の中で臨床上重要度の高い医療行為については,PICO形式(P: Patients, Problem, Population,I: Interventions,C: Comparisons, Controls, Comparators,O: Outcomes)のCQ(Clinical Question)に定式化して取り上げる.
「エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価」
設定したCQをもとに検索収集したエビデンス総体に対する定性的・定量的な評価を含んだシステマティックレビューを実施する.
「益と害のバランスなどの考量」
エビデンス以外に,益と害のバランス,コストや負担,そして患者の価値観・希望等を検討して推奨を決める.
「患者と医療者の意思決定を支援するために」
診療ガイドラインは臨床現場における患者と医療者の意思決定を支援することを主たる目的としている.
「推奨を提示する文書」
診療ガイドラインは,教科書でも法令でもなく,患者と医療者が意思決定の参考となる推奨を含む資料である.

このような診療ガイドラインを実現するためには,利益相反の管理,組織体制の構築,系統的な評価,様々な要因を踏まえた推奨決定といった診療ガイドラインの「透明性」,「不偏性」を確保するための方法が必要となる.それらの方法について,公益財団法人日本医療機能評価機構が実施する医療情報サービス「Minds」は,国際的な最新の動向を踏まえつつ,日本の実情にあわせて,『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』1)やそのエッセンス版2)にまとめている.


日本の診療ガイドラインとMindsの現状
日本では,1999年度から厚生(労働)省の研究費により複数の領域で診療ガイドラインが作成され始めた.現在では,学会・研究会等により,改訂版を含め年間80程度の診療ガイドラインが作成されている.

2002年より,厚生労働省の研究費で作成された診療ガイドラインを国民に普及させる事業としてMindsはスタートした.2004年には,無料で診療ガイドラインを検索・閲覧可能なMindsウェブサイトを公開した.その後,掲載する診療ガイドラインの範囲を拡大し,学会・研究会等が作成した診療ガイドラインを掲載してきた.2011年度より,Mindsは厚生労働省の委託事業,EBM普及推進事業となり,診療ガイドラインの作成支援,評価選定・掲載,活用促進を柱としつつ,患者・市民向け情報提供,海外動向調査等を含め,患者と医療者の意思決定を情報面から支援する取り組みを行なってきた.2016年2月末時点で,Mindsウェブサイトでは150を超える診療ガイドラインを掲載している3).また,タブレット・スマートフォン等のモバイル端末用アプリケーションであるMindsモバイルでも,Mindsウェブサイトに掲載されているほぼ全ての診療ガイドラインを無料で検索・閲覧できる.


日本の診療ガイドラインとMindsの今後
社会の価値観が多様化し,個別化医療が進展するにしたがって,患者と医療者の協働による意思決定がさらに重要になり,診療ガイドラインに対する期待がより一層大きくなると考えられる.診療ガイドラインを作成する側は,より透明性の高い診療ガイドラインを作成する必要がある.また,診療ガイドラインを活用する側は,診療ガイドラインの意義と限界を踏まえ,実際の臨床課題に対する診療ガイドラインの妥当性を評価して適切に活用することが求められる.

診療ガイドラインに対する社会からの期待が高まる中で,Mindsは診療ガイドラインがその期待に応えるようになるための取り組みを行なう必要がある.一方で,診療ガイドライン作成方法の提案だけでなく,作成団体の個別性に応じた支援を充実させることが重要となる.もう一方で,診療ガイドラインの評価選定方法を再検討し,社会に求められる質の高い診療ガイドラインを掲載するだけでなく,臨床現場の実情にあわせた活用されやすい形態で診療ガイドラインや関連情報を提供していくことが求められる.このように,Mindsは診療ガイドラインの価値を高め,活用環境を整備し,活用を促進する取り組みを充実させていくことを検討している.

診療ガイドラインの作成者,活用者,そしてMindsの取り組みによって,診療ガイドラインに支えられた意思決定の拡大による医療の質の更なる向上が望まれる.


文献
1) 小島原典子 他 編集:Minds診療ガイドライン作成マニュアル,Ver.2.0.公益財団法人日本医療機能評価機構,2016
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/guideline/manual.html.(2016年3月15日取得.)
2) 福井次矢・山口直人 監修:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院.
2014
3) 公益財団法人日本医療機能評価機構:Mindsウェブサイト.
http://minds.jcqhc.or.jp/.(2016年3月15日取得.)


(公開日:2016年9月15日)

 



日本の診療ガイドラインとMinds
公益財団法人 日本医療機能評価機構
畠山洋輔,佐藤康仁,吉田雅博,奥村晃子,田村恭子,矢口明子,篠原義人,山口直人


出典
畠山洋輔,佐藤康仁,吉田雅博,奥村晃子,田村恭子,矢口明子,篠原義人,山口直人.日本の診療ガイドラインとMinds.五十嵐隆監修.ガイドラインと最新文献による小児科学レビュー 2016‐’ 17総合医学社.2016.pp.3〜5.


