ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第6章 人工股関節全置換術(THA)


Research Question 8
セラミックオンセラミックTHAの治療効果は

推奨
Grade I 金属ソケットにセラミックライナーを嵌合させたセラミックオンセラミックTHAの中期成績はおおむね良好であるが,長期成績は不明である.
Grade D ポリエチレンライナーを介在させたセラミックオンセラミックTHAは破損,脱転の頻度が高いため推奨されない.


背景
THAの摺動面におけるセラミックの利点としては,表面を平滑に加工できること,硬性が高く,セメント粉や金属粉などのthird bodyによる傷が生じにくいことなどがあげられる.また,セラミックの摩耗粉に対する炎症細胞反応は乏しいとされている.これらから,セラミックを使用することにより,摩耗の軽減や骨溶解の抑制,さらにはTHAの長期耐用性の向上が期待されている.1970年フランスでBoutinによりTHAに臨床使用されたことから始まり,初期においては,セラミック一体型(モノブロック型)ソケットがセメント非使用またはセメント使用で固定されていた.しかし初期固定性が不良であるとする臨床結果もみられ,現在は金属ソケットにセラミックライナーを嵌合させたソケットの使用が多い.
セラミックライナーの固定法においても,セラミックライナー嵌合型以外に,セラミックライナー辺縁とネックのインピンジメント防止などを目的としたポリエチレンライナー介在型や金属ライナー介在型などがある.


解説
セラミック摺動面材料を使用する際の重要な合併症はセラミック破損であるが,1980年代後半以降セラミック材料(粒子径,純度)や骨頭形状の改良,適切なテーパー嵌合手技などの認識の普及に伴い,セラミック骨頭はおおむね0.1%以下の低い破損率が報告されるようになっている(HF11791).セラミックオンセラミック関節摺動面の摩耗軽減効果に関しては,摘出されたインプラントの解析により摩耗量が抑制されていることは報告されているが,X線像などを用いた生体での摩耗評価に基づいて,他の摺動面素材を用いたTHAに比べ摩耗量が抑制されたとするエビデンスは得られていない.
セラミックオンセラミックTHA導入初期に使用されたセラミックモノブロック型ソケットでは初期固定性が不良であるとする臨床結果がみられる(HF10523).
セラミックライナー嵌合型のセラミックオンセラミックTHAでは術後5〜8年経過時の良好な中期臨床成績が報告されている(HF10613HF11796HF11817HF11901).しかし,術後10年以上経過時の臨床成績のエビデンスは得られておらず,セラミック摺動面の摩耗特性やセラミック破損の危険性を判定するには追跡期間が不十分と考え,セラミックライナー嵌合型THAの推奨GradeはIとした.一方,ポリエチレンライナーを介在させたセラミックオンセラミックTHAでは,比較的短期にセラミックライナーの破損・脱転の障害が報告されており(HF11813),その使用は推奨されない.


サイエンティフィックステートメント
  • セラミックモノブロック型ソケットのセラミックオンセラミックTHAの術後8〜19年の臨床成績で,耐用性と骨溶解反応の発生頻度に異なる中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 金属ソケットにセラミックライナー嵌合型のセラミックオンセラミックTHAの術後5〜8年の良好な臨床成績を示す中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • ポリエチレンライナーを介在させたアルミナセラミックオンセラミックTHAでセラミック骨頭破損およびセラミックライナーの破損・脱転のリスクが高いとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).


