ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第4章 保存療法


Research Question 1
変形性股関節症に対する患者教育は有効か

推奨
Grade I 患者教育の長期的な病期進行予防効果に関しては不明である.
Grade A 患者教育は変形性股関節症の症状の緩和に対して有効であり,行うべきである.


解説
変形性股関節症(股関節症)における患者教育には,股関節の解剖や疾患の理解,日常生活動作の指導,杖や装の指導,電話相談などによる患者のバックアップ,および家庭での運動の指導などが含まれる.家庭での運動の導を運動療法と考えるならば,これを伴わない狭義の患者教育についての論文は少ない(HF11375).一方,運動の指導を含んだ広義の教育に関する論文は多数存在している(HF11382HF11405HF10585).患者教育は股関節症の症状緩和,特に疼痛の緩和に関して有効とする中等度以上のエビデンスを持った論文が多い.どの度まで行うかは別にして,少なくとも患者教育は行うべきである.問題点は,教育の方法やツールがさまざまで一されておらず,論文間での差異が存在することである.また,いずれも短期の経過報告であり,5年以上の中・期の報告は現時点ではなされていない.したがって,患者教育の長期的な有効性や病期の進行予防効果について確立してはいない.また,下肢変形性関節症として膝,股関節の両部位をあわせた報告が多く,股関節に限定すと症例数が少なくなるため今後の検討が待たれる.


サイエンティフィックステートメント
  • 患者教育を行った群は,行わなかった群より病識が向上したとする質の高いエビデンスがある(HF11375, EV level-Ib).
  • 患者教育を行った群は,行わなかった群より非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)使用量が減ったとする中等度のエビデンスがある(HF11382, EV level-II).
  • 患者教育を行った群は,行わなかった群より疼痛およびQOLが改善したとする中等度のエビデンスがある(HF11382HF11405, EV level-II).
  • 患者教育を行った群は,行わなかった群より有意に術前および術後の疼痛が少なかったとする中等度のエビデンスがある(HF10585, EV level-II).


エビデンス
  • 下肢変形性関節症(股,膝)252例を,無作為にコンピュータを用いた教育を行った126例と行わなかった126例に分け,8週の追跡調査を行った.WOMACによる評価で有意に差を認め,病識も改善し,NSAIDsも適切に使用できるようになっていた(HF11375, EV level-Ib).
  • 下肢変形性関節症(股,膝)105例を,無作為に運動も含めた健康教育を行った56例と行わなかった49例に分け,6ヵ月の追跡調査を行った.教育を受けた群のほうが有意に疼痛,BMI,QOLが改善していた(HF11382, EV level-II).
  • 下肢変形性関節症(股,膝)273例(64.6%は股関節症が存在)を,無作為に運動も含めた自己管理教育を行った149例と行わなかった148例に分け,3,21ヵ月の追跡調査を行った.教育を受けた群のほうが股関節のVASは小さかったものの有意差はなかった.一方,教育を受けた群のほうが有意にWOMACによる評価は良好であった(HF11405, EV level-II).
  • THA待機患者201例のうち了解の得られた100例を,無作為にリウマチ医,整形外科医,麻酔科医,理学療法士による2時間の教育を行った52例と行わなかった48例に分け,2年間の追跡調査を行った.両群間で退院までの期間や患者満足度には差を認めなかったが,教育を受けた群のほうが術前の不安,疼痛が有意に少なく,また術後の疼痛も有意に少なかった(HF10585, EV level-II).
  • 下肢変形性関節症2,957例(膝2,216例,股741例)を,無作為に患者教育のみ行った782例(膝585,股197),運動を処方した735例(膝550,股185),患者教育と運動を処方した680例[膝513,股167,投薬のみ行った760例(膝568,股192)]に分け,24週の追跡調査を行った.4群ともに治療開始前に比べて有意に疼痛,WOMACによる機能評価,QOLともに改善していた.4群間で差は認めなかった(HF10227, EV level-Ib).


文献

1) HF11375 Edworthy SM, Devins GM. Improving medication adherence through patient education distinguishing between appropriate and inappropriate utilization. Patient Education Study Group. J Rheumatol. 1999;26(8):1793-801.
2) HF11382 Hopman-Rock M, Westhoff MH. The effects of a health educational and exercise program for older adults with osteoarthritis for the hip or knee. J Rheumatol. 2000;27(8):1947-54.
3) HF11405 Heuts PH, de Bie R, Drietelaar M, Aretz K, Hopman-Rock M, Bastiaenen CH, Metsemakers JF, van Weel C, van Schayck O. Self-management in osteoarthritis of hip or knee: a randomized clinical trial in a primary healthcare setting. J Rheumatol. 2005;32(3):543-9.
4) HF10585 Giraudet-Le Quintrec JS, Coste J, Vastel L, Pacault V, Jeanne L, Lamas JP, Kerboull L, Fougeray M, Conseiller C, Kahan A, Courpied JP. Positive effect of patient education for hip surgery: a randomized trial. Clin Orthop Relat Res. 2003;(414):112-20.
5) HF10227 Ravaud P, Giraudeau B, Logeart I, Larguier JS, Rolland D, Treves R, Euller-Ziegler L, Bannwarth B, Dougados M. Management of osteoarthritis (OA) with an unsupervised home based exercise programme and/or patient administered assessment tools. A cluster randomised controlled trial with a 2x2 factorial design. Ann Rheum Dis. 2004;63(6):703-8.


書誌情報