ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第5章 関節温存手術と関節固定術


Research Question 6
変形性股関節症に対する筋解離術の治療効果は

推奨
Grade C 筋解離術は初期から末期までの変形性股関節症による疼痛の緩和に有効な術式である.


解説
変形性股関節症(股関節症)に対する筋解離術はBrandesにより始められ,1956年にVoss,1959年にO'Malleyが報告している.本術式は低侵襲で除痛効果が期待できる手術とされており,現在では主にO'Malley変法による筋解離術が行われている.わが国における本術式の長期成績はいくつか報告されているが,欧文論文による報告はMEDLINEが利用できる1966年以降認められない.


サイエンティフィックステートメント
  • 初期から末期までの股関節症の除痛効果が期待できるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).


エビデンス
  • 進行期・末期股関節症110例115関節に対するO'Malley変法の長期成績(平均経過観察期間11年)では,平均10.5年で20%の症例が人工股関節全置換術(THA)を施行されていた.日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hip score)は術前平均54.9点が術後5年で75.4点,術後10年70.9点.疼痛点は術前13.6点が術後5年で32.1点,術後10年で27.9点であった.40歳以上と以下での症例群間に成績の差はなかった(HJ10085, EV level-IV).
  • 初期・進行期・末期股関節症90例93関節に対するO'Malley変法の長期成績(平均経過観察期間20年)では,生存率は術後10年で90%,術後20年で71%であった.93関節中28関節でTHAなどの追加手術を施行されており,その時期は術後平均12年であった.術直後から1年で60%の症例で除痛効果を認め,平均14年で疼痛の再発を認めた.手術時年齢が高いほどJOA scoreによる歩行能力・日常生活動作の評価は低い傾向にあった(HJ11601, EV level-IV).
  • 進行期・末期股関節症21例27関節に対するO'Malley筋解離術の長期成績(平均経過観察期間15.4年)では,術後早期に関節裂隙の拡大を認めた症例およびacetabular depthが大きく,roof osteophyteが存在する症例では成績が良かった(HJ11314, EV level-IV).
  • 末期股関節症に対しO'Malley変法筋解離術を施行した30例30関節(手術時年齢23〜69歳)を筋解離群とし,両側股関節症の片側にTHAを施行し,対側を10年以上経過観察できた18例18関節を自然経過群としてX線学的な比較検討を行った.最終観察時と術前のCE角の変化および上方亜脱臼の程度を比較した結果,CE角の変化は筋解離群で有意に小さかった.筋解離術は前方と内側の拘縮を除去することで骨頭の亜脱臼を抑制し関節のリモデリングをもたらす(HJ11605, EV level-IV).
  • 筋解離術を施行した74例77関節を対象に,初期・進行期群(23関節)と末期群(54関節)の臨床評価とX線評価を行った.平均経過観察期間20年の報告.術後10年生存率は,初期・進行期群は83%,末期群は98%であった.THAへ移行しなかった症例では,JOA hip scoreは疼痛点数が高く除痛効果は良好に維持されている.しかし可動域点数は低く,さまざまな機能障害の原因となる.X線所見では初期・進行期群の多くは関節症の進行を認めたが,末期では広い接触面積を獲得し,良好な適合性を呈した症例が多かった(HJ11604, EV level-IV).


文献

1) HJ10085 富田泰次,金尾 豊,杉山 肇,ほか.オマリー筋解離術の長期成績.Hip Joint. 1995;21:227-32.
2) HJ11601 藤井克之,大谷卓也.変形性股関節症に対するオマリー変法筋解離術の長期成績.臨床整形外科.2003;38(10):1287-93.
3) HJ11314 渡部 亘,佐藤光三,斎藤晴樹,ほか.変形性股関節症に対する筋解離術の術後成績に関与する因子の検討.日本リウマチ・関節外科学会雑誌.1994;13(3):263-70.
4) HJ11605 大谷卓也,林 靖人,上野 豊,林 大,加藤 努,為貝秀明,藤井克之.末期股関節症に対する筋解離術後のX線学的長期経過―自然経過例との比較検討.臨床整形外科.2004;39(7):921-26.
5) HJ11604 大谷卓也,林 靖人,斉藤 充,加藤章嘉,上野 豊,藤井克之.変形性股関節症に対する筋解離術の長期成績―初期・進行期例と末期例の比較検討.臨床整形外科.2004;39(6):775-80.


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