ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第6章 人工股関節全置換術(THA)


Research Question 3
セメント非使用THAの長期にわたる治療成績は

推奨
Grade B セメント非使用THAの10~15年のインプラント生存率は,ソケットが69~100%,ステムが88~100%で,使用機種やインプラントの表面処理により成績のばらつきがみられる.


解説
セメント非使用THAの歴史は古く,その固定においてさまざまな工夫が行われてきた.ステム側については,ステム表面に処理を施さずに,単に髄腔に打ち込んで固定するタイプや,表面処理を行って骨-インプラント間に生物学的な固着を図る方法がある.形態別にはテーパー状ステム,円柱状ステム,アナトミックステムなどがある.一方,ソケット側においては,ねじ込み式ソケットや半球型(hemispherical)ソケットが使用されてきた.
セメント非使用THAの成績については,その固定方法がさまざまであるため,ここでは,その主な機種の生存率について臼蓋側,大腿側の成績に分けて解説した.なお,各機種の略語については後述している.


サイエンティフィックステートメント
■臨床成績(再置換をエンドポイントとした生存率)
1)臼蓋側コンポーネント
  • ねじ込み式ソケットの生存率についてはM/Hで10年71.4~90%(EV level-IV),CLS,Zweymüllerで12~15年69~84%(EV level-IV)であり,半球状ソケットの生存率についてはH/Gで10~15年94~100%(EV level-IV),Duralocで10年88%(EV level-IV)であったとする中等度のエビデンスがある.
2)大腿側コンポーネント
  • テーパー状ステムの生存率についてはM/Hで10年97.5~100%(EV level-IV),CLS,Zweymüllerで12~15年92~97%(EV level-IV),Omnifitで14年97%(EV level-IV),円柱状ステムの生存率についてはAMLで10~15年99.4~100%(EV level-IV)であり,アナトミックステムの生存率についてはPCAで10~14年90.9~96%(EV level-IV),Anatomicで10年100%(EV level-IV),Lübeckで11~16年88~96%(EV level-IV)であったとする中等度のエビデンスがある.
3)その他
  • ねじ込み式ソケットの成績は不良であるという中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • チタン合金製骨頭の成績は不良であるという中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • HAコーティングステムの成績は良好であるが,ポリエチレン摩耗による骨溶解は防げないという中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 大腿髄腔占拠率が高いと皮質肥厚およびストレスシールディングが生じ,骨皮質萎縮と関係しているという中等度のエビデンスがある(EV level-IV)が,臨床成績を悪化させるという明確なエビデンスはない.


エビデンス
  • Mallory Headセメント非使用テーパー状ステム307関節の10年生存率(再置換をエンドポイント)は99%であった.空気中γ線照射ポリエチレンソケットとチタン合金製骨頭のため臼蓋側の10年生存率は90%にとどまっていた(HF10577, EV level-IV).
  • Zweymüllerセメント非使用THA 211関節の11年生存率(非感染性弛みに対する再置換術をエンドポイント)は96%で,いずれも臼蓋側の再置換であり,ステムの再置換はなかった.摩耗は疼痛,移動,骨透亮像,骨溶解とは関係していなかった(HF10897, EV level-IV).
  • CLSステムの10~15年経過観察を行った297関節では,12年累積生存率(再置換をエンドポイント)は92%で,特に非感染性弛みのみを対象とすると13年累積生存率は95%と良好であった.ただし,同時に使用した臼蓋ソケットはねじ込み式を使用しており,再置換は78関節で,さらに32関節で再置換が予定されていた(HF11088, EV level-IV).
  • H/Gソケットの65関節,平均経過観察期間12.3年の結果で,1関節は頻回脱臼で再置換したが,骨透亮像は全例2mm未満,軽微な骨溶解3関節に認めたのみで,生存率(再置換をエンドポイント)は98.5%と良好であった(HJ10393, EV level-IV).
  • AML型ステムの術後10年以上(平均11年10ヵ月)経過観察例60例において,臼蓋側は生存率(再置換をエンドポイント)88%,大腿骨側は100%であった.ストレスシールディングによる大腿骨骨萎縮進行が最終経過観察時52%にみられた(HJ10818, EV level-IV).
  • 10~14年経過観察できたOmnifit HAコーティングステム(45歳以上229関節,45歳未満41関節)の成績を調査した.近位骨溶解は若年に多い傾向(45歳未満が48%,45歳以上が38%)で,ステム再置換は7関節に行われた.ステムの力学的破綻は45歳未満2.4%,45歳以上0.4%と比較的良好だが,ポリエチレン摩耗および骨溶解が多かった.ソケット再置換は39関節と多かった(45歳未満のうち10関節,45歳以上のうち100関節はねじ込み式)(HF10581, EV level-IV).
  • AML型THA215例223関節,平均経過観察期間13.4年で,再置換は28例39関節で行われた.大腿骨側骨溶解は165関節中44関節に確認され,出現時期は術後7.4年,臼蓋側骨骨溶解は165関節中27関節に確認され,出現時期は術後8.7年であった.15年生存率(非感染性弛みによる再置換をエンドポイント)はステム98.9%,臼蓋側95.3%で,THA全体での15年生存率(原因を問わない再置換をエンドポイント)は81.2%であった(HF11925, EV level-IV).
  • PCAによるTHA 279例311関節について10~14年(平均12年)の経過では,64例が死亡,17関節が再置換を受けた.生存率は再置換をエンドポイントとして14年90%±5.4%で,Harris hip scoreは85±14点であった.“stable fixation”はソケット83%,ステム88%であった.男性は女性より有意に骨溶解が多く,32mm骨頭は26mm骨頭よりも骨溶解が多かった(HF11924, EV level-IV).
  • Anatomic cementlessステム+H/G II 92関節の10年の経過観察では,ステムの再置換はなく,ソケットに2例の再置換があった.生存率(再置換あるいは弛みをエンドポイント)は10年96.4%で骨溶解は大腿側で5%,臼蓋側で16%に出現した(HF11926, EV level-IV).
  • Lübeck型THA平均11年5ヵ月,51関節の生存率(再置換をエンドポイント)は96%で,骨溶解がステム側12%にみられ,ステム破損が2関節あった(HJ10821, EV level-IV).

