ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第6章 人工股関節全置換術(THA)


Research Question 2
セメント使用THAの長期にわたる治療成績は

推奨
Grade B セメント使用THAのインプラント生存率は,10〜15年で85〜100%,20〜25年で60〜87%であり,セメント手技や使用機種などにより成績のばらつきがある.


解説
現在行われているセメント使用THAの歴史は,1962年のCharnley型THAから始まったといっても過言ではない.現在のセメント使用THAの多くは,金属骨頭とポリエチレンソケットの組み合わせであり,ソケット側に関しては,Charnley型THAで使用され始めたポリエチレンのみの半球状ソケットが主流である.ステムに関しては,Charnley型をはじめ,形状や表面加工の異なるさまざまな機種が使用されている.また,セメント充填手技に関しては,初期Charnley型THAで用いられた用手的充填法(第一世代セメント充填法)を基本とし,その後髄腔プラグ,セメントガン,フランジ付きソケットを用いるなどの方法(第二世代セメント充填法),セメント混合法の改善,セントラライザーの使用など(第三世代セメント充填法)の改良が加えられている(HJ11225).したがってセメント使用THAの臨床成績を検討する際には,使用機種の形状や表面加工,セメント充填手技などを念頭におく必要がある.


サイエンティフィックステートメント
1)臨床成績(再置換をエンドポイントとした生存率)
  • Charnley型THAの場合,生存率は,10〜15年で85〜93%(EV level-IV),20年で60〜80%(EV level-IV),25年で77〜86.5%(EV level-IV)であったとするいずれも中等度のエビデンスがある.ソケットのみの生存率は10〜15年で78〜95%であり,ステムのみの生存率は10〜16年で70〜100%(EV level-IV)であったとする中等度のエビデンスがある.
  • Charnley型THA以外のセメント使用THAの生存率は,10〜15年で89.9〜100%(EV level-IV)であり,臨床成績は機種による違いがある(EV level-IV)という中等度のエビデンスがある.
2)セメント充填手技の比較
  • 第一世代セメント充填手技での弛みをエンドポイントとした生存率は10年75%,15年63%であったのが,第二世代セメント手技にすると10年91%と改善がみられたという中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
3)表面加工の比較
  • セメント使用ステム表面が粗なものより,平滑なものが成績良好であるという中等度のエビデンスがある(EV level-IV).また,Exeter型においてマット表面加工では弛みが多く,ポリッシュ表面加工においては弛みが生じなかったという中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
4)その他の成績不良因子
  • 臼蓋ソケットの外側設置と,外側設置でない高位設置,ポリエチレンの高摩耗,臼蓋手術の既往,CharnleyカテゴリーがBあるいはC,男性,薄いポリエチレン,ステムの内反位設置,若年者,atrophic typeの股関節症などが成績不良因子であるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).


エビデンス
  • 術後10年以上(平均13.9年)経過した121例135関節のCharnley THAにおいて,セメント充填手技の違いによる相違を検討した.弛みをエンドポイントとした生存率は,第一世代で10年75%,15年63%であったのが,第二世代,第三世代で10年84%,10年91%と術式の改善で弛みの改善を認めた(HJ11225, EV level-IV).
  • Charnleyセメント使用THAの長期成績は日米の比較では中期では日本のほうが劣っていたが,長期では16年時臼蓋側生存率(弛みをエンドポイント)は68.2%(アメリカ),76.5%(日本)と逆転し,大腿側生存率(弛みをエンドポイント)はいずれも90.4%と同等であった(HF10868, EV level-IV).
  • Charnley THA施行25年以上経過した1,689例2,000関節において,1,228例が死亡,461例が生存していた.25年の生存率は何らかの手術をエンドポイントとして,77.5%,再置換あるいは抜去をエンドポイントとして80.9%,非感染性弛みによる手術をエンドポイントとして86.5%で特に40歳未満では68.7%,80歳以上では100%であった.男性は女性に比べて2倍の率で非感染性弛みが多かった(HF11922, EV level-IV).
  • チタン性セメント使用ステム250関節の固定性は良好で10年経過後もステムの沈下はなく,11年での生存率は97%であった(HF10744, EV level-IV).
  • ノーマライズド型セメント使用THA 215関節の成績は,これまでの第一,第二世代のセメントステムの成績と比較しても遜色なかった.15年の非感染性弛みは3.9%で,ステム内反例を除くと1.6%であった(HF10856, EV level-IV).
  • Harris Design-2ステムを用いたセメント使用THA 256関節を第二世代セメント手技で行った術後10〜20年(中央値15.4年)の結果,15年生存率は非感染性弛みをエンドポイントとして全体89.9%,臼蓋90.8%,ステム92.2%であった.X線学的破綻をエンドポイントとして全体で82.5%,臼蓋85.6%,ステム90.1%であった.50歳未満はいずれの生存率も低かった(HF11923, EV level-IV).
  • スウェーデンにおける全国調査の結果,THA 92,675関節中,変形性股関節症に対してセメント使用THA 71,142関節,セメント非使用THA 1,303関節が行われ,また,調査期間中,4,858関節に再置換が施行された.セメント使用THAのうち,Charnley,Lubinus,computer assisted designは成績良好であった(各々10年で92%).男性,若年,インプラントの種類が再置換率に影響していた.セメント手技の改善が成績を高めた(HF10063, EV level-IV).
  • セメント使用ステムについて,表面加工が平滑なもののほうが,粗のものより10年生存率が良好であった(95%に対し,70%).なお,ソケットの10年生存率はいずれも95%であった(HF10013, EV level-IV).
  • Exeterセメント使用THA 80関節で6〜13年経過したものを表面加工,形状の違いによる3種間(ポリッシュ表面モノブロック型,マット表面モノブロック型,ポリッシュ表面モジュラー型)で比較した.マット表面モノブロックのみ弛みを生じた.ポリッシュ表面モジュラー型とモノブロック型の変更では影響がなかった(HF11927, EV level-IV).
  • セメントTHA(Charnley主体)を施行したCrowe2臼蓋形成不全股117例145関節の14年経過観察の結果,再置換は臼蓋のみ3例,大腿のみ6例,両側14例であった.臼蓋の外側設置は臼蓋の非感染性弛み,再置換に関与し,外側設置でなくとも上方設置は大腿側の非感染性弛みおよび再置換に関与していた(HF10926, EV level-IV).
  • 臼蓋形成不全に対するセメントTHAの成績は,ソケットの弛みに大きく左右される.292関節の10年のインプラント生存率はTHA全体で88.3%,ソケット90.6%であった.20年のインプラント生存率はTHA全体で60.7%,ソケット63%であった.ソケットの弛みの危険因子として,以前の臼蓋の手術歴,offset-bore cup,若年者,ポリエチレン摩耗があげられた(HF10999, EV level-IV).
  • Charnley THAを施行した181例206関節を20年経過観察したところ,若年群(55歳未満)71例87関節,老年群(55歳以上)90例99関節が観察可能で,生存率は若年群で15年72%,20年60.7%,老年群で15年86.3%,20年76.2%であった.若年群の問題は非感染性弛みとステム破損で,老年群の問題は深部感染であった(HF10611, EV level-IV).
  • 126関節のCharnley型THAにおける10年経過後の再置換と生物学的骨反応との関係をみるとatrophic typeで弛みが多かった(27.3%)が,normotrophic typeでは少なかった(5.6%)(HF10462, EV level-IV).


