ガイドライン解説

前立腺がん検診 Minds版ガイドライン解説

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Q2:PSA検診はなぜ推奨されないのでしょうか?

ガイドライン作成委員より皆さまへ
PSA検診については、効果があるとする研究と効果がない[あるいは不明]とする研究がそれぞれ多くあります。しかし、がん検診の目的である、がん死亡率減少を証明した、信頼性の高い研究は行われていません。米国と欧州で行われた大型研究でも、両者の結果は一致せず、現在まで確実な証拠は得られていません。多くの研究の結果が一致しないことから、がん死亡率減少の有無[効果のあり/なし]は、現在のところ不明と判断しました。また、PSA検診では、ほかのがん検診と同様、精密検査や治療の不利益もあります。したがって、証拠が不十分で不利益も無視できないPSA検診を対策型検診として行うことは現在のところ推奨していません。
 


医学用語解説
前立腺特異抗原[PSA]検査
(ぜんりつせんとくいこうげん[ピーエスエー]けんさ)
PSA[前立腺特異抗原]検査は、血液による検査です。PSAは前立腺でつくられるタンパク質で、健康な人では血液の中にはでてきません。がんや炎症などがある場合に血液中にでてきますが、必ずしもがんというわけではありません。
前立腺がん
(ぜんりつせんがん)
男性だけに存在する前立腺という器官に発生するがんのことです。欧米では男性のがんとして最も多く、日本では6番目に多いがんです。進行が遅く、早期にはほとんど症状が見られません。50歳を過ぎると、加齢とともに前立腺がんが発生する確率も急上昇します。早期発見・早期治療を行うために、症状が現れる前から検診を受けることが大切です。
早期診断
(そうきしんだん)
症状がないときからがん検診を行い、がんが小さく、周囲に広がる前にがんを発見することです。
有用
(ゆうよう)
その検査法や治療法が、安全であり、診断に利用できる場合に有用といいます。病変の発見だけではなく、治療のモニタリングなどにも用いられる場合もあります。
死亡率減少効果
(しぼうりつげんしょうこうか)
有効ながん検診を行うことにより、対象となるがん死亡率が減少することです。死亡率減少効果が科学的に信頼性の高い方法により証明された場合に、がん検診の有効性が認められます。
対策型検診
(たいさくがたけんしん)
市町村の住民や会社の従業員など、特定の集団の死亡率を下げることを目的として行われる検診です。病気の予防対策として行われる公共的な医療サービスですから、費用は公共機関の負担となります。ただし、すでに症状のある人や治療を受けている人は、検診の対象とはなりません。
任意型検診
(にんいがたけんしん)
医療機関が任意で提供し、個人の意志で受診する検診です。個人の死亡リスクを低下させることを目的として行われます。医療施設や検診センターが提供する総合健診や人間ドックがこれに当たり、費用は検診を受ける個人の負担となります。ただし、すでに症状のある人や治療を受けている人は、検診の対象とはなりません。
過剰診断
(かじょうしんだん)
がん検診はがんによる死亡を防ぐことを目的に、がんによる症状が発現する前に発見し、治療するために行われます。ここには、がんは放置すると進行し致死的になるという前提が存在しますが、放置しても致死的とはならないがんも一定割合で存在します。例としては、がんが進行して症状が発現する前に、ほかの原因で死亡してしまうようながんを早期に発見する場合です。こうした例は、がんの成長速度が極めて緩やかであったり、極めて早期にがんを発見した場合、あるいは、がんが発見された人が高齢者であったり重篤な合併症を有する場合に生じやすくなります。このようながんを診断し、治療することは、健常者にとっては検診を受けなければ本来必要のない出来事であり、不利益につながることから、過剰診断と呼ばれます。
不利益
(ふりえき)
前立腺がん検診を受けることで、受けた方が被る負担や不都合のことです。前立腺がんがあるのに前立腺がんではないと判定される可能性[偽陰性]、逆に前立腺がんではないのに前立腺がんだと判定される可能性[偽陽性]があります。また、前立腺がんでは死亡にいたらない「がんもどき」を発見する可能性[過剰診断]が高いことが知られています。さらに精密検査を受ける際には、精神的・肉体的な負担も伴います。
・ エビデンス/証拠
(しょうこ)
医師が患者さんの病気に対する診断や治療を決定するときの「科学的根拠」のことです。通常は多くの患者さんでよく計画された臨床試験を行った結果をいちばん信頼性が高いとみなしますが、すべての疑問に対して信頼できる臨床試験の結果が得られているわけではありません。その場合は、観察や調査を主に行う観察研究などの臨床研究の結果や専門家の意見なども考慮して決定されます。


関連する医療提供者向けガイドラインの表示はこちら
厚労省がん研究班編/医療・GL(08年)  2)前立腺特異抗原(PSA)
厚労省がん研究班編/医療・GL(08年)  V.推奨グレード
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