ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第6章 人工股関節全置換術(THA)


Research Question 11
高位脱臼に対するTHAの治療成績は

推奨
Grade I 高位脱臼に対するTHAの10〜16年での弛みによる再置換率は13〜23%である.


解説
明確な高位脱臼の定義はない.ここでは高位脱臼の定義としてCrowe分類type III,IVあるいは,Hartofilakidis分類で“Low dislocation”と“High dislocation”に分類されるものを高位脱臼とした.臼蓋骨欠損に対する骨移植に関する記述についてはRQ10に譲る.高位脱臼症例では脱臼位の低い症例に比して,弛みの発生率が高くなるとの報告がある(HF10545HF10904HF11105HF10936)が,臨床成績は同等に良好であったとの報告もあり(HF10904),手術が適切に遂行され得る場合には選択可能である.しかし,成績にばらつきがあるため推奨GradeはIとした.


サイエンティフィックステートメント
  • 高位脱臼に対するTHAの10〜16年での弛みによる再置換率は13〜23%であり,報告によりばらつきがある.その主な原因はソケットの弛みであった(EV level-IV).
  • 脱臼度が高くなるにつれ,X線上の弛みが多くなるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 術後平均10年でのHarris hip scoreにおいて,脱臼度の違いによる差はなかったとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).


エビデンス
  • Crowe分類type IIIの脱臼位変股症患者65例70関節を対象とした.ソケットはセメント使用,原臼位設置を目指し,上外側骨欠損には10関節に自家骨移植を行った.平均経過観察期間は16.6年(5〜23年)であった.最終調査時53%に弛みが認められた.原臼位から外れた18関節のうち,15関節(83.3%)が弛みをきたし,原臼位設置ができた52関節のうち弛みをきたしたのは22関節(42.3%)であった.また,骨頭中心が上方あるいは,外側方向に位置したものは有意に弛みの頻度が高かった(HF10545, EV level-IV).
  • 高位脱臼あるいは臼蓋形成不全後股関節症116関節に対しハイブリッドもしくはセメント非使用THAを行った.Hartofilakidis分類で“Dysplasia”が40関節,“Low dislocation”が34関節,“High dislocation”が42関節であった.再置換をエンドポイントとした10年生存率は“Dysplasia”が95%,“Low dislocation”が91%,“High dislocation”が83%であり,“High dislocation”で有意に低かった.破綻はソケット側の弛みのためであり,ステム側の成績に差はなかった.Harris hip scoreは脱臼度の違いによる差はなかった(HF10904, EV level-IV).
  • 高位脱臼あるいは臼蓋形成不全後股関節症292関節,206例を対象とした.Crowe分類type Iが161関節,type IIが78関節,type IIIが27関節,type IVが26関節であった.経過観察期間は15.7年(2.2〜31.2年)で機種はセメント使用Charnley型THAであった.48関節に骨頭からの自家骨移植を行った.弛みによるソケットの再置換術施行をエンドポイントとした場合,Crowe分類別での20年の生存率はtype Iが73.1%,type IIが66.6%,type IIIが42.4%,type IVが15.6%であり,自家骨移植の有無による成績は有意差がなかった(HF11105, EV level-IV).
  • Crowe分類type I,II,III 136関節,type IV 46関節を対象とし,平均経過観察期間は10年(3.1〜22.8年)であった.手術はCharnley型THAで164関節に大転子骨切りを施行した.自家骨移植は行わなかった.ソケットの弛みはCrowe分類type I,II,IIIで4%,type IV 9%と,type IVで約2倍の頻度であったが,ステムの成績には差はなかった(HF10936, EV level-IV).


文献

1) HF10545 Stans AA, Pagnano MW, Shaughnessy WJ, Hanssen AD. Results of total hip arthroplasty for Crowe Type III developmental hip dysplasia. Clin Orthop Relat Res. 1998;(348):149-57.
2) HF10904 Kim YH, Kim JS. Total hip arthroplasty in adult patients who had developmental dysplasia of the hip. J Arthroplasty. 2005;20(8):1029-36.
3) HF11105 Chougle A, Hemmady MV, Hodgkinson JP. Severity of hip dysplasia and loosening of the socket in cemented total hip replacement. A long-term follow-up. J Bone Joint Surg Br. 2005;87(1):16-20.
4) HF10936 Numair J, Joshi AB, Murphy JC, Porter ML, Hardinge K. Total hip arthroplasty for congenital dysplasia or dislocation of the hip. Survivorship analysis and long-term results. J Bone Joint Surg Am. 1997;79(9):1352-60.


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