診療ガイドラインの定義と意義
「診療ガイドライン」は『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』で次のように定義される.

診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書1)

この定義には診療ガイドラインの意義と作成方法の重要ポイントが含まれている.

「診療上の重要度の高い医療行為」
診療全体の中で臨床上重要度の高い医療行為については,PICO形式(P: Patients, Problem, Population,I: Interventions,C: Comparisons, Controls, Comparators,O: Outcomes)のCQ(Clinical Question)に定式化して取り上げる.
「エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価」
設定したCQをもとに検索収集したエビデンス総体に対する定性的・定量的な評価を含んだシステマティックレビューを実施する.
「益と害のバランスなどの考量」
エビデンス以外に,益と害のバランス,コストや負担,そして患者の価値観・希望等を検討して推奨を決める.
「患者と医療者の意思決定を支援するために」
診療ガイドラインは臨床現場における患者と医療者の意思決定を支援することを主たる目的としている.
「推奨を提示する文書」
診療ガイドラインは,教科書でも法令でもなく,患者と医療者が意思決定の参考となる推奨を含む資料である.

このような診療ガイドラインを実現するためには,利益相反の管理,組織体制の構築,系統的な評価,様々な要因を踏まえた推奨決定といった診療ガイドラインの「透明性」,「不偏性」を確保するための方法が必要となる.それらの方法について,公益財団法人日本医療機能評価機構が実施する医療情報サービス「Minds」は,国際的な最新の動向を踏まえつつ,日本の実情にあわせて,『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』1)やそのエッセンス版2)にまとめている.


日本の診療ガイドラインとMindsの現状
日本では,1999年度から厚生(労働)省の研究費により複数の領域で診療ガイドラインが作成され始めた.現在では,学会・研究会等により,改訂版を含め年間80程度の診療ガイドラインが作成されている.

2002年より,厚生労働省の研究費で作成された診療ガイドラインを国民に普及させる事業としてMindsはスタートした.2004年には,無料で診療ガイドラインを検索・閲覧可能なMindsウェブサイトを公開した.その後,掲載する診療ガイドラインの範囲を拡大し,学会・研究会等が作成した診療ガイドラインを掲載してきた.2011年度より,Mindsは厚生労働省の委託事業,EBM普及推進事業となり,診療ガイドラインの作成支援,評価選定・掲載,活用促進を柱としつつ,患者・市民向け情報提供,海外動向調査等を含め,患者と医療者の意思決定を情報面から支援する取り組みを行なってきた.2016年2月末時点で,Mindsウェブサイトでは150を超える診療ガイドラインを掲載している3).また,タブレット・スマートフォン等のモバイル端末用アプリケーションであるMindsモバイルでも,Mindsウェブサイトに掲載されているほぼ全ての診療ガイドラインを無料で検索・閲覧できる.


日本の診療ガイドラインとMindsの今後
社会の価値観が多様化し,個別化医療が進展するにしたがって,患者と医療者の協働による意思決定がさらに重要になり,診療ガイドラインに対する期待がより一層大きくなると考えられる.診療ガイドラインを作成する側は,より透明性の高い診療ガイドラインを作成する必要がある.また,診療ガイドラインを活用する側は,診療ガイドラインの意義と限界を踏まえ,実際の臨床課題に対する診療ガイドラインの妥当性を評価して適切に活用することが求められる.

診療ガイドラインに対する社会からの期待が高まる中で,Mindsは診療ガイドラインがその期待に応えるようになるための取り組みを行なう必要がある.一方で,診療ガイドライン作成方法の提案だけでなく,作成団体の個別性に応じた支援を充実させることが重要となる.もう一方で,診療ガイドラインの評価選定方法を再検討し,社会に求められる質の高い診療ガイドラインを掲載するだけでなく,臨床現場の実情にあわせた活用されやすい形態で診療ガイドラインや関連情報を提供していくことが求められる.このように,Mindsは診療ガイドラインの価値を高め,活用環境を整備し,活用を促進する取り組みを充実させていくことを検討している.

診療ガイドラインの作成者,活用者,そしてMindsの取り組みによって,診療ガイドラインに支えられた意思決定の拡大による医療の質の更なる向上が望まれる.


文献
1) 小島原典子 他 編集:Minds診療ガイドライン作成マニュアル,Ver.2.0.公益財団法人日本医療機能評価機構,2016
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/guideline/manual.html.(2016年3月15日取得.)
2) 福井次矢・山口直人 監修:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院.
2014
3) 公益財団法人日本医療機能評価機構:Mindsウェブサイト.
http://minds.jcqhc.or.jp/.(2016年3月15日取得.)


(公開日:2016年9月15日)

 



日本の診療ガイドラインとMinds
公益財団法人 日本医療機能評価機構
畠山洋輔,佐藤康仁,吉田雅博,奥村晃子,田村恭子,矢口明子,篠原義人,山口直人


出典
畠山洋輔,佐藤康仁,吉田雅博,奥村晃子,田村恭子,矢口明子,篠原義人,山口直人.日本の診療ガイドラインとMinds.五十嵐隆監修.ガイドラインと最新文献による小児科学レビュー 2016‐’ 17総合医学社.2016.pp.3〜5.


