ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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書誌情報
第6章 人工股関節全置換術(THA)


Research Question 12
THAにリハビリテーションは有効か

推奨
Grade B THAに対するリハビリテーションは,歩行能力,筋力,可動域および精神状態の向上に有効である.


解説
THAの術前と術後のリハビリテーションが臨床成績に及ぼす影響を検討することは,THAの治療効果を最大限に獲得するために重要である.リハビリテーションの介入研究では,症例数が比較的かぎられる傾向はあるが,THAの術前後のリハビリテーションを施行することにより,筋力,股関節屈曲可動域・歩行能力の改善効果を有意に高めることが示されている(HF10584HF10163HF10293).ただし,術後1年までの効果を判定した研究が多く,術後1年以上の中・長期的な効果は明らかにはされていない.また,術前のみのリハビリテーションによる関節可動域や歩行能力の改善効果に関するエビデンスは得られていない.


サイエンティフィックステートメント
  • THAの術前後のリハビリテーションを施行することにより,施行しない症例に比べ,筋力,股関節屈曲可動域・歩行能力の改善効果が有意に高かったとする中等度のエビデンスが複数ある(EV level-IV).
  • リハビリテーションに抵抗運動強化プログラムを追加することで,運動機能・筋力などの増強を有意に高めるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • THA術前に教育プログラムを含めたリハビリテーションを施行しても,施行しない症例と比べ退院時の臨床スコア,疼痛評価,可動域の改善に影響しないとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 患者教育を含めたリハビリテーションをすることにより,抑うつ症状・自己効力感などの精神的状態が有意に改善されるとする中等度のエビデンスが複数ある(EV level-IV).


エビデンス
  • THA予定の変形性股関節症(股関節症)患者68例で,介入群(術前8週からと術後12週までのリハビリテーションプログラム)37例と対照群31例を比較した.術直前も術後も患者アウトカムスコア(WOMACスコア),筋力,股関節屈曲可動域の調査項目すべてにおいて介入群の成績が良かった(HF10584, EV level-IV).
  • 60歳以上の股関節症患者25例を含む28例(ほか炎症性関節症1例,大腿骨頭壊死症2例)を2群に分け,1群で術前8週前より術後12週までのリハビリテーションを行い,歩行能力(歩幅,歩調,Gait velocity,6-minute walk test)の改善効果を評価した.術後半年までの評価で,リハビリテーション介入群で有意に改善効果が高かった(HF10163, EV level-IV).
  • 股関節症患者23例に対し,自宅で行う術後6週間のリハビリテーションの効果を,リハビリテーションホームプログラム介入群(A群)8例,さらに立位での筋力強化を追加した群(B群)8例,および対照群(C群)7例に分けて検討した.術後6週で歩行速度,歩調の改善がA,B群で認められた(HF10293, EV level-IV).
  • 片側性一次性股関節症患者36例に対してTHAを施行し,術後通常のリハビリテーションを施行された12例,通常のリハビリテーションに抵抗運動強化プログラムを追加した13例,通常のリハビリテーションに股関節周囲に神経筋電気刺激を加えた11例の3群に分けて,術後12週までリハビリテーションの効果を比較した.抵抗運動を追加した群は通常のリハビリテーション施行群に比べ,入院期間の短縮,術後12週の起坐運動機能,CT上の大腿四頭筋面積および大腿四頭筋力の改善が有意に高かった(HF10781, EV level-IV).
  • THA施行予定の股関節症患者59例を,術前8週間上下肢の筋力増強訓練・股関節可動域訓練およびTHA術後の生活に関する教育プログラムを受講する介入群29例と対照群30例に無作為に割り付けを行った.術直前から退院時までのHarris hip scoreの改善度,安静時・活動時VASの改善度,外転角度の改善度には両群間で有意差はなく,術後2年のHarris hip scoreも両群間に有意差はなかった(HF10624, EV level-IV).
  • THA手術予定の1,065例(90%は股関節症)に対し,理学療法,作業訓練,患者教育で構成されるリハビリテーションプログラムによって,患者自身がもつ病気に対処できる自己効力感が改善するかをArthritis Self-Efficacy Scaleを用いて評価した.入院時より退院時に,疼痛,障害,抑うつ症状,自己効力感は有意に改善した.また,術後6ヵ月までにプログラムから脱落した296例に比べ,最後まで参加した769例のほうがより改善傾向が認められた(HF10371, EV level-IV).
  • 術前に病状,手術,リハビリテーションなど多分野領域にまたがるディスカッションを医療者と患者の間で積極的に行うことにより,周術期の患者の不安感や痛みを軽減する効果が認められた(HF10585, EV level-IV).


文献

1) HF10584 Gilbey HJ, Ackland TR, Wang AW, Morton AR, Trouchet T, Tapper J. Exercise improves early functional recovery after total hip arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 2003;(408):193-200.
2) HF10163 Wang AW, Gilbey HJ, Ackland TR. Perioperative exercise programs improve early return of ambulatory function after total hip arthroplasty: a randomized, controlled trial. Am J Phys Med Rehabil. 2002;81(11):801-6.
3) HF10293 Sashika H, Matsuba Y, Watanabe Y. Home program of physical therapy: effect on disabilities of patients with total hip arthroplasty. Arch Phys Med Rehabil. 1996;77(3):273-7.
4) HF10781 Suetta C, Magnusson SP, Rosted A, Aagaard P, Jakobsen AK, Larsen LH, Duus B, Kjaer M. Resistance training in the early postoperative phase reduces hospitalization and leads to muscle hypertrophy in elderly hip surgery patients--a controlled, randomized study. J Am Geriatr Soc. 2004;52(12):2016-22.
5) HF10624 Gocen Z, Sen A, Unver B, Karatosun V, Gunal I. The effect of preoperative physiotherapy and education on the outcome of total hip replacement: a prospective randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2004;18(4):353-8.
6) HF10371 Dohnke B, Knauper B, Müller-Fahrnow W. Perceived self-efficacy gained from, and health effects of, a rehabilitation program after hip joint replacement. Arthritis Rheum. 2005;53(4):585-92.
7) HF10585 Giraudet-Le Quintrec JS, Coste J, Vastel L, Pacault V, Jeanne L, Lamas JP, Kerboull L, Fougeray M, Conseiller C, Kahan A, Courpied JP. Positive effect of patient education for hip surgery: a randomized trial. Clin Orthop Relat Res. 2003;(414):112-20.


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