ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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第4章 保存療法


Research Question 4
変形性股関節症に対する薬物療法(非ステロイド性抗炎症剤)の治療効果は

推奨
Grade I 非ステロイド性抗炎症剤の長期的な病期進行予防効果に関しては不明である.
Grade A 非ステロイド性抗炎症剤は,疼痛緩和に有効である.


解説
  • 非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)内服により,変形性股関節症(股関節症)の疼痛緩和と日常生活動作の改善が得られる(HF10360HF10645HF10228).しかし,その有効性と消化管障害,肝機能・腎機能障害などの有害事象発生を考慮すると,慢性疾患である股関節症に対するNSAIDs投与は慎重にすべきである.股関節症に対して,有効性と安全性の面から考慮した場合,アセトアミノフェン,NSAIDsのなかで,特に推奨さる薬剤はない(HF10360HF10645HF10228).
  • NSAIDsの長期投与が股関節症の病期進行に及ぼす影響を検討した研究はほとんどなく,股関節症の病期進行を促進する可能性があるという報告(HF10366)が1件あるのみである.


サイエンティフィックステートメント
  • 股関節症の疼痛緩和に対して,NSAIDsはアセトアミノフェンより有効で,安全性に関しては差がないという質の高いエビデンスがある(EV level-Ia).
  • NSAIDsの有効性と安全性を考慮した場合,推奨される投与法はないという質の高いエビデンスがある(EV level-Ia).
  • NSAIDsは股関節症の進行を誘発する可能性があるという中等度のエビデンスがある(EV level-II).


エビデンス
  • 下肢変形性関節症(股,膝)に対するNSAIDs(COX-2選択的阻害剤を含む)とアセトアミノフェンの効果を比較したmeta-analysisでは,安静時痛,歩行時痛ともにNSAIDs投与群で有意な改善が認められた.NSAIDs投与群がアセトアミノフェン投与群より有害事象が多かったが,有意差はなかった(HF10360, EV level-Ia).
  • NSAIDsや鎮痛剤の有効性と安全性に関する43のRCTを用いたsystematic reviewでは,股関節症に対するNSAIDsの臨床試験は股関節症の定義と試験結果評価の標準化がなされていないことから,股関節症に対するNSAIDsの選択,投与について明白な推奨をすることができないと結論されている(HF10645, EV level-Ia).
  • 1,080例の下肢変形性関節症(股,膝)に対するセレコキシブ(COX-2選択的阻害剤)の効果をプラセボ,アセトアミノフェンと比較したRCTでは,有効性はセレコキシブ,アセトアミノフェン,プラセボの順で,安全性に関しては3剤の間で差を認めなかった(HF10228, EV level-Ib).
  • 1,695例の股関節症の進行に及ぼすNSAIDsの影響に関する検討では,ジクロフェナック180日以上服用例は30日未満服用例に比べて2.4倍進行のリスクが増加し,イブプロフェンでは1.2倍,ナプロキセンでは0.8倍,ピロキシカムでは1.7倍のリスク増加であった.したがって,NSAIDsは本疾患の進行を促進する可能性があるが,その機序は不明である(HF10366, EV level-II).


文献

1) HF10360 Lee C, Straus WL, Balshaw R, Barlas S, Vogel S, Schnitzer TJ. A comparison of the efficacy and safety of nonsteroidal antiinflammatory agents versus acetaminophen in the treatment of osteoarthritis: a meta-analysis. Arthritis Rheum. 2004;51(5):746-54.
2) HF10645 Towheed T, Shea B, Wells G, Hochberg M. Analgesia and non-aspirin, non-steroidal anti-inflammatory drugs for osteoarthritis of the hip. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD000517.
3) HF10228 Pincus T, Koch G, Lei H, Mangal B, Sokka T, Moskowitz R, Wolfe F, Gibofsky A, Simon L, Zlotnick S, Fort JG. Patient Preference for Placebo, Acetaminophen (paracetamol) or Celecoxib Efficacy Studies (PACES): two randomised, double blind, placebo controlled, crossover clinical trials in patients with knee or hip osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2004;63(8):931-9. Epub 2004 Apr 13.
4) HF10366 Reijman M, Bierma-Zeinstra SM, Pols HA, Koes BW, Stricker BH, Hazes JM. Is there an association between the use of different types of nonsteroidal antiinflammatory drugs and radiologic progression of osteoarthritis? The Rotterdam Study. Arthritis Rheum. 2005;52(10):3137-42.


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