ガイドライン解説

前立腺がん検診 Minds版ガイドライン解説

書誌情報
推奨グレード・推奨度

表3 推奨グレード
推奨 表現 対策型検診 注1)
[住民検診型]
任意型検診 注2)
[人間ドック型]
証拠のレベル
A 死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので、実施することを勧める 推奨する 推奨する 1++/1+
B 死亡率減少効果を示す十分な証拠があるので、実施することを勧める 推奨する 推奨する 2++/2+
C 死亡率減少効果を示す証拠があるが、無視できない不利益があるため、対策型検診として実施することは勧められない
任意型検診として実施する場合には、安全性を確保し、不利益に関する説明を十分に行い、受診するかどうかを個人が判断できる場合に限り、実施することができる
推奨しない 条件付きで
実施できる
1++/1+/2++/2+
D 死亡率減少効果がないことを示す証拠があるため、実施すべきではない 推奨しない 推奨しない 1++/1+/2++/2+
I
注3)
死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診として実施することは勧められない
任意型検診として実施する場合には、効果が不明であることと不利益について十分説明する必要がある
その説明に基づく、個人の判断による受診は妨げない
推奨しない 個人の判断に
基づく受診は妨げない
1-/2-/3/4
注1) 対策型検診は、公共的な予防対策として、地域住民や職域などの特定の集団を対象としている。
その目的は、集団におけるがんの死亡率を減少させることである。
対策型検診は、死亡率減少効果が科学的に証明されていること、不利益を可能な限り最小化することが原則となる。
具体的には、市区町村が行う老人保健事業による住民を対象としたがん検診や職域において法定健診に付加して行われるがん検診が該当する。
注2) 任意型検診とは、医療機関や検診機関が任意で提供する保健医療サービスである。
その目的は、個人のがん死亡リスクを減少させることである。
がん検診の提供者は、死亡率減少効果の明らかになった検査方法を選択することが望ましい。
がん検診の提供者は、対策型検診では推奨されていない方法を用いる場合には、死亡率減少効果が証明されていないこと、及び、当該検診による不利益について十分説明する責任を有する。
具体的には、検診センターや医療機関などで行われている総合健診人間ドックなどに含まれているがん検診が該当する。
注3) 推奨 I と判定された検診の実施は、有効性評価を目的とした研究を行う場合に限定することが望ましい。

ガイドライン作成委員より皆さまへ
公共政策として行われる対策型検診では科学的根拠が明確な検診方法が選択されます。任意型検診では、科学的根拠の明確な方法が選択されることが理想ですが、必ずしもそうではありません。検診受診時は科学的根拠の有無を確認した上で、受診するか否かを判断してください。
 


医学用語解説
エビデンス/証拠
(しょうこ)
医師が患者さんの病気に対する診断や治療を決定するときの「科学的根拠」のことです。通常は多くの患者さんでよく計画された臨床試験を行った結果をいちばん信頼性が高いとみなしますが、すべての疑問に対して信頼できる臨床試験の結果が得られているわけではありません。その場合は、観察や調査を主に行う観察研究などの臨床研究の結果や専門家の意見なども考慮して決定されます。
対策型検診
(たいさくがたけんしん)
市町村の住民や会社の従業員など、特定の集団の死亡率を下げることを目的として行われる検診です。病気の予防対策として行われる公共的な医療サービスですから、費用は公共機関の負担となります。ただし、すでに症状のある人や治療を受けている人は、検診の対象とはなりません。
住民検診型
(じゅうみんけんしんがた)
任意型検診
(にんいがたけんしん)
医療機関が任意で提供し、個人の意志で受診する検診です。個人の死亡リスクを低下させることを目的として行われます。医療施設や検診センターが提供する総合健診や人間ドックがこれに当たり、費用は検診を受ける個人の負担となります。ただし、すでに症状のある人や治療を受けている人は、検診の対象とはなりません。
人間ドック型
(にんげんドックがた)
・ 死亡率減少効果
(しぼうりつげんしょうこうか)
有効ながん検診を行うことにより、対象となるがん死亡率が減少することです。死亡率減少効果が科学的に信頼性の高い方法により証明された場合に、がん検診の有効性が認められます。
・ 不利益
(ふりえき)
前立腺がん検診を受けることで、受けた方が被る負担や不都合のことです。前立腺がんがあるのに前立腺がんではないと判定される可能性[偽陰性]、逆に前立腺がんではないのに前立腺がんだと判定される可能性[偽陽性]があります。また、前立腺がんでは死亡にいたらない「がんもどき」を発見する可能性[過剰診断]が高いことが知られています。さらに精密検査を受ける際には、精神的・肉体的な負担も伴います。
・ 死亡率
(しぼうりつ)
日本人全体、ある地域の住民など特定の集団のなかで、一定期間に死亡した人の割合のことです。死亡率にはすべての死因による全死因死亡率と特定疾患による死亡率があります。前立腺がん死亡率は、前立腺がんに限定した死亡率です。
・ がん検診
(がんけんしん)
無症状の者を対象に、がんの疑いのある人を発見することを目的に行う検査です。早期にがんを発見し、治療することで、がんによる死亡率を減らすことを目的としています。多くの人を対象に比較的簡単で、負担のない方法で、がんの可能性がないかを検査し、疑いのある人はさらに詳しく調べる精密検査を行って、診断を確定します。
・ 法定健診
(ほうていけんしん)
労働安全衛生法などの特定の法律に従って行われる定期健康診断を意味します。労働安全衛生法では労働者が1年に1回定期的な健診を受けることを義務付けています。同時に、事業者も健診の実施が義務付けられています。職務内容により、健診項目も法律で決められています。
・ 総合健診
(そうごうけんしん)
特定の疾患を発見することを目的とせず、健康の確認のために多種類の検査を行うものです。早期発見を目的とするだけでなく、検査後の予防のための健康指導も行うことがあります。
・ 人間ドック
(にんげんドック)
特定の疾患を発見することを目的とせず、健康の確認のために多種類の検査を行います。医療機関が任意で提供し、受診者は個人の意志で選択します。内容は総合健診と同じものもあり、一部年齢や性別により特定の疾患をターゲットにした健診も行われています。
死亡リスク
(しぼうリスク)
個人やある特定の集団が死亡するリスクです。信頼性の高い科学的根拠の確かな研究をあてはめることにより予測することができます。

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