診療ガイドラインの定義と意義
「診療ガイドライン」は『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』で次のように定義される.

診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書1)

この定義には診療ガイドラインの意義と作成方法の重要ポイントが含まれている.

「診療上の重要度の高い医療行為」
診療全体の中で臨床上重要度の高い医療行為については,PICO形式(P: Patients, Problem, Population,I: Interventions,C: Comparisons, Controls, Comparators,O: Outcomes)のCQ(Clinical Question)に定式化して取り上げる.
「エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価」
設定したCQをもとに検索収集したエビデンス総体に対する定性的・定量的な評価を含んだシステマティックレビューを実施する.
「益と害のバランスなどの考量」
エビデンス以外に,益と害のバランス,コストや負担,そして患者の価値観・希望等を検討して推奨を決める.
「患者と医療者の意思決定を支援するために」
診療ガイドラインは臨床現場における患者と医療者の意思決定を支援することを主たる目的としている.
「推奨を提示する文書」
診療ガイドラインは,教科書でも法令でもなく,患者と医療者が意思決定の参考となる推奨を含む資料である.

このような診療ガイドラインを実現するためには,利益相反の管理,組織体制の構築,系統的な評価,様々な要因を踏まえた推奨決定といった診療ガイドラインの「透明性」,「不偏性」を確保するための方法が必要となる.それらの方法について,公益財団法人日本医療機能評価機構が実施する医療情報サービス「Minds」は,国際的な最新の動向を踏まえつつ,日本の実情にあわせて,『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』1)やそのエッセンス版2)にまとめている.


日本の診療ガイドラインとMindsの現状
日本では,1999年度から厚生(労働)省の研究費により複数の領域で診療ガイドラインが作成され始めた.現在では,学会・研究会等により,改訂版を含め年間80程度の診療ガイドラインが作成されている.

2002年より,厚生労働省の研究費で作成された診療ガイドラインを国民に普及させる事業としてMindsはスタートした.2004年には,無料で診療ガイドラインを検索・閲覧可能なMindsウェブサイトを公開した.その後,掲載する診療ガイドラインの範囲を拡大し,学会・研究会等が作成した診療ガイドラインを掲載してきた.2011年度より,Mindsは厚生労働省の委託事業,EBM普及推進事業となり,診療ガイドラインの作成支援,評価選定・掲載,活用促進を柱としつつ,患者・市民向け情報提供,海外動向調査等を含め,患者と医療者の意思決定を情報面から支援する取り組みを行なってきた.2016年2月末時点で,Mindsウェブサイトでは150を超える診療ガイドラインを掲載している3).また,タブレット・スマートフォン等のモバイル端末用アプリケーションであるMindsモバイルでも,Mindsウェブサイトに掲載されているほぼ全ての診療ガイドラインを無料で検索・閲覧できる.


日本の診療ガイドラインとMindsの今後
社会の価値観が多様化し,個別化医療が進展するにしたがって,患者と医療者の協働による意思決定がさらに重要になり,診療ガイドラインに対する期待がより一層大きくなると考えられる.診療ガイドラインを作成する側は,より透明性の高い診療ガイドラインを作成する必要がある.また,診療ガイドラインを活用する側は,診療ガイドラインの意義と限界を踏まえ,実際の臨床課題に対する診療ガイドラインの妥当性を評価して適切に活用することが求められる.

診療ガイドラインに対する社会からの期待が高まる中で,Mindsは診療ガイドラインがその期待に応えるようになるための取り組みを行なう必要がある.一方で,診療ガイドライン作成方法の提案だけでなく,作成団体の個別性に応じた支援を充実させることが重要となる.もう一方で,診療ガイドラインの評価選定方法を再検討し,社会に求められる質の高い診療ガイドラインを掲載するだけでなく,臨床現場の実情にあわせた活用されやすい形態で診療ガイドラインや関連情報を提供していくことが求められる.このように,Mindsは診療ガイドラインの価値を高め,活用環境を整備し,活用を促進する取り組みを充実させていくことを検討している.

診療ガイドラインの作成者,活用者,そしてMindsの取り組みによって,診療ガイドラインに支えられた意思決定の拡大による医療の質の更なる向上が望まれる.


文献
1) 小島原典子 他 編集:Minds診療ガイドライン作成マニュアル,Ver.2.0.公益財団法人日本医療機能評価機構,2016
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/guideline/manual.html.(2016年3月15日取得.)
2) 福井次矢・山口直人 監修:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院.
2014
3) 公益財団法人日本医療機能評価機構:Mindsウェブサイト.
http://minds.jcqhc.or.jp/.(2016年3月15日取得.)


(公開日:2016年9月15日)

 

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