ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第5章 関節温存手術と関節固定術


Research Question 4
変形性股関節症に対するChiari骨盤骨切り術の治療効果は

推奨
Grade C Chiari骨盤骨切り術は臼蓋形成不全を伴う変形性股関節症の症状緩和と病期進行予防に有効である.


解説
Chiari骨盤骨切り術は,関節包直上の高さで腸骨を直線状に切骨して股関節を含む末梢側を内方に移動させる手術であり,前股関節症から末期の変形性股関節症(股関節症)まで幅広い適応範囲がある.産道の狭少化が危惧されるため,若年女性への適応には慎重を要する.


サイエンティフィックステートメント
  • 術前の骨頭形状が成績に影響するとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 術前の臼蓋形成不全の程度が成績に影響を与えるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 若年者に対する本術式の成績は壮年期以降に比べて良好であるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 関節の内方化が成績に影響するとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 骨切りのレベルが成績に影響するとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 骨頭の外上方移動は成績に影響を与えるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).


エビデンス
  • 50歳以下の進行・末期股関節症に対しChiari骨盤骨切り術を施行した160例166関節,平均経過観察期間11.7年,平均手術時年齢40.4歳の成績(症例により外反・内反骨切り術追加).日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hip score)は,術前平均52点から最終調査時平均80点に改善した.術前より関節症が進行した症例は17関節(10%)であり,うち8関節で人工股関節全置換術(THA)を施行されていた(HJ10826, EV level-IV).
  • 臼蓋形成不全による股関節症に対しChiari骨盤骨切り術を施行した83例100関節(単独施行例80関節),平均経過観察期間15.5年,平均手術時年齢38歳の成績.疼痛は改善する場合が多いが,可動域は低下する傾向があった.内方化は成績に影響を与え,成績良好群では平均27.5mm,成績不良群では平均20.5mmであった.平均手術時年齢45歳以下の成績良好群は80%であり,45歳以上では50%であった.20%の症例が平均11.5年でTHAへ移行していた(HF11002, EV level-IV).
  • 前股関節症・初期股関節症と進行期股関節症91例103関節に対しChiari骨盤骨切り術を施行した(平均経過観察期間17.1年,平均手術年齢18.2歳,単独62関節).JOA hip score術前平均78.6が最終平均89.4,CE角術前平均-4.4°が29.4°,併用手術間にJOA hip scoreの差はなく,骨頭の側方・上方移動が大きいと成績が悪化した.単独例の生存率は10年で84.4%,20年で68.6%,併用手術群の生存率は10年で81.5%,20年で43.5%であった.術前病期・骨頭形状・骨切り高位が術後のX線評価と関連があった.進行期股関節症15例17関節(平均経過観察期間16.2年,平均手術年齢36.8歳,単独12関節)の成績では,JOA hip scoreは,術前平均63.2点が最終平均84.0点に改善した.THAへの移行例は12関節中4関節(うち2関節は16年後)にみられ,生存率は10年で88.2%,20年で72.2%であった(HF11066, EV level-IV).
  • De Mourgues and Patte分類のgrade 2〜4の股関節症に対するChiari骨盤骨切り術施行例82例89関節(平均経過観察期間13年,平均手術時年齢33.9歳)の成績.Merle d'Aubigné scoreでは,excellentが22関節,very goodが21関節,goodが17関節,fairが15関節,poorが11関節,badが3関節であった.THAへの移行をエンドポイントとした生存率は10年で84%,18年で68%であった(HF10588, EV level-IV).
  • Chiari骨盤骨切り術を施行した69例74関節に対する平均経過観察期間13年の長期成績.JOA hip score術前平均72点は最終観察時87点に改善.手術時進行期で骨頭形状が球形の症例は予後が悪く,関節裂隙狭小化をきたした.Chiari骨盤骨切り術は,初期の股関節症に対して10年以上にわたり良好な成績が得られていた.進行期症例でも骨頭形状が平坦であれば予後はよく,球形の骨頭症例では関節症変化が進行する可能性がある(HF11205, EV level-IV).
  • Chiari骨盤骨切り術を施行した130関節に対する平均経過観察期間22.3年の長期成績.平均22mmの内方化が得られ,骨切り部は113関節で適切であった.CE角は術前-12°が術後37.2°,Sharp角は術前48°が術後41°,acetabular head index(AHI)は術前51%が術後96.3%になった.Harris hip score(HHS)は,術前42.0点が術後67.5点に改善し,65関節は手術に満足,49関節は部分的に満足,16関節は不満足であった.追加手術を受けなかったのは80関節(第1群)で,50関節はTHAに移行していた(第2群).手術時年齢は第1群が24.2歳,第2群が33.7歳で,第1群の62関節は手術時にKellgren and Lawrence grade 1の股関節症か,関節症変化を認めなかった.第2群の42例はgrade 2 か3であった.術後良好な期間は,第1群で17.6年,第2群では11.1年であった(HF10438, EV level-IV).
  • 進行期股関節症に対してChiari骨盤骨切り術を施行した31例32関節の平均追跡期間11.2年の報告(3例のみ外反骨切り術を併用).HHSは,術前平均52点が最終調査時平均77点(疼痛点は術前20点が31点)に改善していた.HHS70点以下の3関節がTHAへ移行していた.生存率は10年で72%であった.臨床成績への影響因子は術前CE角,骨切りレベル,骨頭上方・側方移動であった.関節裂隙の消失していないCE角-10°以上程度の症例が良い適応といえる(HF10987, EV level-IV).
  • 前股関節症から初期股関節症(5例のみ進行期)に対してChiari骨盤骨切り術を単独で施行し,10年以上経過を追えた36例38関節の成績.術前CE角10°以上の症例は,有意に股関節症の進行を予防できた.術前Sharp角,AHIは術後成績に影響しなかった.84%の症例で股関節症の進行を防ぐことができた(HJ10573, EV level-IV).
  • Chiari骨盤骨切り術後20年以上経過した38例41関節において,大腿骨頭の上方移動と股関節症の進行の関連を調べた報告.平均追跡期間は前股関節症と初期股関節症が26.1年,進行期が23.0年.股関節症進行群では大腿骨頭の上方移動量が有意に大きかった(HJ10252, EV level-IV).
  • 前股関節症と初期股関節症に対してChiari骨盤骨切り術を施行した59例62関節において,大腿骨頭の外方移動量と股関節症の進行の関連を調べた(平均経過観察期間17.3年).術前前股関節症のほうが初期に比べてJOA hip scoreが高かった.骨頭形状は,角状のものが卵形と比較してJOA hip scoreが優れていた.股関節症進行群では大腿骨頭の外方移動量が有意に大きかった(HJ10303, EV level-IV).