【略語】
AML:Anatomical Medullary Locking
CLS:Cemetless Spotorno
H/G:Harris Galante
M/H:Mallory Head
PCA:Porous Coated Anatomic



文献

1) HF10577 Bourne RB, Rorabeck CH, Patterson JJ, Guerin J. Tapered titanium cementless total hip replacements: a 10- to 13-year followup study. Clin Orthop Relat Res. 2001;(393):112-20.
2) HF10897 Vervest TM, Anderson PG, Van Hout F, Wapstra FH, Louwerse RT, Koetsier JW. Ten to twelve-year results with the Zweymüller cementless total hip prosthesis. J Arthroplasty. 2005;20(3):362-8.
3) HF11088 Aldinger PR, Breusch SJ, Lukoschek M, Mau H, Ewerbeck V, Thomsen M. A ten- to 15-year follow-up of the cementless spotorno stem. J Bone Joint Surg Br. 2003;85(2):209-14.
4) HJ10393 西原洋彦,柴 伸昌,穐吉 真,冬賀秀一,加藤文雄.セメントレス人工股関節置換術の寛骨臼側の長期成績.Hip Joint. 2002;28:391-3.
5) HJ10818 名越 智,高田潤一,桑原弘樹,加谷光規,小幡浩之,山下敏彦,久木田隆,皆川裕樹.【セメントレス人工股関節は20年をこえたか】AMLセメントレス人工股関節置換術の長期成績.骨・関節・靱帯.2004;17(2):89-95.
6) HF10581 Capello WN, D'Antonio JA, Feinberg JR, Manley MT. Hydroxyapatite coated stems in younger and older patients with hip arthritis. Clin Orthop Relat Res. 2002;(405):92-100.
7) HF11925 Engh CA Jr, Claus AM, Hopper RH Jr, Engh CA. Long-term results using the anatomic medullary locking hip prosthesis. Clin Orthop Relat Res. 2001;(393):137-46.
8) HF11924 Kawamura H, Dunbar MJ, Murray P, Bourne RB, Rorabeck CH. The porous coated anatomic total hip replacement. A ten to fourteen-year follow-up study of a cementless total hip arthroplasty. J Bone Joint Surg Am. 2001;83-A(9):1333-8.
9) HF11926 Archibeck MJ, Berger RA, Jacobs JJ, Quigley LR, Gitelis S, Rosenberg AG, Galante JO. Second-generation cementless total hip arthroplasty. Eight to eleven-year results. J Bone Joint Surg Am. 2001;83-A(11):1666-73.
10) HJ10821 西塔 進,渋谷高明,太田信彦,ほか.【セメントレス人工股関節は20年をこえたか】セメントレスLubeck人工股関節の長期成績.骨・関節・靱帯.2004;17(2):111-6.


書誌情報