ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第3章 診断


Research Question 6
変形性股関節症のX線診断において注意すべきことは何か

推奨
Grade B 変形性股関節症の診断には,関節裂隙の狭小化を計測する方法が検者間再現性の点において優れている.
Grade C 立位と臥位の撮影により,病期診断や関節裂隙幅の計測値に違いが出ることがある.


解説
変形性股関節症(股関節症)の重症度(病期)評価は,欧米においてもわが国においても主に単純X線検査でなされてきた.股関節単純X線像から得られる一般的なパラメータとしては,骨棘,骨硬化像,骨嚢胞の出現,そして関節裂隙狭小があげられる.これらのうち,X線所見から股関節症ありと診断する基準として欧米で広く用いられているのは,実際に関節裂隙幅を計測しそのカットオフ値で判断する量的評価法と,Kellgren and Lawrence grade(K/L grade)またはその修正分類であるCroft gradeなどのように,関節裂隙狭小,骨棘,骨硬化像,骨嚢胞の有無で判断する包括的評価法である.これらの評価法についてはそれぞれの優劣を検証した論文があり,機能障害との相関が比較的高く,検者間での再現性も高いとされているのが関節裂隙の狭小化であるとするエビデンスが複数報告されている(HF10207HF10117).
一方,荷重関節である股関節を評価するにあたり,X線の撮影肢位は重要である.股関節症患者では立位の荷重下で撮影された場合,臥位の非荷重下で撮影されたものに比べ,関節裂隙幅が狭小化していたというエビデンスが複数報告されているが(HF11535HJ10509),逆に立位で撮影された場合のほうが関節裂隙が拡大されていたという報告もあり(HF10199),結論が一様でない.


エビデンス
  • スウェーデンとアイスランドでの,大腸X線撮影を行った35歳以上の1,501名を対象とした研究で,X線学的股関節症の判定にはK/L gradeを用いた包括的な評価法に比べて最小関節裂隙幅(minimal joint space:MJS)を実際に計測する量的方法が検者内再現性および検者間再現性の点において優れていた(HF10207, EV level C-Ib).
  • Copenhagen City Heart Studyでは,男女合計3,807名を対象とした研究でK/L grade≧2,Croft grade≧3,MJS≦2.0mmを股関節症ありの基準として採用した場合,K/L grade,Croft gradeなどの包括的な評価法では男女差が生じることを指摘,MJSがもっともよい指標と報告.Self-report hip painとの関連においても,もっとも股関節症に関連したパラメータであった(HF10117, EV level C-Ib).
  • 正常股と股関節症罹患股の立位,臥位の関節裂隙幅をコンピュータ画像解析装置で計測.正常股関節では立位-臥位の関節列隙幅に差は認められないが,股関節症罹患例では立位で関節裂隙幅が明らかに減少していた(HF11535, EV level C-II).
  • 股関節症の患者101関節に対し,臥位と立位で股関節のX線撮影を行った.主に関節裂隙幅に注目し,病期を初期,進行前期,進行後期,末期の4段階に分類する方法を用いたところ,101関節中14関節(13.9%)に臥位から立位で病期の重症化を認め,特に進行期の症例で変化する頻度が高かった.また,臼蓋形成不全の程度,骨頭変形の程度が強い症例ほど,立位で病期が悪化する傾向にあった(HJ10509, EV level C-III).
  • 股関節症の有無にかかわらず集計された患者の立位-臥位での関節裂隙幅を計測,骨盤X線像における立位での関節裂隙幅は股関節症の有無にかかわらず臥位での値に比べ大きかった(HF10199, EV level C-II).


文献

1) HF10207 Ingvarsson T, Hägglund G, Lindberg H, Lohmander LS. Assessment of primary hip osteoarthritis: comparison of radiographic methods using colon radiographs. Ann Rheum Dis. 2000;59(8):650-3.
2) HF10117 Jacobsen S, Sonne-Holm S, Søballe K, Gebuhr P, Lund B. Radiographic case definitions and prevalence of osteoarthrosis of the hip: a survey of 4151 subjects in the Osteoarthritis Substudy of the Copenhagen City Heart Study. Acta Orthop Scand. 2004;75(6):713-20.
3) HF11535 Conrozier T, Lequesne MG, Tron AM, Mathieu P, Berdah L, Vignon E. The effects of position on the radiographic joint space in osteoarthritis of the hip. Osteoarthritis Cartilage. 1997;5(1):17-22.
4) HJ10509 川原奈津美,岡野邦彦,榎本 寛,土井口祐一,千葉 恒,進藤裕幸.立位X線撮影において病期変化を生じた変形性股関節症症例の検討.Hip Joint. 2004;30:145-9.
5) HF10199 Auleley GR, Rousselin B, Ayral X, Edouard-Noel R, Dougados M, Ravaud P. Osteoarthritis of the hip: agreement between joint space width measurements on standing and supine conventional radiographs. Ann Rheum Dis. 1998;57(9):519-23.


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