ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

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第3章 診断


Research Question 2
変形性股関節症の臨床評価基準にはどのようなものがあるか

推奨
Grade I 変形性股関節症の臨床評価基準として,数多くのものが考案され使用されているが,国際的に統一された評価基準はない.わが国でもっとも普及している臨床評価基準としては,日本整形外科学会股関節機能判定基準があり,国際的にもっとも普及している基準としてはHarris hip scoreがある.


解説
わが国でもっとも用いられている変形性股関節症の臨床評価基準は,日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA hip score)である.現行のJOA hip scoreは,1971年に作成された旧JOA hip scoreをもとに,1995年に改正されたもので,疼痛(40点),可動域(20点),歩行能力(20点),日常生活動作(20点)の4項目から構成されており,Charnleyによって提案された片側罹患,両側罹患,多関節罹患などのカテゴリー分類が採用されている.
国際的にもっとも普及している基準としてはHarris hip scoreがある.疼痛(44点),機能(47点),変形(4点),可動域(5点)から構成されている.疼痛は6段階に分かれており,機能は跛行,歩行支持,歩行距離などの歩行能力(33点)と,階段昇降,靴・靴下履き,座位,公共の乗り物利用などの日常生活動作(14点)からなっている.JOA hip scoreにはない項目として変形があり,4通りの変形パターンがすべてない場合が4点とされている.また,可動域は満点が5点と,JOA hipscoreに比べ全体に占めるウエイトが小さい.
その他の海外の評価基準としては,AAOS hip & knee score,Oxford hip score,Merle d'Aubigné-Postel hip score,Charnley hip score,Iowa hip score,Hospital for Special Surgery hip rating,Mayo hip scoreなど,数多くのものが存在する.これらのほとんどは,JOA hip scoreやHarris hip scoreと同様,医療者側で評価する形式をとるが,Oxford hip scoreは患者側から評価するという形式をとっている.また,Mayo hip scoreのように,X線画像所見を評価項目に入れているものもある.
これらの臨床評価基準は,特に統一された見解をもとに作成されているわけではない.通常は,どの基準も「疼痛」が評価項目としてもっとも重要視されており,「可動域」と「関節機能・生活動作」の項目を携えているため,同一患者を異なる評価基準によって評価しても,同程度の結果を示す場合もある(HJ11852HF11846).しかし,それぞれの評価の仕方や割り当てた点数,評価項目の種類と数が一定でないことから,総合評価にばらつきが生じ,用いる基準により,結果が良くなったり悪くなったりする可能性もある(HF11843HF11910HF11911).再現性が良好であるという点も,臨床評価基準には重要なポイントである.今後,国際的に統一された評価基準の出現が待たれる.


エビデンス
  • 種々の股関節手術を行った日本人患者173例187関節の股関節機能を,JOA hip scoreとHarris hip scoreの両方で同一検者が評価した.両者の合計点数に有意差はなく,強い相関関係を示した(HJ11852, EV level C-III).
  • 人工股関節全置換術(THA)を施行された115例,118手術例に対し,術前にHarris hip scoreを,術後5年時にOxford hip scoreとHarris hip scoreの両方を記録し,両者の相関を調べたところ,術後5年時のOxford hip scoreとHarris hip scoreはよい相関を示した(HF11846, EV level C-III).
  • THAを施行された164例191関節に対し,術後6ヵ月,1年,2年,3年,5年時にCharnley hip scoreとHarris hip scoreの両方を記録し,両者を比較したところ,Harris hip scoreは疼痛スコアと歩行スコアにおいてCharnley hip scoreより有意に低い結果であった(HF11843, EV level C-III).
  • RingのTHAを15〜20年前(平均19.6年前)に施行された41例47関節の長期成績を13の異なる股関節評価基準を用いて比較した.47関節の各スコアの総合成績(excellent,good,failureなど)の間には隔たりがあり,47関節のうち,36関節は1段階の違い(excellentとgoodの違い,またはgoodとfailureの違い)であったが,11関節は大きく隔たっていた.各種の股関節スコアは,必ずしも同様の結果を導き出すとはいえなかった(HF11910, EV level C-III).
  • PCAのセメント非使用THAを1〜2年前に施行された100関節(男性75関節,女性25関節)を,Hospital for Special Surgery hip rating,Mayo hip score,Iowa hip score,Harris hip score,Merle d'Aubigné-Postel hip scoreで評価し,さらに患者自身による評価も加え,比較したところ,Hospital for Special Surgery hip ratingがもっとも楽観的で,Merle d'Aubigné-Postel hip scoreがもっとも悲観的であった(HF11911, EV level C-III).


文献

1) HJ11852 藤沢基之,内藤正俊,浅山 勲.股関節判定基準の相違.JOA hip scoreとHarris hip scoreの比較.整形外科.2001;52(6):628-33.
2) HF11846 Kalairajah Y, Azurza K, Hulme C, Molloy S, Drabu KJ. Health outcome measures in the evaluation of total hip arthroplasties--a comparison between the Harris hip score and the Oxford hip score. J Arthroplasty. 2005;20(8):1037-41.
3) HF11843 Ritter MA, Fechtman RW, Keating EM, Faris PM. The use of a hip score for evaluation of the results of total hip arthroplasty. J Arthroplasty. 1990;5(2):187-9.
4) HF11910 Bryant MJ, Kernohan WG, Nixon JR, Mollan RA. A statistical analysis of hip scores. J Bone Joint Surg Br. 1993;75(5):705-9.
5) HF11911 Callaghan JJ, Dysart SH, Savory CF, Hopkinson WJ. Assessing the results of hip replacement. A comparison of five different rating systems. J Bone Joint Surg Br. 1990;72(6):1008-9.


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