ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第6章 人工股関節全置換術(THA)


Research Question 6
セメント非使用THAの早期荷重は有用か

推奨
Grade B セメント非使用THAで早期荷重を行うことは,深部静脈血栓症の発生頻度を下げ,入院期間を短縮させることができ,有用である.


解説
セメント使用THAにおいては,通常早期荷重が行われているが,近年,セメント非使用THAにおいても,術後早期の荷重が一般的に行われつつある.現在のところ,早期荷重を行うことにより術後成績が向上するというエビデンスはないものの,早期荷重群では深部静脈血栓症のリスクも低く,入院期間も短縮できるとする中等度のエビデンスが複数ある.


サイエンティフィックステートメント
  • セメント非使用THA術後すぐに全荷重した群と,術後6週部分荷重をした群で,ステムの沈下をradiostereometric analysis(RSA)により比較した報告では,両群間に有意差はなかった.早期荷重は固定性に影響しないとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 早期荷重において,入院期間の短縮および術後歩行能力獲得までの日数の短縮が得られるという中等度のエビデンスがある(EV level-III).
  • 免荷群において,深部静脈血栓症の出現率が有意に高かったという中等度のエビデンスがある(EV level-II).


エビデンス
  • セメント非使用THAを施行した49例において,術後6週免荷群では早期荷重群と比較し,深部静脈血栓症の出現率が有意に高かった.セメント非使用THA群とハイブリッドTHA群において深部静脈血栓症の出現率に有意な差はなかった(HF11793, EV level-II).
  • 術後翌日より全荷重を許可した両側同時THA群(早期荷重群)14例28関節と,術後6週間免荷した片側THA群(免荷群)28例28関節とを比較し,早期荷重がセメント非使用ステムに及ぼす影響を検討した.免荷群に比べて,早期荷重群において術後6週の時点で有意にステムの沈下を認めた.しかし,それ以上の進行はなく術後2年で両群ともに満足な結果が得られた(HF11792, EV level-IV).
  • セメント非使用THAを施行した33例37関節について,術後2日より全荷重を許可した群と,術後3週より部分荷重を開始し,術後6週で全荷重を許可した群について比較検討を行った.臨床評価およびX線所見上での有意な差は認めなかったが,平均在院日数は早期荷重群で30.1日,免荷群で46.7日と,有意に早期荷重群の在院日数が短縮していた.早期荷重群では平均5.8日,免荷群では平均44.8日で一本杖歩行が可能になった(HF10743, EV level-IV).
  • 65歳以下でセメント非使用ステムを用いてTHAを施行した23例(3例は脱落)において,術後すぐに全荷重を許可した群と術後3ヵ月間免荷(10%部分荷重は許可)した群とを比較した.術後2年における臨床成績ではほとんど差を認めなかった(HF10112, EV level-IV).
  • 手術時年齢が60歳以上でセメント非使用ステムを用いてTHAを施行した変形性股関節症患者71例85関節を,臼蓋骨移植を併用せず術直後より全荷重を許可した早期荷重群と,臼蓋骨移植を併用し,術後6週間免荷した免荷群に分けた.結果として,早期荷重群,免荷群ともにすべての症例においてbone ingrowthを認めた(HJ11436, EV level-IV).
  • セメント非使用THA 57例の部分荷重期間を,クリティカルパスを用いて段階的に短縮したところ,臨床成績は問題なく,部分荷重期間および術後入院期間の短縮が可能であり,有用な方法であった(HJ10950, EV level-III).
  • 術後全荷重群12関節と術後6週部分荷重群13関節について,ステムの沈下をRSAで6ヵ月まで計測し,2群間で比較した.結果は両群間に有意差なく,セメント非使用ステムは,術後すぐに全荷重しても問題がなかった(HF10612, EV level-IV).


文献

1) HF11793 Buehler KO, D'Lima DD, Petersilge WJ, Colwell CW Jr, Walker RH. Late deep venous thrombosis and delayed weightbearing after total hip arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 1999;(361):123-30.
2) HF11792 Rao RR, Sharkey PF, Hozack WJ, Eng K, Rothman RH. Immediate weightbearing after uncemented total hip arthroplasty. Clin Orthop Relat Res. 1998;(349):156-62.
3) HF10743 Kishida Y, Sugano N, Sakai T, Nishii T, Haraguchi K, Ohzono K, Yoshikawa H. Full weight-bearing after cementless total hip arthroplasty. Int Orthop. 2001;25(1):25-8.
4) HF10112 Bodén H, Adolphson P. No adverse effects of early weight bearing after uncemented total hip arthroplasty: a randomized study of 20 patients. Acta Orthop Scand. 2004;75(1):21-9.
5) HJ11436 大原英嗣, 中島幹雄, 中島保倫,朝子晃憲,阿部宗昭.HAコートセメントレスステムを用いた人工股関節置換術における荷重時期の検討 手術時60歳以上の症例について.日本人工関節学会誌.2004;34:79-80.
6) HJ10950 中村 茂, 松田健太, 新井規之,脇本信博,松下 隆.クリティカルパスを用いたセメントレス人工股関節術後部分荷重期間の段階的短縮.整形外科.2003;54(11):1465-8.
7) HF10612 Bottner F, Zawadsky M, Su EP, Bostrom M, Palm L, Ryd L, Sculco TP. Implant migration after early weightbearing in cementless hip replacement. Clin Orthop Relat Res. 2005;(436):132-7.


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