ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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第4章 保存療法


Research Question 2
変形性股関節症に対する運動療法の治療効果は

推奨
Grade I 運動療法の長期的な病期進行予防効果に関しては不明である.
Grade A 運動療法は短期的な疼痛,機能障害の改善に有効である.


解説
変形性股関節症(股関節症)に対する運動療法は,疼痛緩和,筋力増強による機能障害の改善,関節の安定性や可動域の改善を目的として行われる.運動療法は股関節症の疼痛,機能障害の改善に有効であるとする質の高いエビデンスが複数あるものの(HF11372HF11407HF10223HF10703),最適な運動療法のプログラムの内容と運動の頻度,強度,期間については不明である(HF10390).また,いずれも短期の経過報告であり,中・長期の報告は現時点でなされていない.


サイエンティフィックステートメント
  • 運動療法(筋力増強訓練,ストレッチ,機能訓練,水中歩行)は疼痛の改善,機能障害の改善に有効であるという質の高いエビデンスがある(EV level-IaIb).
  • 6〜12週の運動療法により疼痛,QOLが改善するが,その効果は経時的に減弱するという質の高いエビデンスがある(EV level-Ib).


エビデンス
  • 下肢変形性関節症201例(股71例,膝+股10例,膝119例)において,12週間の運動療法(理学療法士による個別の指導)は疼痛(VAS)と機能障害の改善に有効であった.また,その効果は股関節症および膝関節症の両者において同等であった(HF11372, EV level-Ib).
  • 55歳以上の股関節症109例において,8週間のフィットネス機器を使用した運動療法(週1回,1時間のグループ訓練)とホームエクササイズは,運動療法終了時および3ヵ月後の疼痛を改善し,運動療法終了時の股関節機能,機能障害を改善した(HF11407, EV level-Ib).
  • 50歳以上の下肢変形性関節症105例(股51関節,膝126関節)において,6週間(週3回)のジムでの訓練と水中訓練とを比較した.前者では両側の,後者では片側の大腿四頭筋筋力の有意な増加を認めた.水中訓練を行ったものは対照に比べ,歩行距離とSF-12の身体機能が改善していた.ジムでの訓練を行ったものは対照に比べ歩行速度,自己満足度が大きかった(HF10223, EV level-Ib).
  • 60歳以上の下肢変形性関節症213例(股161関節,膝256関節)において,1年間の水中訓練(少なくとも週2回,1時間)を行った.訓練終了時にはWOMACによる機能評価で疼痛が有意に改善したが,その6ヵ月後には効果が消失していた.また1年間の水中訓練により,身体機能の向上,医療経済学的な効果が得られた(HF10703, EV level-Ib).
  • 股関節症に対する運動療法に関してのsystematic reviewでは,筋力訓練,ストレッチ,機能訓練,ADL指導などは有効であるが,運動療法の適用法(個別,グループ訓練,あるいは水中訓練)に関する十分なエビデンスは得られていない(HF10390, EV level-Ia).
  • 60歳以上の下肢変形性関節症106例(股17例,膝53例,膝+股36例)で12ヵ月間の水中訓練(水泳インストラクターによる週2回,1時間ずつの指導)を行った.訓練終了時にはWOMACによる機能評価で身体機能と疼痛が有意に改善し,段昇降テストと股関節の可動域が有意に改善していた(HF10623, EV level-II).
  • 上記HF11372の研究の経過観察期間を延長したところ,運動療法の疼痛に対する効果は24週目では中等度以下に減弱し,36週目では消失していた(HF10214, EV level-Ib).
  • 股関節症患270例(412関節)に対して運動療法(スクワット,踏み台昇降,片脚起立,腹筋運動)を行い,1年以上継続した110例のうち効果が認められたのは65.4%であった.前股関節症と初期股関節症に比べ進行期・末期股関節症では効果が劣っていた.股関節外転筋力の増加が疼痛の改善と関連していた(HJ10483, EV level-IV).


文献

1)HF11372van Baar ME, Dekker J, Oostendorp RA, Bijl D, Voorn TB, Lemmens JA, Bijlsma JW. The effectiveness of exercise therapy in patients with osteoarthritis of the hip or knee: a randomized clinical trial. J Rheumatol. 1998;25(12):2432-9.
2)HF11407Tak E, Staats P, Van Hespen A, Hopman-Rock M. The effects of an exercise program for older adults with osteoarthritis of the hip. J Rheumatol. 2005;32(6):1106-13.
3)HF10223Foley A, Halbert J, Hewitt T, Crotty M. Does hydrotherapy improve strength and physical function in patients with osteoarthritis--a randomised controlled trial comparing a gym based and a hydrotherapy based strengthening programme. Ann Rheum Dis. 2003;62(12):1162-7.
4)HF10703Cochrane T, Davey RC, Matthes Edwards SM. Randomised controlled trial of the cost-effectiveness of water-based therapy for lower limb osteoarthritis. Health Technol Assess. 2005;9(31):iii-iv, ix-xi, 1-114.
5) HF10390 Smidt N, de Vet HC, Bouter LM, Dekker J, Arendzen JH, de Bie RA, Bierma-Zeinstra SM, Helders PJ, Keus SH, Kwakkel G, Lenssen T, Oostendorp RA, Ostelo RW, Reijman M, Terwee CB, Theunissen C, Thomas S, van Baar ME, van 't Hul A, van Peppen RP, Verhagen A, van der Windt DA; Exercise Therapy Group. Effectiveness of exercise therapy: a best-evidence summary of systematic reviews. Aust J Physiother. 2005;51(2):71-85.
6) HF10623 Lin SY, Davey RC, Cochrane T. Community rehabilitation for older adults with osteoarthritis of the lower limb: a controlled clinical trial. Clin Rehabil. 2004;18(1):92-101.
7)HF10214van Baar ME, Dekker J, Oostendorp RA, Bijl D, Voorn TB, Bijlsma JW. Effectiveness of exercise in patients with osteoarthritis of hip or knee: nine months' follow up. Ann Rheum Dis. 2001;60(12):1123-30.
8)HJ10483大橋弘嗣,松下直史,小池達也,高岡邦夫,森田光明,廣橋賢次.変形性股関節症に対する運動療法の中期成績.Hip Joint. 2003;29:663-7.


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