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前立腺肥大症

■厚生科学研究班編/一般・GL(01年)/ガイドライン




6.前立腺肥大症はどんな治療をするか?

 
前立腺肥大症に対して治療をする必要があるのか否かを判断するのは、患者さんが排尿症状についてどの程度苦痛に感じているかを評価することが重要です。すなわち、先ほど述べました満足度スコア(QOLスコア)がどの程度かが問題になります。同じ症状や、同じ検査結果であっても、患者さんによって感じ方はずいぶん異なります。例えば、かなりの症状があっても「歳とったらこんなものか。特に不満は感じない」という人もあれば、「若い頃はこんなことなかった。非常に不満である」という人もあり、さまざまです。
さて、前立腺肥大症があっても症状が軽ければ、経過観察として、特に治療を施さずにしばらく様子をみます。悪化すると、薬物療法や、経尿道的電気切除術、前立腺蒸散術、開腹前立腺摘除術などの手術療法に加え、最近ではマイクロ波や超音波を尿道や直腸側から当てて前立腺を加熱する前立腺温熱療法なども行われています。すなわち、経過観察から薬物療法、手術療法まで症状に応じてさまざまな治療が選択されます。

(1)経過観察
積極的な治療は行わずに、しばらく経過をみるものです。外来で症状を聞いて、症状が強くなったら何らかの治療を行います。

(2)薬物治療
薬物療法を大きく分けると、「交感神経α1受容体遮断薬(α1ブロッカー)」と、「抗男性ホルモン剤(抗アンドロゲン剤)」の2種類があります。
α1ブロッカーは、交感神経に作用して、前立腺の筋肉の緊張を取り除きます。すると、尿道が広がり、排尿が楽になるわけです。ただし、この薬は、大きくなった前立腺を小さくするものではありません。また、この薬には、ときに血圧を下げる作用もあるので、「めまい」、「立ちくらみ」などの副作用がみられることがあるので、医師とよく相談してください。
抗アンドロゲン剤は、前立腺そのものを小さくする目的の薬です。前立腺は、男性ホルモンの影響を受けて大きくなるため、用いられます。しかし、この薬で、勃起障害(インポテンス)を起こす可能性があります。したがって、まだ性生活を営まれる患者さんは、十分に注意する必要があります。

(3)外科的治療法
症状が強い患者さんの場合、薬物療法だけでは、症状の改善が不十分です。そこで、肥大した前立腺を切除する「手術」が必要になります。先ほどの重症度判定で、重症の患者さんは一般的に適応となりますが、その他に尿閉を起こす、腎機能が低下している、膀胱結石があるなどの症状があれば、手術が必要となります。
手術の方法はいろいろありますが、最も一般的に行われているのは、「経尿道的前立腺切除術(TURP)」です。これは、尿道から内視鏡で見ながら、前立腺の肥大した部分を電気メスで切除する方法です(図5)。この手術を受けると、射精した精液が膀胱のほうへ入ってしまう「逆行性射精」が起こることがあります。
その他の外科的治療としては、「レーザー療法」と「高温度治療」があります。レーザー療法は、尿道から内視鏡を入れ、その先端からレーザーを照射して、肥大した組織を焼き切る方法です。また、高温度治療は、尿道や直腸からカテーテルを挿入し、カテーテルの中からマイクロ波や超音波などによる熱を出して、前立腺を縮小させます。患者さんに対する身体的負担が少ないという利点がありますが、手術直後は前立腺の縮小はあまり期待できず、効果の面では手術に比べると若干劣ることは否めません。
このほか、他の病気のために手術ができず、病状が重い患者さんに行う外科的療法として、「尿道ステント留置術」があります。これは、形状記憶合金や合成樹脂の管などを前立腺部の尿道に入れて広げる方法です。これは、尿路の感染症を起こしやすいので、他に方法がない場合に行われます。
手術するか否かは、先ほど述べたような、重症度評価を治療前に正確に行い、最も適した治療法を選ぶようにします。また、患者さんの年齢、日常活動状態、希望なども重要な要素になります。医師とよく話し合い、病状に最も適した方法を理解し、納得のうえで選んでいただいた方がいいでしょう。

図5 前立腺肥大症の手術療法
図5 前立腺肥大症の手術療法