ガイドライン解説

前立腺がん検診 Minds版ガイドライン解説

書誌情報
Q1:直腸診では、前立腺がんは発見できるのでしょうか?




ガイドライン作成委員より皆さまへ
直腸診により前立腺がんを発見することは可能です。しかし、症状のない健常者を対象としたがん検診の方法として用いることには、死亡率減少効果の明確な証拠はありません。
 


医学用語解説
エビデンス/証拠
(しょうこ)
医師が患者さんの病気に対する診断や治療を決定するときの「科学的根拠」のことです。通常は多くの患者さんでよく計画された臨床試験を行った結果をいちばん信頼性が高いとみなしますが、すべての疑問に対して信頼できる臨床試験の結果が得られているわけではありません。その場合は、観察や調査を主に行う観察研究などの臨床研究の結果や専門家の意見なども考慮して決定されます。
死亡率減少効果
(しぼうりつげんしょうこうか)
有効ながん検診を行うことにより、対象となるがん死亡率が減少することです。死亡率減少効果が科学的に信頼性の高い方法により証明された場合に、がん検診の有効性が認められます。
対策型検診
(たいさくがたけんしん)
市町村の住民や会社の従業員など、特定の集団の死亡率を下げることを目的として行われる検診です。病気の予防対策として行われる公共的な医療サービスですから、費用は公共機関の負担となります。ただし、すでに症状のある人や治療を受けている人は、検診の対象とはなりません。
任意型検診
(にんいがたけんしん)
医療機関が任意で提供し、個人の意志で受診する検診です。個人の死亡リスクを低下させることを目的として行われます。医療施設や検診センターが提供する総合健診や人間ドックがこれに当たり、費用は検診を受ける個人の負担となります。ただし、すでに症状のある人や治療を受けている人は、検診の対象とはなりません。
不利益
(ふりえき)
前立腺がん検診を受けることで、受けた方が被る負担や不都合のことです。前立腺がんがあるのに前立腺がんではないと判定される可能性[偽陰性]、逆に前立腺がんではないのに前立腺がんだと判定される可能性[偽陽性]があります。また、前立腺がんでは死亡にいたらない「がんもどき」を発見する可能性[過剰診断]が高いことが知られています。さらに精密検査を受ける際には、精神的・肉体的な負担も伴います。
直腸診
(ちょくちょうしん)
肛門から指を挿入して前立腺を触診する方法で、前立腺の大きさや硬さなどを調べます。前立腺は肛門より約5cmの位置で、その表面は平滑です。前立腺表面が不整であったり、硬くなっていたり、左右不対称などは前立腺がんの存在を疑う異常所見です。
digital rectal examination
(デジタル・レクタル・エグザミネーション)
DRE
(ディーアールイー)
被検者
(ひけんしゃ)
検査を受ける人のことです。ここでは直腸診を受ける人を指します。
仰臥位
(ぎょうがい)
仰向け(あおむけ)の姿勢のことです。直腸診を行うときに患者さんがとる姿勢の一つです。
側臥位
(そくがい)
横向きに寝ている姿勢のことです。直腸診を行うときに患者さんがとる姿勢の一つで、直腸診を行いやすい姿勢です。
膝肘位
(しつちゅうい)
肘と膝を床につけ、四つ這いになり、お尻を突き出した姿勢のことです。直腸診を行うときに患者さんがとる姿勢の一つで、直腸診を行いやすい姿勢です。
検者
(けんじゃ)
検査を行う人のことです。ここでは直腸診を行う医師のことを指します。
示指
(じし)
人差し指のことです。直腸診など指で触った感触で異常の有無を判断するときには、人差し指か中指を使います。
前立腺
(ぜんりつせん)
膀胱からの尿の通り道である尿道の周囲にあるクルミくらいの大きさの器官です。膀胱の真下、直腸の手前にあります。男性だけにあり、精液の成分である前立腺液を分泌します。
12時方向
(12じほうこう)
自分の正面、つまり自分が向かっている方向のことを指します。前立腺の直腸診では指を肛門から真っ直ぐ入れて、その方向に触れると前立腺を直腸の壁越しに触れることができます。
触知
(しょくち)
指や手のひらを用いて、硬さや大きさなどを調べる際に、感知される状態のことです。ここでは、直腸の壁越しに指で前立腺に触れ、異常の有無を調べている状況です。
正常前立腺
(せいじょうぜんりつせん)
がんなどの病気にかかっていない健康な状態の前立腺のことです。正常前立腺は、表面が平らで、クルミくらいの大きさです。がんになると、前立腺の表面はごつごつしたり、硬いしこりができたたり、形が左右で不揃いになったりします。
弾性軟
(だんせいなん)
直腸診で前立腺を触ったときの硬さの程度を表す用語で、弾力があり、軟らかい状態を弾性軟といいます。健康な前立腺はゴムまりのような弾力があり、軟らかいのが特徴です。がんが発生するとごつごつと硬くなるため、弾力と硬さはがんを判定する重要な要素となります。
弾性硬
(だんせいこう)
直腸診で前立腺を触ったときの硬さの程度を表す用語で、弾力があり、硬い場合を弾性硬といいます。健康な前立腺はゴムまりのような弾力があり、軟らかいのが特徴です。硬くなっても弾力があれば、前立腺が大きくなる良性の前立腺肥大症だと考えられます。がんが発生するとごつごつと硬くなるため、弾力と硬さはがんを判定する重要な要素となります。
硬結
(こうけつ)
炎症やがんによって組織や器官が硬くなることです。前立腺にごつごつした硬い部分があるときは、前立腺の病変が疑われます。
左右不対称
(さゆうふたいしょう)
左と右で形が異なることです。正常な前立腺は尿道を中心に左右で同じ形をしていますが、がんが発生するとどちらかが膨らんだり、ごつごつと硬くなったりするため、左右の形が違ってくることがあります。前立腺が左右不対称の場合には前立腺の病変が疑われます。
前立腺がん
(ぜんりつせんがん)
男性だけに存在する前立腺という器官に発生するがんのことです。欧米では男性のがんとして最も多く、日本では6番目に多いがんです。進行が遅く、早期にはほとんど症状が見られません。50歳を過ぎると、加齢とともに前立腺がんが発生する確率も急上昇します。早期発見・早期治療を行うために、症状が現れる前から検診を受けることが大切です。
異常所見
(いじょうしょけん)
検査を行ったときに、健康な状態とは異なる異常な状態や検査値を示すことです。異常所見がある場合にはがんであることが疑われます。異常所見がない場合でも小さながんが存在することがありますし、逆に異常所見がある場合でもがんではないこともあります。


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