ガイドライン

根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン(完全版)

書誌情報
総意形成のまとめ


トピック3:正期産児に出生直後に行う「カンガルーケア」

Iガイドライン案(1回目)
健康な正期産児は、厳重な臨床的・機械的モニタリングのもと、生後できるだけ早期に、できるだけ長く、母親とカンガルーケア(skin to skinの抱っこ)をすることが薦められる。
(以降、青字は仮推奨)

IIガイドライン案(1回目)に対する評価
スコアは6点から9点までばらつき、中央値は8であった。
評価スタッフからのコメントでは、12人中10人がその効果については科学的根拠が充分であり、子育て文化という視点からも是非行うべきという肯定的な意見であった。開始時期や実施時間に関しては今後の検討課題としながらも“早期に開始し、長時間継続”との意見に支持的であった。対象に関しては12人中2人が帝王切開例に関しては安全性・有効性ともに根拠不十分であるとの見解であり、異常分娩に対して慎重に対処する必要があるとの意見があった。また評価スタッフの12人中3人がKC中の無呼吸や痙攣などのヒヤリ症例を経験しており、12人中7人が安全性への配慮が不可欠であると答えた。人による観察が必要と答えた評価者は1人で、4人が機械的モニタリングの必要性を挙げていたが、機械的モニタリングが母子相互関係を阻害する可能性についても危惧する意見があった。

III改訂ガイドライン案
変更なし

健康な正期産児は、厳重な臨床的・機械的モニタリングのもと、生後できるだけ早期に、できるだけ長く、母親とカンガルーケア(skin to skinの抱っこ)をすることが薦められる。

IVワークショップ
導入基準(“健康な正期産”の定義), 除外基準, 責任の所在, 蘇生熟練者の存在の重要性を議論する必要があることが確認された。また機械的モニタリングに関しては必要であるとしながらも、母子相互関係に対するデメリットに関しても改めて指摘があった。危急事象の報告例の臨床経過からすると人的観察では不十分であるとの指摘もあり、機械的モニタリングでないと予防できないとの意見もあった。また訴訟の根拠となる可能性に留意してガイドラインを策定するべきとの意見や、あらかじめ危険性を説明した上で実施するべきとの意見もあった。
以上をふまえ、最大限の安全性確保の方法として、(1)機械のみによる観察(2)人的、機械的観察(3)人による観察の3つが提示され、(2)の意見が大勢であった。人的観察に関しては、(1)家族または医療者(2)医療者のみ(3)特定しない、の3つが提示され、(2)が大勢であった。

IV'ガイドライン案(2回目)
健康な正期産児は、生後できるだけ早期に、できるだけ長く、母親とカンガルーケア(skin to skinの抱っこ)をすることが薦められる。その際、母親に対する充分な事前説明と機械的モニタリングおよび新生児蘇生に熟練した医療者による観察など安全性の確保が必要である。

Vガイドライン案(2回目)に対する評価
スコアは5点から9点までばらつき、中央値は7であった。
評価スタッフからのコメントでは、12人中8人が安全性への配慮が必要と言及しており、その方法として人的・機械的観察を挙げた評価者は2人、人的観察で充分との意見が1人、児の安全第一という前提で家族との話し合いで決めるべきとの意見が1人であった。また、“人的観察”や“機械的観察”との記載で実施できる施設が減ってしまうのではないかと懸念する意見や、“機械的厳重観察”との記載に反対する意見もあった。
また、同時に行われた会場参加者のアンケートでは、スコアは1点から9点までばらつき、中央値は8であった。ワークショップの議論を反映して、安全性の確保に関しての記載が大半を占め、医療従事者による観察と、器械によるモニタリングが必要とする意見が、反対意見を大きく上回っていた。しかし、除外基準、導入基準や実施方法などの基準を策定するべきとの意見や、更なる研究が必要であるとの意見も数多くあり、安全性が確保できなければ実施すべきでないとする意見も少数ながらあった。

VIガイドライン案(3回目)
健康な正期産児は、生後できるだけ早期に、できるだけ長く、ご家族(特に母親)とカンガルーケアをすることが薦められる。その際、ご家族に対する充分な事前説明と、機械を用いたモニタリングおよび新生児蘇生に熟練した医療者による観察など安全性の確保(※注6)が必要である。
  • ※注6:今後さらなる研究、基準の策定が必要です。

VIIガイドライン案(3回目)に対する評価
スコアは6点から9点までばらつき、中央値は9であった。
評価スタッフからのコメントでは、この推奨文であれば機械でモニタリングをしながら時々医療者が確認するといった方法も含まれると感じるのでよいとする意見がみられた一方、「医学的ケア」が前面に出てしまうと出生直後のカンガルーケアを通して動いていく「自然のプロセス」が妨げられるのを危惧する意見も寄せられた。ただ、実際に問題が生じていて、その問題の原因究明も進んでいない現状を勘案し、全体として推奨文の表現を肯定的に評価するコメントが多くみられた。

VIIIガイドライン案 完成
この結果を受け、ガイドライン評価メンバーでの協議の結果、総意形成が得られたと判断し、推奨文の完成となった。


IXパブリックコメント募集
カンガルーケア・ガイドライン独自のウェブサイト、周産期・新生児医療関連のメーリングリスト、未熟児新生児学会会場などの場を通じて、広く多くの方々に完成した推奨文に対するご意見を募集した。
パブリックコメントでは、安全面への配慮に関して両方向からの多くの意見が寄せられた。

Xガイドライン 完成
パブリックコメントで寄せられた各々の意見に対し、ガイドライン作成メンバーで検討し、科学的根拠の確かさを踏まえて、バランスを考えて、最終的には文章の順番の入れ替え、注釈の追加などいくつか文章表現の加筆修正を行った。

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