文献

1) HJ10826 熊谷 優,大川孝浩,永田見生,ほか.50歳以下の進行期・末期変形性股関節症に対するChiari骨盤骨切り術.骨・関節・靱帯.2004;17(10):1107-11.
2) HF11002 Lack W, Windhager R, Kutschera HP, Engel A. Chiari pelvic osteotomy for osteoarthritis secondary to hip dysplasia. Indications and long-term results. J Bone Joint Surg Br. 1991;73(2):229-34.
3) HF11066 Ohashi H, Hirohashi K, Yamano Y. Factors influencing the outcome of Chiari pelvic osteotomy: a long-term follow-up. J Bone Joint Surg Br. 2000;82(4):517-25.
4) HF10588 Migaud H, Chantelot C, Giraud F, Fontaine C, Duquennoy A. Long-term survivorship of hip shelf arthroplasty and Chiari osteotomy in adults. Clin Orthop Relat Res. 2004;(418):81-6.
5) HF11205 Yanagimoto S, Hotta H, Izumida R, Sakamaki T. Long-term results of Chiari pelvic osteotomy in patients with developmental dysplasia of the hip: indications for Chiari pelvic osteotomy according to disease stage and femoral head shape. J Orthop Sci. 2005;10(6):557-63.
6) HF10438 Rozkydal Z, Kovanda M. Chiari pelvic osteotomy in the management of developmental hip dysplasia: a long term follow-up. Bratisl Lek Listy. 2003;104(1):7-13.
7) HF10987 Ito H, Matsuno T, Minami A. Chiari pelvic osteotomy for advanced osteoarthritis in patients with hip dysplasia. J Bone Joint Surg Am. 2004;86-A(7):1439-45.
8) HJ10573 西尾 真,安藤謙一,金治有彦,ほか.臼蓋形成術のEBM に基づいた適応限界 Chiari骨盤骨切り術の長期成績.Hip Joint. 2005;31:42-6.
9) HJ10252 大橋弘嗣,山野慶樹,廣橋賢次.Chiari手術後20年以上経過観察した症例のレ線変化.Hip Joint. 2000;26:31-4.
10) HJ10303 大橋弘嗣,山野慶樹,廣橋賢次.Chiari骨盤骨切り術の長期成績 特に大腿骨頭の移動に注目して.Hip Joint. 2001;27:1-5.


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