ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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第3章 診断


Research Question 9
関節鏡検査では何が診断できるか

推奨
Grade B 変形性股関節症に対し関節鏡検査を行うことにより,関節軟骨の変性の程度,部位や範囲を診断できる.
Grade B 変形性股関節症に対し関節鏡検査を行うことにより,関節唇の断裂や変性の程度,部位や範囲を診断できる.


解説
関節鏡検査では荷重部の軟骨や関節唇の状態を観察することが主な検査目的となるが,鏡視可能な主な範囲は臼蓋荷重部,窩部や円靱帯の上方,骨頭荷重部および関節唇の前方,側方,後方である(HF10376).臼蓋と骨頭の軟骨に対しては変性の程度,部位や範囲を診断することが可能であり(HJ10048HF11467HJ11549),比較的軽微な変性も観察することができるため早期の変形性股関節症(股関節症)の診断にも有用である(HF11506).また,臼蓋側と骨頭側とでは骨変性の程度に差があるとする報告が多いが,いずれの変性が優位であるかは一定の見解はない(HJ10938).
関節唇の障害に対しても変性や断裂の程度,部位や範囲を確認する上で診断的価値があり(HJ10048HJ10044HJ11066HJ11549),関節唇の障害と疼痛との関連性も報告されている(HF10379).さらに,生検材料の検索も可能であるため鑑別診断の意味でも有用である(HF10378).ただし,関節鏡検査は侵襲的な面も考慮する必要があり,検査のみの目的で施行する場合は症例を選ぶ必要があると考えられる.


サイエンティフィックステートメント
  • 股関節症に伴う関節軟骨の変性の程度,部位や範囲を診断できるとする質の高いエビデンス1つと中等度のエビデンスが複数ある(EV level C-IbEV levelC-IIEV level C-III).
  • 股関節症に伴う関節唇の変性や断裂の程度,部位や範囲が診断可能であるとする質の高いエビデンス1つと中等度のエビデンスが複数ある(EV level C-IbEV levelC-IIEV level C-III).


エビデンス
  • 発症初期の股関節症234関節に対し股関節鏡検査を行い軟骨の損傷を観察すると,早期の股関節症の診断には股関節鏡検査が有用であり,骨頭,臼蓋のいずれか一方に損傷を認めることが多かった.また,損傷の部位と範囲はX線所見と相関を認めた(HF11506, EV level C-Ib).
  • 臼蓋形成不全による股関節症87関節に対し股関節鏡検査を行い関節症変化の進展形式を観察すると,関節唇,臼蓋関節唇移行部のfibrillationに始まり,関節唇断裂,臼蓋関節唇移行部のdetachと骨頭軟骨のfibrillation,臼蓋軟骨のfibrillaion,骨頭軟骨骨露出,臼蓋軟骨骨露出と進行すると推測された(HJ11549, EV level C-II).
  • 20例の股関節症に対し股関節鏡検査を行い観察可能な視野を確認すると,臼蓋荷重部,窩部,円靱帯,関節唇の前方,側方,後方の観察が可能であった.一方,臼蓋下方,円靱帯下方および円靱帯より末梢側の大腿骨頭,下方関節包は観察困難であった(HF10376, EV level C-III).
  • 股関節症40例を鏡視し関節軟骨,関節唇の状態を観察すると軟骨変性の程度は骨頭と臼蓋では異なり,関節唇所見と病期との関連性は認めなかった(HJ10048, EV level C-III).
  • 臼蓋形成不全による股関節症76関節の股関節鏡検査の所見より,股関節症は骨頭障害型,臼蓋障害型,骨頭-臼蓋障害型に分類された(HJ10938, EV level C-II).
  • 臼蓋形成不全による股関節症120関節に対し股関節鏡を行い関節軟骨と関節唇の状態を観察すると,臼蓋軟骨の変性は骨頭のそれに先行し,骨頭と臼蓋の関節軟骨の変性は荷重部の前上方から始まる.関節唇の剥離断裂は前上方から始まり,前股関節症の88%と初期股関節症以降の全例で断裂を認めた.股関節痛の発症は関節唇断裂と強く相関していた(HF10379, EV level C-Ib).
  • 臼蓋形成不全による股関節症67例93関節に対し股関節鏡検査にて関節唇を観察すると,X線上のOAの重症度が進行するにつれて変性断裂の頻度が増加していた(HJ10044, EV level C-II).
  • 97例110関節の股関節鏡検査より,軟骨の変性所見は関節症の進展に伴い正常,irregular,fibrillation(membranous,featherlike,edematous,short),erosion,eburnationへと進展すると推察された(HF11467, EV level C-III).
  • 骨切り術術前の股関節症36例に対し股関節鏡検査を施行すると,骨頭は変形を認め,CE角が小さいものは臼蓋側の軟骨の変化が強く,CE角が小さいものほど関節唇が肥厚する傾向にあった(HJ11066, EV level C-III).
  • 395例413関節の股関節鏡検査を調査し有用性について検討した.単純X線,MRI,造影MRI,CT,造影CTなどの画像検査によっても診断の困難であった股関節痛,キャッチング,ロッキングに対し軟骨,関節唇,滑膜の病変を確認する上で診断的価値があり,生検材料の検索も可能であるため鑑別診断の上でも有用である(HF10378, EV level C-III).


文献

1) HF10376 Byrd JW. Hip arthroscopy utilizing the supine position. Arthroscopy. 1994;10(3):275-80.
2) HJ10048 城戸研二,河合伸也,野村耕三,ほか.変形性股関節症の関節鏡所見の検討.Hip Joint. 1994;20:182-5.
3) HF10379 Noguchi Y, Miura H, Takasugi S, Iwamoto Y. Cartilage and labrum degeneration in the dysplastic hip generally originates in the anterosuperior weight-bearing area: an arthroscopic observation. Arthroscopy. 1999;15(5):496-506.
4) HF11467 Ohgiya H. [An arthroscopic study of coxarthrosis] Nippon Seikeigeka Gakkai Zasshi. 1994;68(4):125-38.
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7) HJ10938 小原 周,黒木良克,斉藤 進,ほか.変形性股関節症の関節鏡視像―関節軟骨のeburnationの有無及び部位に関して.整形外科.1996;47(5):548-52.
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10) HF10378 Dorfmann H, Boyer T. Arthroscopy of the hip: 12 years of experience. Arthroscopy. 1999;15(1):67-72.


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