文献

1) HJ11225 長谷川康裕.チャンレー型全人工股関節の長期成績―手術手技の相違による成績の比較.中部日本整形外科災害外科学会雑誌.2004;47(4):609-18.
2) HF10868 Kobayashi S, Eftekhar NS, Terayama K, Iorio R, Takaoka K. Primary Charnley total hip arthroplasty: a comparison of American and Japanese cohorts followed for 10-20 years. J Arthroplasty. 2001;16(3):340-50.
3) HF11922 Berry DJ, Harmsen WS, Cabanela ME, Morrey BF. Twenty-five-year survivorship of two thousand consecutive primary Charnley total hip replacements: factors affecting survivorship of acetabular and femoral components. J Bone Joint Surg Am. 2002;84-A(2):171-7.
4) HF10744 Eingartner C, Volkmann R, Winter E, Maurer F, Ihm A, Weller S, Weise K. Results of a cemented titanium alloy straight femoral shaft prosthesis after 10 years of follow-up. Int Orthop. 2001;25(2):81-4.
5) HF10856 Jaffe WL, Hawkins CA. Normalized and proportionalized cemented femoral stem survivorship at 15 years. J Arthroplasty. 1999;14(6):708-13.
6) HF11923 Sanchez-Sotelo J, Berry DJ, Harmsen S. Long-term results of use of a collared matte-finished femoral component fixed with second-generation cementing techniques. A fifteen-year-median follow-up study. J Bone Joint Surg Am. 2002;84-A(9):1636-41.
7) HF10063 Malchau H, Herberts P, Ahnfelt L. Prognosis of total hip replacement in Sweden. Follow-up of 92,675 operations performed 1978-1990. Acta Orthop Scand. 1993;64(5):497-506.
8) HF10013 Datir SP, Wynn-Jones CH. Staged bilateral total hip arthroplasty using rough and smooth surface femoral stems with similar design: 10-year survivorship of 48 cases. Acta Orthop. 2005;76(6):809-14.
9) HF11927 Middleton RG, Howie DW, Costi K, Sharpe P. Effects of design changes on cemented tapered femoral stem fixation. Clin Orthop Relat Res. 1998;(355):47-56.
10) HF10926 Pagnano W, Hanssen AD, Lewallen DG, Shaughnessy WJ. The effect of superior placement of the acetabular component on the rate of loosening after total hip arthroplasty. J Bone Joint Surg Am. 1996 Jul;78(7):1004-14.
11) HF10999 Chougle A, Hemmady MV, Hodgkinson JP. Long-term survival of the acetabular component after total hip arthroplasty with cement in patients with developmental dysplasia of the hip. J Bone Joint Surg Am. 2006;88(1):71-9.
12) HF10611 Hartofilakidis G, Karachalios T, Karachalios G. The 20-year outcome of the charnley arthroplasty in younger and older patients. Clin Orthop Relat Res. 2005;(434):177-82.
13) HF10462 Hernandez-Vaquero D, Guerra-Garcia C, Cima Suarez M. Acetabular loosening in cemented arthroplasty of the hip. Relationship with atrophic arthrosis. Chir Organi Mov. 1991;76(4):327-33.


書誌情報