エビデンス
  • アルミナセラミック骨頭を用いた4,341関節のTHAの破損頻度を調査した.アルミナセラミックソケット使用例(2,693関節)の平均経過観察期間は11年(4ヵ月〜20年),ポリエチレンまたはcarbon fiber reinforced triazinソケット使用例(1,464関節)の平均経過観察期間は6年(4ヵ月〜11年)であった.mushroom型骨頭の破損頻度は0.4%,ボール型骨頭の破損頻度は0.06〜0.07%と,ボール型骨頭の破損の危険性はきわめて低かった(HF11791, EV level-IV).
  • Mittelmeier ceramic prosthesisを用いたセメント非使用THAの80例93関節における術後平均106ヵ月(60〜132ヵ月)の臨床成績およびX線学的成績を検討した.ソケット,ステムともにmechanical failure rateが高かったが(21.5%),骨溶解を生じた症例はなかった(HF10523, EV level-IV).
  • ソケットの表面加工が異なる2種類の金属ソケットとセラミックライナーからなるセラミックオンセラミックTHA 201例222関節と,メタルオンポリエチレン関節摺動面を用いたTHA 104例106関節の平均経過観察期間5年(1〜86ヵ月)の成績を比較した.セラミックオンセラミック関節摺動面使用群は,メタルオンポリエチレン関節摺動面使用群と比較して臨床評価では同等であったが,再置換が必要であった症例やカップ周囲骨透亮像を呈した症例は有意に少なかった(HF10613, EV level-IV).
  • セラミックオンセラミックTHAにおいて,Trident acetabular systemを使用した194例209関節とAlumina ceramic bearing design(ABC)を使用した201例222関節を比較した.平均経過観察期間は,Trident群50.5ヵ月,ABC群71.0ヵ月であった.60ヵ月でのTrident群,ABC群とも生存率は98.1%でTrident群とABC群では生存率に有意差はなかったが,Trident群におけるチタンスリーブ内のアルミナセラミックインサートではチッピングを生じず,チッピングを解決する手段として有効であった(HF11796, EV level-IV).
  • 55歳以下の活動的な症例に対する,金属ソケットとセラミックライナーを用いたハイブリッドセラミックオンセラミックTHA62例71関節の平均8年の成績を検討した.再置換をエンドポイントとした場合の9年生存率は93.7%(87.7〜99.7%)と,活動性の高い症例における中期成績は満足し得る成績であった(HF11817, EV level-IV).
  • セラミックライナー嵌合型のセラミックオンセラミックTHAを施行された65歳以下の79例で平均経過観察期間68ヵ月(60〜78ヵ月)の術後評価を行った.ソケットやステムの移動,骨溶解反応の発生は認められず,良好な臨床評価が得られていた(HF11901, EV level-IV).
  • ポリエチレンライナーを介在させたセラミックオンセラミックTHA329例367関節の平均経過観察期間46.5ヵ月(36〜72ヵ月)の多施設研究を行った.2関節は術後7ヵ月,8ヵ月でセラミック骨頭のfractureを,4関節は術後平均36.8ヵ月(16〜58ヵ月)でセラミックライナーの破損・脱転を呈した(HF11813, EV level-IV).
  • セラミックモノブロック型ソケット(Ceraver社製)を用いたアルミナセラミックオンセラミックTHAの最短18.5年の経過観察の結果を調査した.臼蓋側・大腿骨側ともセメント使用固定は85関節,両側ともセメント非使用固定は29関節,大腿骨側のみセメント使用固定は4関節であった.20年時の生存率は再置換をエンドポイントとするとセメント非使用ソケットで85.6%,セメント使用ソケットで61.2%,セメント非使用ステムで84.9%,セメント使用ステムで87.3%であった.臼蓋側の年間摩耗率は0.025mm未満と少なく,骨溶解反応の発生は限局していた(HF11811, EV level-IV).
  • Ceraver OstealセラミックオンセラミックTHA 255例の平均経過観察期間5.3年の調査では,セメント使用ソケットを用いた143例中16例(11%),セメント非使用ソケットを用いた112例中7例(7%)に再置換術が施行された.摩耗に起因すると考えられる骨溶解反応を認めた症例はなかった(HF10504, EV level-IV).
  • セラミックオンセラミックTHAでのストレスの増加によって,術後ソケットの移動が増加するかどうかを,porous coated hemispherical titaniumソケットにセラミックオンセラミック摺動面を使用した31関節(CE群)とメタルオンポリエチレン摺動面を使用した30関節(PE群)においてradiostereometric analysis(RSA)評価で比較した.術後2年時,ソケットの移動は3方向で同等で(CE群0.07〜0.40mm,PE群0.05〜0.31mm),3つの軸周囲の回旋についても同等であり(CE群:0.31〜0.92°,PE群0.57〜1.40°),ソケットの固定性は同等に安全と考えられた(HF11900, EV level-IV).
  • 同じチタン性金属ソケットにセラミックオンセラミック摺動面を使用した15関節とメタルオンメタル摺動面を使用した13関節で,術後1年までの血清アルミニウム,コバルト濃度の変化を比較した.セラミックオンセラミック摺動面使用THAでは血清アルミニウムおよびコバルトの上昇を呈さなかった(HF11903, EV level-IV).


文献

1) HF11791 Fritsch EW, Gleitz M. Ceramic femoral head fractures in total hip arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 1996;(328):129-36.
2) HF10523 Huo MH, Martin RP, Zatorski LE, Keggi KJ. Total hip replacements using the ceramic Mittelmeier prosthesis. Clin Orthop Relat Res. 1996;(332):143-50.
3) HF10613 D'Antonio J, Capello W, Manley M, Naughton M, Sutton K. Alumina ceramic bearings for total hip arthroplasty: five-year results of a prospective randomized study. Clin Orthop Relat Res. 2005;(436):164-71.
4) HF11796 D'Antonio JA, Capello WN, Manley MT, Naughton M, Sutton K. A titanium-encased alumina ceramic bearing for total hip arthroplasty: 3- to 5-year results. Clin Orthop Relat Res. 2005;441:151-8.
5) HF11817 Bizot P, Hannouche D, Nizard R, Witvoet J, Sedel L. Hybrid alumina total hip arthroplasty using a press-fit metal-backed socket in patients younger than 55 years. A six- to 11-year evaluation. J Bone Joint Surg Br. 2004;86(2):190-4.
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8) HF11811 Hamadouche M, Boutin P, Daussange J, Bolander ME, Sedel L. Alumina-on-alumina total hip arthroplasty: a minimum 18.5-year follow-up study. J Bone Joint Surg Am. 2002;84-A(1):69-77.
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11) HF11903 Grübl A, Weissinger M, Brodner W, Gleiss A, Giurea A, Gruber M, Pöll G, Meisinger V, Gottsauner-Wolf F, Kotz R. Serum aluminium and cobalt levels after ceramic-on-ceramic and metal-on-metal total hip replacement. J Bone Joint Surg Br. 2006;88(8):1003-5.


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