ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第3章 診断


Research Question 8
CT検査,MRI検査は変形性股関節症の診断に有用か

推奨
Grade B CT検査は股関節における骨形態を立体的に把握することが可能で,変形性股関節症の診断および病態把握に有用である.
Grade B MRI検査は股関節における骨,関節軟骨,関節唇の病変が描出され,変形性股関節症の診断および病態把握に有用である.


解説
変形性股関節症(股関節症)に対しCT検査を行うことにより寛骨臼の形態,寛骨臼と骨頭の関係,大腿骨頚部前捻角,大殿筋萎縮の状態が正確に把握可能で(HJ11759),骨棘,骨嚢腫の位置や大きさを確認することができる(HJ10796HJ11699).また,3D-CT像により立体的な構造がどの方向からも観察可能で,骨頭と臼蓋の位置関係や臼蓋被覆範囲などを詳細に評価することができるため(HJ10191HJ10265),骨切り術などの術前計画,術後評価にも用いられている.
股関節のMRI検査では,関節軟骨や関節唇の病変の読影が可能で,特に関節唇においては実質内の変化も描出される(HJ10245HJ10939).また単純X線像では観察困難であった海綿骨内部への骨病変の広がりを確認することが可能で(HJ11354HJ10266),さらに,任意の方向で断面像が得られるため,病変の位置関係を理解しやすく治療方針を決定する上での補助診断となり得る.


サイエンティフィックステートメント
  • CT検査は股関節の骨の形態の変化を立体的に把握することができ,股関節症の診断上有用であるとする質の高いエビデンス1つと中等度のエビデンスが複数ある(EV level C-IbEV level C-IIEV level C-III).
  • MRI検査により股関節の関節軟骨・関節唇の損傷や海綿骨の質的な変化が描出され,股関節症の診断上有用であるとする質の高いエビデンス1つと中等度のエビデンスが複数ある(EV level C-IbEV level C-IIEV level C-III).


エビデンス
  • 股関節症200例のCT像を検討すると,寛骨臼の形態は上下径よりも前後径が小さく,骨頭が外上方に偏位するほど浅く,前方開角も小さくなる.CE角の小さい症例は被覆率も小さくなる.一方,前捻角は股関節症で大きい傾向にあるが,骨頭高位,病期との相関はなかった.CT検査により股関節の形態を立体的に把握可能で,適切な手術法を選択する上で有用と考えられた(HJ11759, EV level C-Ib).
  • 日本人の股関節症66例のCT像を検討すると,X線上の病期の進行に伴い,臼底肥厚が増大し臼蓋の曲率半径の増大と曲率中心の側方化が進む一方,臼蓋の前開きが減少し,骨棘の前方部の骨頭被覆が増大することが確認された(HJ10796, EV level C-II).
  • CT検査で股関節症44例の股関節を評価すると,股関節部の形態を立体的に把握することで,骨棘や骨嚢腫の位置や大きさの確認,大腿骨頚部前捻角の計測,殿筋の評価などが可能で,手術適応の決定に有用であった(HJ11699, EV level C-II).
  • 股関節症32関節,正常例10関節に対し3D-CT像を撮影し臼蓋形成不全を定量的に評価すると,骨頭に対する臼蓋の平均被覆率は正常で87%,変形性股関節症で77%であり,臼蓋形成不全の定量的分析が可能であった(HJ10191, EV level C-II).
  • 股関節症57例を対象に3D-CT像を用い関節形状を検討すると,臼蓋前方開角は正常例平均55°,臼蓋形成不全例平均64°,前方開角は正常例平均15°,臼蓋形成不全例平均27°で骨頭に対する臼蓋被覆率は正常例平均55%,臼蓋形成不全例平均35%であり臼蓋形成不全の評価に有用であった(HJ10265, EV level C-III).
  • 股関節症患者121例を対象にX線学的病期の進行とMR像所見を対比すると,関節唇の断裂・剥離・不明瞭化・消失などの所見は初期股関節症より出現し,進行とともに頻度が高くなった.また,前股関節症においても症例によっては嚢腫様病変が認められた(HJ10245, EV level C-Ib).
  • 股関節症患者29例の関節軟骨,関節唇のMR像を関節造影所見および関節鏡所見と対比するとMR像の軟骨病変の描出の信頼度は関節造影像とほぼ同程度で関節鏡所見より劣っていた.また,MR像は関節造影像・関節鏡所見では得られない関節唇実質内の質的変化の描出が可能であった(HJ10939, EV level C-II).
  • 日本人の進行期股関節症33例の前額断・水平断のMR像を読影した.short TR/short TEでの異常低信号域は軟骨下骨の骨硬化・骨嚢胞に相当し,骨頭の辺縁の高信号域は骨棘内部の骨髄に相当する.MRI検査は海綿骨内部への病変の広がりを把握するのに有用であることが確認された(HJ11354, EV level C-II).
  • 股関節症42例に対しMRIと股関節鏡を同時期に行いMR像の骨髄内変化と鏡視による関節軟骨病変を比較すると,MRIで骨髄内低信号領域がdiffuseなタイプは鏡視による軟骨変性が高度となる傾向にあった(HJ10266, EV level C-III).


文献

1) HJ11759 横畠由美子.CT像を中心にした変形性股関節症における股関節形態の検討.東京女子医科大学雑誌.1989;59(9):1131-40.
2) HJ10796 石橋昌則.CTによる日本人変形性股関節症例の臼蓋形態の分析.慶應医学.1997;74(6):417-30.
3) HJ11699 土方浩美,田川 宏.CT像からみた変形性股関節症.伊丹康人,西尾篤人(編),整外MOOK 31 整形外科領域におけるCTの応用,金原出版,東京,1984;p143-58.
4) HJ10191 寄川 淳,中村 茂,大塚一寛,立石昭夫.ヘリカルCT三次元画像を用いた臼蓋形成不全の定量的分析.Hip Joint. 1998;24:390-2.
5) HJ10265 田中信彦,吉田行雄,川西利幸,種田陽一,松井宣夫,井口普敬.3-D CTによる関節分離表示を用いた変形性股関節症の診断.Hip Joint. 2000;26:270-3.
6) HJ10245 山口順子,堀井基行,久保俊一,牧之段淳,平澤泰介.変形性股関節症の各病期におけるMR画像所見.Hip Joint. 1999;25:322-5.
7) HJ10939 中馬 敦,秋田 徹,土屋明弘,ほか.変形性股関節症における関節軟骨,関節唇のMR画像―関節造影像と鏡視所見との比較.整形外科.1997;48(3):288-92.
8) HJ11354 小久保宇,高取吉雄,佐々木康人.変形性股関節症のMR画像.日本磁気共鳴医学会雑誌.1993;13(4):211-7.
9) HJ10266 吉澤毎樹,林 淳慈,山崎 謙,内藤勝行,三枝 超,川口正博,田中隆佳,扇谷浩文,小原 周,黒木良克.変形性股関節症におけるMRIを用いた骨髄内評価.Hip Joint. 2000;26:292-5.


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